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32.錬金術士新たな街へ


ローザンヌさんが用意した馬車は小ぶりで小回りがききそうな作りだ。

この前装備を運んだ荷馬車の1/3くらいしかない。

一緒に行ってくれる御者は商館で一番早く馬車を走らせられるそうだ。ただ乗り心地が悪いらしい。

「旦那!今日はお急ぎだそうですね」

「はい、普通に行ったらどれくらいかかるんですか」

「荷物を運ぼうと思ったら4時間は掛かりますね。台数が増えたり、荷が重かったりしたらもっとかかります」

そうするとまともに剣と鎧を100個運ぶには5時間以上かかるな。

「じゃあ今日はよろしくお願いします」

「任せてください」

「ピピ、ミケ、途中敵が隠れられそうな所がないか、注意して見といてくれ」

「ん」

「任せるにゃ!」

「一つ気をつけて頂きたいんですが」

「はい」

「道中はしゃべらないでください。舌噛みますんで」

「え?」

「じゃあ行きますよ!」

そう言うと御者のオジサンは思いっきり鞭を打ち、凄い勢いで馬車が走りだした。


マルボルクまでは2時間かからなかった。

必死に馬車に捕まり、お尻の痛みに耐えながら2時間ジェットコースター乗っていたような感じだ。

ミケは楽しんでいたが、俺とピピは着いた途端に馬車を降りてしばらく地面に這いつくばったほどだ。


「如何でしたか、早かったでしょう」

御者のオジサンは自慢げだ。

「乗る人が少なかったらもっと速いんですけどね」

「楽しかったにゃー」

「あ、ありがとうございました。帰りはもう少しゆっくりで大丈夫だと思うんで」

マルボルクに入るための門は隣国へ向かう門とは反対側であるにも関わらず厳重に閉ざされていた。

「なんだ、お前達は」

2人で守っている門番に止められた。

「えっと、ローザンヌさんに頼まれまして」

「は?ローザンヌ?」

「おい、ローザンヌ様のことじゃないのか」

「あ?」

「これを」

ローザンヌさんに渡されていた文書を渡す。

「あとオーキストさん宛てにも書簡を預かってまして」

「は、失礼しました。しばらくお待ちください」

コロッと態度が変わったな。


オーキストさんというのはローザンヌさんの弟、この街の司令官だ。

「この手紙はオーちゃん直接渡してね」

と頼まれている。

しばらく待つと門が開けられ中に案内されたが、鎧を着た兵士に取り囲まれてしまった。

まだ信用されてないのかな。

なんかあったらローザンヌさんに言いつけちゃうぞ。


「お待たせいたしました。オーキスト様がお会いになるそうですので、ご案内いたします。私はパインと申します。」

立派な髭面のオジサンは隊長だろうか。貫禄がある。

この街はアルカサルと比べるとだいぶ小さいように思う。

前線ということもあるだろうが街中で見かけるのは兵士が多い。

商店や食堂などもあるようだがあまり活気はない。

兵士の宿舎のような所を進み少し大きめの屋敷に案内された。

ここがオーキストさんの屋敷らしい。


「お連れしました」

「よし、入れ」

「失礼します」

オーキストさんは思っていたよりちゃんとした軍人だった。

短く刈り込まれた茶色がかった髪に、筋骨隆々の体。身長190cmはありそうだ。眉間に皺を寄せ、厳しい顔で向かいに立っていた。今は鎧を着ていないが武装したらそれだけで相当強そうに見えるだろう。

「よし、下がれ」

「ですが」

「構わん。(あね)(さま)の客人だ」

「はっ」

パインさんは心配そうだがチラッと俺達を見て部屋を出て行った。

急に愛好を崩すオーキストさん。


「こんな所までようこそいらっしゃいました、どうぞおかけ下さい」

部屋にあった椅子を勧められる。

「はい、ありがとうございます。これローザンヌさんから直接渡すように言われました」

手紙を受け取りすぐに封を開ける。

お姉さんからの手紙がちょっとうれしそうだ。

「ふむふむ、ほー、ん、なんと」

読み進める毎に百面相をするオーキストさん。

なんかいい人っぽい。


「驚きました」

何が書いてあったんだろう。

(あね)(さま)がこんなに人を褒めてるのは初めてです」

え?俺のことか?てかそこ?

「では早速ですが砦まで行きましょうか」

「はい、でも危なくないですか」

「はは、ここから砦まででしたら大丈夫です。ご安心ください」

「パイン!」

「は!」

パインさんすぐそこに控えてたのね。

「すぐに砦に向かう」

「この方達と?」

「そうだ。それと今後この方達は(あね)(さま)と同様に扱え」

「は!」

それってVIP待遇じゃないのか。


街から砦までは歩いて30分ほど。オーキストさんは専用の馬に乗るらしいが、我々に合わせて歩いてくれた。

この国の軍隊は騎馬1体に歩兵が付き従うのが基本の形のようで、騎馬1体と歩兵20人で1個小隊。それが5つ集まって1個中隊。それと別に弓兵隊が20人とかで別に編成されているのだと教えてもらった。どこぞの三国志のように10万も20万も兵士がいるわけではないらしい。

砦は如何にも急拵えな感じだ。

「この手前の道を左に進むと鉱山があります。一時期はここまで攻め込まれたんですが、何とか押し戻してこの砦を建てました。300人ほど兵士が常駐して日夜敵の動向を探っています」

ペラペラと喋るオーキストさんを心配そうにチラチラと見るパインさん。パインさんはまだ俺達のことが信用できないようだ。

「少しづつ増築を繰り返し、今では兵舎や食堂も形になってきました」

そんなパインさんの心配を知ってか知らずか砦の中をオーキストさんが細々と説明してくれる。

「ここが兵器庫です」

「司令官殿、流石にここまでは」

我慢できなくなったパインさんが口を出すがオーキストさんは全く気にもとめない。

「どうぞお入りください」


その後オーキストさんの部屋に戻り少し打合せをして帰ることにした。

実際留まってたのは2時間くらいか。

またあの馬車で帰るのは気が滅入るが仕方ない。

帰り際にローザンヌさん宛ての手紙を預かった。

(あね)(さま)によろしくお伝えください」

「わかりました。では」


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