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16.錬金術士盗賊討伐


「さすが親分だな」

「ああ、大成功だぜ」

盗賊たちは作戦の成功に沸き立っているようだ。

「でもここまでやる必要があったのかな」

「これどかすの大変だよなあ、持ってくるのも大変だったけどよ」

1番馬車の辺りで群がって盗賊たちが話している。

一人の盗賊が一番馬車の車輪の異変に気付いた。

「おい、お前ら、ちょっと来てくれ」

「なんだこりゃ!鉄の紐で結ばれてるじゃねえか」

馬車の左側の車輪には鎖が連なっていた。

逃げる際に鎖で馬車の車輪を繋げておいたのだ。

「ヤバいぞ、親分が戻って来る前に外しておかねえと」

「こりゃ鉄だぞ。どうやって外すんだよ」

「あいつらどうやって動かしてたんだ」


盗賊達が鎖に集まる。

横並びになってガチャガチャと鎖を外しにかかった。

そっとムチムチソード伸ばす。

「変形、鎖」

あっという間に盗賊達に鎖が巻き付く。

「うわぁ、何だこりゃー」

「いてててて、動けねぇ」


いっちょ上がりと。

「あれー、皆さんどうしたんですかぁ」

「てめぇ!何しやがった」

鎖に巻かれた盗賊たちから武器を取り上げる。

まず後顧の憂いを絶っておかないとな。

「皆さんの仲間はこれで全部ですか?」

素直に答えるは思わないが一応聞いてみる。


「は?そんなこと教えるかよ」

まあ、そうだよね。

「ピピ、ここらに魔溜まりあるか」

「ちょっと先の森の中」

「よし、一人そこに捨ててこい」

「ん」


適当な一人を別の鎖で巻き付けると、それをピピがひょいと持ち上げる。

「ちょ、ちょっと、待て、待て!このまま魔溜まりなんかに捨てられたら魔物に殺されちまうだろうが!」

抱えられたまま暴れるがピピはビクともしない。

「ピピ、なんか聞こえたか?」

「ん?」

ピピ、結構楽しんでるな。

「すいません、すいません!何でも話します!魔溜まりだけは勘弁してください!」



盗賊の一味はこいつらと護衛を連れて行ったモスキンに犬人2人で全部らしい。

そろそろモスキンたちも戻って来るだろう。

準備を進めなければ。



「親分、あの護衛たち、めっちゃ弱かったッスね」

「あんな三下冒険者にやられるわけねぇだろう」

「ちげえねぇ」

「そんなことよりあいつらちゃんと倒木片付け終わってるだろうなぁ」

「親分、戻るの早すぎてまだ終わってないんじゃないっすかねぇ」

モスキンたちが戻ってきたようだ。

「って、倒木そのまんまじゃねぇか!あいつらサボってやがったな」

「いや、親分、あいつら縛りつけられてますぜ」

犬人2匹が駆け寄る。

「お前らどうした?誰にやられた?」

だが縛りつけられた手下どもは猿轡を噛まされてうーうー唸っている。

2匹が鎖を外そうとして掴んだ瞬間

ガシャガシャと鎖が2匹を縛り付ける。

「うわっ」

「なんだこりゃ」


「はい、もういっちょ上がりー」

さすがにボスまでは捕まえられなかったがそれは予想通りだ。


「随分面白いまねしてくれるじゃねえか」

モスキンがゆっくり近づいて来る。

「おめぇ何モンだ!」

「通りすがりの錬金術師です」

「れんきんずしし?なんだそれゃ。大体通りすがりじゃねえだろう」

「錬金術師です!ピピ!」

「ん!」

モーニングスターも構えたピピが躍り出る。


「モスキンさん、大人しく投降すれば痛い目みないで済みますよ」

「ほう、随分腕に自信がありそうだな」

「じゃあ、こうしよう。俺とサシで勝負してそっちが勝ったら大人しく投降してやるよ」


どう考えても向こうが不利なのに自分に有利な条件を出してくる辺り、何とも図々しい。勝負する時点で大人しく投降する気なんてないだろう。

「親分!がんばれ!」

手下どももかなりのアホなようだ。

「よし、まずはそこのお嬢ちゃんからだ」

さらに女子供を選ぶ辺りクズ感が半端ない。


「ん」

ピピの実力は正直わからない。ただ盗賊の親分をやるくらいだからモスキンはどんな卑怯な手を使ってくるかわからない。

それが女子供でも。


「あれ試してみる」

そういうと馬車からスケルトンの大剣を引っ張り出してきた。

大剣の長さはピピより大きい。

その大剣をブンブン振り回すピピ。


「おい、それってまさかスケルトンナイトの大剣じゃねぇのか」

「あれ、盗賊の癖によく知ってるますね」

「ってまさかお前がスケルトンナイト倒したのか?」

「ん」

いやお前じゃないから。

「お、おい兄ちゃん。さすがにこんな小さい女の子相手にするのも大人気ねぇ。兄ちゃんと戦ってやるよ」

「親分カッコいい!」

外野うるさいな。


ピピがモスキン殺してしまっても嫌だし、殺されるのはもっと嫌だからな。これもまあ、予想通りだ。

スケルトンナイトを倒してから俺も随分肝が据わってきた。

「そういうことだ、ピピ」

「んー、試し斬りは」

「じゃあ、そっちに繋がれてる奴がいるだろ」

「ん」

「ひー、やめてくれー」

「来るなー」

ピピ、冗談だぞ。わかってるよな。


「で、お前はどんな得物を使うんだ」

スケルトンナイトの大剣以上の武器はないと読んでいるんだろう。甘いな。

「俺の得物はこれだ!」

ムチムチソードを構える。

「あ?なんだそりゃ。折れてるのか」

確かにムチムチソードの刃渡りは5cmほどだ。見た目はほとんど柄しかない用に見える。

「これはこうして使うんだ。」

そう言ってゆっくりムチムチソードを振り下ろすと剣先がスルスルと伸びていく。

剣の堅さは普通にした。3m程伸びてモスキンの顔の前で止まる。


一瞬警戒したモスキンだが、ゆるゆると伸びてくる剣先に威力はなく、鼻先でユラユラ揺れてるのを面倒くさそうに手で払う。

「なんだこりゃ。ガキのおもちゃじゃねぇのか」

スルスルとムチムチソードを戻す。


「オモチャじゃないですよ。非道いなぁ。自分で作ったんです」

そう言ってもう一度ムチムチソードを伸ばす。

「こんなおもちゃで俺に勝てると思っているなんて随分お目出たい野郎だな」

「いえ、もう勝ってますから」

「な、う…」

ドタッとモスキンはその場に倒れた。



「本当にありがとうございます。でも一体どうやって」

戻って来たトネリコさんは鎖で繋がれたモスキン達を見て目を丸くした。

「こう見えてピピは強いんですよ」

説明が面倒くさいので取り敢えずピピの手柄ということにした。


護衛はみんな殺されてしまったのは残念だが積荷が無事だったのはせめてもの救いだ。

「それよりトネリコさん、御者はできますか」

「ええ、大丈夫です」

「だったら急ぎましょう。予定よりだいぶ遅れてしまいました」

「そ、そうですね。早く行きましょう」

倒木は盗賊達に片付けさせようと思ったが、時間が掛かりそうだったので凍らせてからピピに壊させた。最初からそうしておけばよかった。

盗賊達は鎖で馬車の後ろに繋いだ。あいつらは徒歩だ。

まあ積荷が重いからそれほど速度は出ない。あと3時間ほどだが小走りで着いてきてもらおう。

5番馬車の後ろでピピが見ているから大丈夫だろう。


モスキン戦はムチムチソードでモスキンの周りの酸素を吸い取って二酸化炭素で満たしてやっただけだ。

死んじゃったらヤダなと思ったが気絶だけですんだ。

これで賞金首代金貨20枚もゲットだ。

ムチムチソード最強!


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