エピローグ
光ある所に影は差し、必ず闇は生まれる………
それはもはや人の世の真理ですらある。故に、人は必ず困難に当たり苦境に立たされた人はその困難に対して迷いや後悔を抱く。
しかし、それと同時にそのような人を救いたいと思う者もまた然りだろう。そう、人の世が絶望と悲劇に満ちているのと同様に。救済を掲げた者もまた然りなのだ。
「お腹、すいたなぁ………………」
その惑星は、既に資源が枯渇している。そんな極限の飢餓の中、一人の少年がおぼつかない足取りで食料を求め歩いていた。
しかし、既にこの惑星に資源が尽きて数日の時が過ぎた。もう、食料など欠片も無い。
そんな中、少年はそれでも食料を求めて歩き続ける。しかし、もう空腹も限界だった。
「っ、あ…………」
足がもつれ、少年はその場に倒れた。もう、起き上がることすら出来ない。意識ももうほとんどないような状態で、少年はそれでも助けを求めるようにその腕を伸ばす。
果たして、少年は気付いていただろうか?自身の口から、助けを求める声が漏れ出た事を。
そして、そんな少年におもむろに近付く二人の人影があった事を。
「だ、誰か………助け…………」
「良いよ、君を助けてあげる」
え?と、思わず少年の口から声が漏れ出た。虚ろな意識で、その人物を見上げる。
其処には、年若い少年と少女の姿があった。年若い、ように見える。しかし、少年には何故かその二人が見た目以上に大人びているように感じた。
あくまで、極限の飢餓で感じた錯覚なのかもしれないけれど。
「そら、腹がへっただろう?食え」
そんな少年に、少年風の男はおもむろに握り飯を差し出した。良い匂いが、鼻に届く。
「…………っ、あ」
考える暇も無かった。少年は虚ろな意識を繋ぎ止め、むさぼるように握り飯を食べた。
久しぶりに食べた食料。その味は、これ以上ない程に美味しかった。
思わず涙が零れるのを止められない。そして、そんな少年に男は穏やかに笑いながらもう一つ握り飯を差し出した。何も言わず、それを受け取る。受け取り、涙ながらに食べる。
「う、ぅうっ………うううぅうぅぅうううううううううぅぅぅぅぅっ」
そして、声を上げて泣きじゃくった。少年に両親は居ない。何年も前に、惑星規模の資源枯渇の影響を受けて少年を残し死亡した。極度の餓えが原因だ。
最後まで、両親は息子を優先して食事を与えた。優しい両親だった。
久しぶりだった。少年に施しを与えてくれるものが居たのは。
思わず、少年はその二人を見上げた。二人は、少年を見て笑っていた。穏やかな笑みだ。
「もう、この惑星には食料は無い。もう此処は滅びるしかないだろう。一緒に来るか?」
そう言って、男は手を差し伸べた。そんな男を、少年は不思議そうに見上げる。
そんな少年を、女は微笑ましげに見ている。
「………貴方は、貴方達は一体誰ですか?」
「俺の名は遠藤クロノ。隣に居るのは、ユキだ。君の名は?」
クロノと名乗ったその男は、力強い笑みで再び手を差し伸べる。
少年は、その差し伸べられた手をおずおずと取った。
「僕の、僕の名前は………シイル。シイル=クリフォード」
こうして、また世界で無為に失われる筈だった命が一つ救われた。




