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新時代の英雄は終焉世界を駆け抜ける~無限と永遠の英雄譚~  作者: ネツアッハ=ソフ
無限と永遠の英雄譚編
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6、全ての始まりの地へ

 あれから千年の時が()ぎ去った。私、白川ユキはこの世界から消えたクロノ君を追う為に千年の時を研究へと費やし、全ての始まりたる根源(こんげん)を目指す計画を進めた。


 全てはクロノ君と再び会う為に。その為に(すべ)てを投げうって研究を進めた。幸いな事に、既に根源を観測する為の技術は確立されていた。かつて、ニア=セフィラが(すす)めた研究の成果だ。


 そして、その技術を元に私は根源へ通じる穴を()ける為の研究を進めた。


 その為には、()ず仲間の存在が必要不可欠だった。


 資金諸々を提供(ていきょう)してくれるパトロン然り。確かな技術力を持った技術者然り。そして、その道の専門知識を有した識者然りだ。故に、私はその為の仲間を(あつ)めた。


 結果、最初こそその研究内容に()られた者達が続々と集まった。


 しかし、やがてその研究の難しさに次々と人は()っていった。


 しかし、それでも私は(あきら)めなかった。そして、そんな私の諦めない姿勢に感化されたのか最後まで研究に付き合ってくれた人も中には居た。


 そんな人達の協力もあり、研究は鈍足(どんそく)ではあったが少しずつ(すす)んでいった。


 そんなこんなもあり、千年が()ぎた頃には根源への穴を開く技術が確立されつつあった。


 のだが、


 …


 ……


 ………


 千年の間、色々あった。宇宙開発が進み、技術も飛躍的に発達していった。しかし、結果としてその技術を目当てにした宇宙規模の大戦争も勃発(ぼっぱつ)した。


 千年もの間に、名も知れないどこぞの研究者が発明した概念兵器(がいねんへいき)。それを切っ掛けにした大宇宙戦争が勃発したのである。


 概念兵器はあまりに強力な兵器だった。概念装甲や概念弾頭が(おも)な代表例だ。


 前者は概念そのものを身に(まと)う事で、その身を防護(ぼうご)する絶対防護兵装だ。


 後者は概念を物理エネルギーへ転化(てんか)する事で銀河一つを跡形残らず破壊する戦略兵器だ。


 どれも、戦局を大きく覆しうる強力無比な兵器だった。しかし、そんな兵器の数々も私や仲間達の活動により全て回収、破棄された。もうあんな悲劇は()り返してはならない。


 人は(あやま)ちを繰り返してはならないのだから。


 結局、概念兵器の開発者は見つからなかった。しかし、全ての回収と破棄(はき)には成功した。もう二度と概念兵器には(かか)わらないと、各国の首脳に約束もさせた。


 戦争の首謀者も、結果的とはいえ引きずり出す事に成功した。軍事国家の将軍ロイだ。


 どうやら彼は、かなり度を越した戦争狂らしい。肌がひりつくような戦乱(せんらん)を何よりも望んでいたが故に開発者をたぶらかし、そして宇宙全域を()き込み大戦争を引き起こしたのだとか。


 最後まで、彼とは分かり合う事はなかった。しかし、それでも彼は最後まで(わら)っていた。


 笑いながら、彼は乱世の中で散っていった。彼を()ったのは、私だ。


 彼とは結局最後まで分かり合う事はなかった。しかし、せめて彼の事は心に(とど)めておく。


 きっと、クロノ君ならそうするだろうから。


 大戦が終結し、私達の研究は着々と進んでいき………


 そうして、今私達はようやく根源への穴を開く第一歩を()み締めようとしている。


「ユキの姉さん。そろそろ完成(かんせい)するぞ?」


「うん、ありがとうツルギ君。皆も、私一人の(ため)につきあってくれてありがとう」


「ああ、まあ良いよ。俺達がこうして再び出会(であ)えたのも、全部あいつのお(かげ)だしな?」


「そうだよ、私もアキト君もこうして再び(みんな)と再会する日を心待ちにしていたんだよ?」


「ああ、俺も姉さんと同じ気持ちだ。きっと、各国の代表達(だいひょうたち)も同じだと思う」


 そう、この会話からも理解出来る通りこうしてこの世界に(ふたた)び皆と再会した。ある意味これ以上ない奇跡なのだがこれもどうやらクロノ君の仕業(しわざ)らしい。


 クロノ君が世界から消失する際、クロノ君がその(うち)に取り込んでいた(背負っていた)時間軸の全てを開放して今ある時間軸と再統合(さいとうごう)したらしい。


 理屈に合わないし、そもそも直感的に理解しづらい事象(じしょう)だった。


 しかし、それでもきっとクロノ君が(のぞ)んだからこそ叶った奇跡(きせき)なのだろう。


 そして、再びこうして私は皆と再会し共に(わら)い合う事が出来た。それは何より素晴らしい奇跡なのだと私は考えている。


「マスター、各国の代表達から通信(つうしん)が届いてます」


「ん?ああ、キングス大統領に飛一神、クラウン代表、クリシュナとアルジュナ。随分とまあ豪華すぎる顔ぶれだなおい?」


「どの方も、大体同じ事を言っておりますね?どうやら皆様も一枚かませて()しかったと」


「あはは、そのようだね?」


 どうも、皆そうそうに()わりはしないらしい。いや、むしろあの荒廃(こうはい)した世界から解放された結果全員が良いようにはっちゃけた可能性(かのうせい)すらある。


 うん、中々愉快な日常を(おく)っている。


「うん、じゃあまあそろそろ行こうか」


「そうだね、もうゲートも完成した事だし。試運転(しうんてん)と行こうか」


「おうっ」


「ええ」


「ああ」


 全員気持ちは一緒だった。皆、クロノ君に()いたい事があった。


 ヤスミチさん、エリカ、アキト君、ツルギ君、マキナ、そして私こと白川ユキ。


 皆、クロノ君に言いたい事があった。


 そして、皆言いたい事は同じだった。


「じゃあ皆、さっさとクロノ君に会って文句(もんく)を言いましょうか‼」


 そうして、私達はクロノ君と再会する為に。そして彼に文句を言う為に世界を()った。


          ・・・・・・・・・


 そして、目の前には眩く輝く純白(しろ)の空間が広がっていた。そして、其処にはせわしなく動き続ける大量の天使達の姿があった。


 空間の(おく)には、あまりに巨大すぎる結晶体に同じく巨大な黒い鎖のオブジェ。


「此処は、此処が根源(こんげん)?」


「いや、その筈だけれど………」


 私の呟きに、ツルギ君が(こた)えた。しかし、果たして此処は本当に根源なのだろうか?


 それにしては………にぎやか?


「ようこそ、あなた方が(しゅ)がお待ちしていた方々ですね?」


「っ、誰‼」


 気付けば、すぐ背後に一人の青年が立っていた。金髪碧眼に比較的(ととの)った顔立ち、そして一切隙を見せない立ち振る舞い。端的(たんてき)に言って、油断出来なかった。


 いや、それだけじゃない。この青年が身に纏っているもの、それには見覚(みおぼ)えがあった。


「失礼、私の名はミカイル。全ての天使達を統べる(おさ)であり、主の傍に(つか)える側近です」


「貴方、人間(にんげん)でしょう?一体何者?クロノ君とはどんな関係?」


 私の問いに、他の皆も(わず)かに身構える。そう、彼は人間だ。それも、概念装甲や各種概念兵器で身を固めているかなりの手練(てだ)れだ。明らかに常人ではない。


 私達の警戒を(さっ)したのか、ミカイルと名乗る青年は苦笑を浮かべた。まるで、彼には敵意というものを一切感じないのである。それが、ある種不気味(ぶきみ)だ。


 何だ、これは?


「つくづく失礼、私は確かに人間です。簡単に説明すると、あなた方より(さき)にこの根源に到達した存在というべきでしょうか?」


「私達より先に?」


「はい、ちなみに概念兵器を発明(はつめい)したのは私です。それを各国にばらまいたのも私です」


「っ‼?」


 その言葉に、皆から一斉に殺意と敵意が()れ出る。明らかに嫌悪感や侮蔑(ぶべつ)の念が。かくいう私もその発言に怒りを(かく)せずにいる。


 何故なら、概念兵器が各国にばらまかれたせいで宇宙全域を舞台(ぶたい)にした大戦争が勃発、最悪の場合私達の住む宇宙そのものが消滅(しょうめつ)する危険性すらあったからだ。


「何故、そんな事をしたの?一体どれほどの犠牲が、あの兵器で(しょう)じたか分かる?」


 私は、あえて自分の事を(たな)に上げて問う。分かっている、自分にそんな事を問う資格がない事くらい自分自身嫌になるくらいに分かっている。


 けど、それでも()わずにいられない。それほどまでに、あの兵器の数々(かずかず)は酷い悲劇と惨劇をもたらし地獄を生み出したのだから。


 だから………


「ええ、それは理解しております。私自身、あれは失敗だったと()やんでおります」


「失敗?」


「はい、あれは元々人間の善性(ぜんせい)を証明する為に生み出したものなのです」


「善性?」


 人間の善性を証明だって?あれが?


 どういう事なのか理解出来なかった。意味が分からなかった。しかし、一片の興味が()いたのか続きを聞く気になったのも事実だろう。


 だから、私は黙って(つづ)きをうながした。


「ありがとうございます。元々、私は非常に(うたぐ)り深い人間でしてね。人間が本当に力を前にして善性を保てるのか知りたかったんですよ」


「………それで?」


「そんな時、ロイと名乗る軍事国家の将軍が私に(さそ)いをかけてきたのです。人間の善性を証明したいなら実際に強大な力を(あた)えれば良いと」


「………………」


 やはり、あの男が(から)んでいたか。あの戦争の申し子とも言えるような男。たった一人で戦局を覆しうる程の強大な力を持ち、それ故に何より戦いや争いを好む一匹の修羅(しゅら)


 結果、彼を中心にして宇宙は地獄へと変貌(へんぼう)した。地獄という名の火の海へ変わった。


「結果、私は一人根源の地へと逃亡(とうぼう)しそこで出会ったのです。我が(しゅ)、遠藤クロノと」

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