表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新時代の英雄は終焉世界を駆け抜ける~無限と永遠の英雄譚~  作者: ネツアッハ=ソフ
怪物誕生編
89/100

5,色あせた追憶3

 それからしばらくの間、何事もなく平穏(へいおん)な日々が続いた。或いはそう思いたかっただけなのかもしれないけれども。(すく)なくともクリファはそう思っていた。そう、思いたかった。


 しかし、そんな日々もある日唐突に()わりの時を告げる。そう、全ての終わりの時が。


 それは、ある休日の昼頃。珍しく何も用事のない一日を()ごしていた時の事。クリファの携帯電話にニアからコールが(はい)ってきた。


 ニアからの電話に少しだけ心を(はず)ませながら、クリファは通話ボタンを()した。


 しかし………


「クリファ、ごめんなさい………全ては茶番(ちゃばん)だった」


 電話はその一言だけで切れた。(ひど)く不安になってくるクリファ。何の準備も整えず、そのまま部屋を飛び出して()け出してゆく。


 心の中を不安が()たしてゆく。以前から不安はあった。目を向けなかった訳ではない、ただ信じたくないだけの話だった。ニアに(なや)みがあるなど、自分がニアの()り所になっていないなど。


 どうあっても信じたくはなかった。ただそれだけの話だったのだ。


 そして、それが最悪の結末を(むか)えるなど………やはり信じたくはなかった。


          ・・・・・・・・・


「…………………………………………」


 クリファの目の前に、ニアが居た。いや、(すで)にニアは其処には居ない。


 其処にあるのはニアだったものだ。ニアだったもの、其処には彼女が首を()った死体が。彼女の残骸が其処にあるのみだった。


 その前で、クリファはただ呆然(ぼうぜん)と立ち尽くしていた。ただ立ち尽くす事しか出来ない。


 その傍には一冊の手記(しゅき)が置かれていた。ゆらりと、緩慢な動作でその手記を手に取る。


 ゆっくり、その内容を()み締めるように読み進める。其処に書かれた、ニアの心の内を噛み締めるように読み進めてゆく。やがて、その手記を閉じたクリファは目を()じ思考を巡らせ。


「ふざ、けるな………」


 ふざけるな、


 ふざけるなふざけるな、


 ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな………


「ふざけるなああああああああああああああああああああああっっ‼‼‼」


 その怒りと絶望は全てを超越し、クリファは己自身を魔物(まもの)へと変えた。


          ・・・・・・・・・


 そして、世界は炎に(つつ)まれていた。一つの銀河系を掌握していた超文明も、その日終焉を迎え世界を焼く炎と共に燃えていった。そして、その中で一人佇むクリファは既に人間(ヒト)ではない。


 その姿は、既に人間とは()べないものとなっていた。


 後頭部から生える、ねじくれた二本の角。その肌には鱗が(おお)い、瞳は鮮血の赤。背には闇を濃縮したかのようなどす黒い(つばさ)が展開されている。その姿は、まさに魔物そのものだ。


そして、魔物と()り果てたクリファは。無価値(むかち)の魔物は思う。


「………やはり、邪魔(じゃま)が入ったか」


 無価値の思惑では、全ては魔物と化した自身の一撃により終わりを(むか)える筈だった。


 その筈だった。そう、その筈だったのだ。


 しかしそうはならなかった。世界は(ほろ)びを迎える事はなかった。まるで、運命の修正力でも働いたかのように世界は存続(そんぞく)していた。つまり、その(こた)えは一つだ。


「ニア、君の言う通りだったよ。やはりこの世界は(すべ)て茶番だった」


 故に、全ては無価値でしかない。故に、全ては茶番でしかない。


 だから、全て滅びろ。せめてニアの死を無駄(むだ)にしない為にも………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ