表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新時代の英雄は終焉世界を駆け抜ける~無限と永遠の英雄譚~  作者: ネツアッハ=ソフ
怪物誕生編
84/100

プロローグ2

 現在、俺は一種の居心地悪さを(かん)じていた。いや、俺よりむしろユキの方がよほど居心地悪い気分だろうと思うけれどな。


 俺達は今、グレンに()れられ外を歩いていた。外はやはりというか何というか、復興にかなりの時間を要するであろうくらいに(ひど)かった。というか、ほぼ壊滅状態だ。


 街を()いていた炎は静まり、比較的落ち着いてはいる。


 しかし、それでも。いや、だからこそ被害(ひがい)の酷さがより際立(きわだ)って見えていた。


「……………………」


「……………………っ」


 そんな中、俺達に。いや、ユキに()けて周囲からの殺意や憎悪や怒りなどの負の感情が向けられ痛い程に突き刺さっていた。その視線が、ユキを(おび)えさせる。


 そもそも俺に向けられた視線ではない。それは理解している。


 けど、それでも俺にも理解出来るくらいにはその殺意は濃密(のうみつ)だった。


 先程から、ユキは俺の背後に(かく)れたままずっと俯いている。俯き、小刻みに(ふる)えている。


 けど、ある意味それは仕方(しかた)のない事なのかもしれない。ユキはそれだけの事をしたんだ。


「———あの子供(ガキ)だろう?世界を滅茶苦茶にしたの。本当、どっか行ってくれねえかなあ?」


「けど、その(そば)に居るのは確かあれを止めてくれた子だろう?一体どういう関係なんだ?」


「知らねえよそんなの。けど、本当に滅茶苦茶してくれたもんだ。クソッタレが」


 周囲から聞こえる悪態(あくたい)。その怒りや憎しみが、余計にユキを怯えさせる。きっと、今後その言葉が絶える事は決してないのだろう。それだけの事をしたのだ。


 本当に、それは仕方がないのかもしれない。けど………


「けど、それでも俺はそんなユキの(つみ)を一緒に背負うって決めたんだよな………」


 そう言って、俺はユキの手をぎゅっと強く(にぎ)る。一瞬だけ驚いた顔をしたが、それでもユキは俺の手を握り返してきた。その顔には、僅かに()みが浮かんでいる。


 どうやら少しだけ緊張がほぐれたらしい。まだ、完全に落ち着いてはいないだろうけど。


 それでもマシにはなったらしい。


 そんな俺達を見て、グレンは(おだ)やかな笑みを浮かべていた。


 そんな中、周囲の人間と明らかに(こと)なる視線を俺は感じた。明らかに俺に向けられた、


「……………………」


 そちらにこっそりと視線を向ける。瓦礫の陰に隠れる五匹の(けもの)が、其処に居た。


 白蛇、大蜘蛛、蜥蜴、猿、猫。五匹の獣が俺に向けて様々(さまざま)な感情の視線を向けている。恐らくあの崩壊した世界において(おう)と呼ばれた獣達だろう。


 憎しみではなく、怒りでもなく、ただ単純に品定(しなさだ)めするような。恐らくは俺の人物像を見定めるために観察しているのだろう。そんな視線だった。


「………まあ、今はそれで()いのかもしれないな」


「………?クロノ君?」


「何でもないよ」


 それだけ言って、俺はユキに笑みを向ける。


 あいつ等にはそれぞれ人間を(にく)むだけの理由がある。それだけの事をされてきたんだ。


 なら、今は(・・)無理矢理距離を()める必要はないだろう。


 そう思っていると………


「付いたぞ?此処(ここ)だ」


 そう言って、グレンが立ち止まった。俺とユキも立ち止まる。


 其処にはあまり目立(めだ)たない、至って平凡(へいぼん)な家が建っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ