プロローグ
世界が炎に包まれている。世界が崩壊してゆく………文明が、崩壊していく。
そんな中、俺は両親に連れられ逃げていた。火の海の中、逃げ回っていた。
(………戻って、きたのか?)
どうやら、時間遡行は成功したらしい。少し、座標がズレてしまったけれど。まあ良い、まだこの程度なら取り返しは付くだろう。そう思い………
俺は、両親の手を振り払った。驚いた顔で、両親が俺の方へ振り向く。立ち止まっている暇なんて欠片程もありはしない。ありはしないのだけど………
それでも、俺は両親と向き合う。
「クロノ、どうしたの?」
「クロノ?」
怪訝な顔で問い掛ける両親に、俺は真っ直ぐ向き合った。
きっと、失敗したらもう二度とチャンスは無いだろう。だからこそ、俺は今度こそ失敗なんてする訳にはいかないんだ。今度こそ、絶対に………
俺の背には、全ての命が乗っているのだから。
「ごめん、俺はやらなければならない事があるんだ。行ってくる!」
「っ、クロノ⁉」
「クロノ、お前‼?」
両親が何か言う前に、俺は走り出した。大丈夫、あいつの場所は分かっている。真っ直ぐと炎に包まれた街の中を駆け抜けてゆく。今度こそ彼女を救い出す為に。
人々が逃げ回る中、それでも俺はその人々とは逆の方へと走り抜ける。其処に、彼女が居ると理解しているからこそ其処に向けて走り抜ける。只管走り続ける。
今度こそ、全てに決着を付ける為に………滅びゆく世界を駆け抜ける。




