エピローグ
回帰する時間流の中、俺は考えていた。
思い出すのはユキとの思い出。初めて出会った時から、今までの記憶。
初めて出会ったのは幼少の頃、両親の論文発表に付いていった時だった。あの時、待合室で一人の少女と出会い話し合ったのが最初だった。そう、あの頃出会った少女こそユキだったのだ。
きっと両親は全て知っていたのだろう。あの日の夜、出会った少女の話をした時から。恐らく全てを理解していたのだろうと思う。だからこそ、文明が滅びたあの日覚悟を決めていたんだ。
そして、失敗したんだろう………
そして、次に彼女と出会ったのは文明が滅びた後の世界だった。
その時にはもう、俺は彼女の事はすっかり忘れていたけど。それでもきっと、彼女は俺の事を覚えていたのだろうと思う。覚えていた上で、黙っていたのだろう。
ずっと、彼女は自分が犯した罪を償う事に必死だった。
ずっと、罪を清算しようと必死だった。
永い時の中、人々の怒りと憎悪に晒され心をすり減らして。それでも、必死に生きてきた。
必死に生きて、罪を償う為にのみ費やしてきたのだろう。文字通り、己の心を削って。
きっと、その頃には彼女は限界だった筈なのだ。彼女は、限界を超えて生きていたのだ。
罪を償う為に。過ちを清算する為に。
それが、俺には悲しかった。見ていてとても苦しかった。きっと、俺はその時には既に彼女の事を愛していたのだろう。愛してしまっていたのだろう。
何故?理由は分からない。けど、それでも俺は彼女が大好きだ。だからこそ、俺はユキにきちんと救われて欲しいんだ。救われて欲しいと思ったんだ。
だから………
「きっと、救ってみせるからな?ユキ」
確かな意思を籠め、巻き戻る時間流の中俺は呟いた。




