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新時代の英雄は終焉世界を駆け抜ける~無限と永遠の英雄譚~  作者: ネツアッハ=ソフ
架空大陸決戦編
65/100

プロローグ

 架空大陸ムー………中央の玉座(ぎょくざ)にて、少女はひたすら()ち続けていた。


 白川ユキ。その名と役割を放棄(ほうき)し、星のアバターとして人類の敵対者として返り咲いた。後は遠藤クロノに自身を殺して貰うのみ。それできっと、全ては()わる。終わると信じている。


 未だ、自身を内部から(さいな)む苦痛は治まらない。それは、クロノの内側から奪い去ったよく分からない何かが原因である。そう、これは分からないモノだ。理解の(およ)ばない何かだ。


 よく分からない何か。人類では、否———人類(ヒト)を超越した自身ですら理解の及ばない何か。


 これを理解する事は、恐らく自己の破滅(はめつ)に直結する。それは、死より尚恐ろしい終焉だ。


 故に、これを理解しようとする事自体が間違(まちが)いなのだ。これを理解してはいけない。


 故に、少女はそれを決して直視(ちょくし)しない。それと向き合わない事で、少女はその永遠にも等しい苦痛から逃れていたのである。


 己を内部から苛む苦痛は治まらない。地獄(じごく)のごとき苦痛は止まない。しかし、それを少女は一切向き合わない事で意識から()らし逃れている。


 つまり、意図的に苦痛から意識を(はず)しているという事だ。


 そして、それこそがこの理解出来ない何かに対する明確な最適解(さいてきかい)でもある。


「………大丈夫、きっと…………これ、で()わる。全て」


 そう呟く。呟いて、()みを浮かべる。それは、決して(つよ)がりなどではない。


 少女は待つ。待ち続ける。きっと、クロノはそんな少女の事すら(たす)けようとするだろう。そんな少女の事ですら(すく)おうとするだろう。彼は、(やさ)しいから。何処までも優しいから。


 少女は待つ、少年の優しさを知るが故に。自身の前へ必ず()ると信じてる。


 そして、妄信しているのだ。きっと、彼ならば己を罪と罰から解放(かいほう)してくれると。あの少年ならば必ず死という救いを自身に(あた)えてくれると。信じている。


 けど、少女は一つだけ間違いを犯していた。一つだけ、誤認(ごにん)していた。


 少年が、どれほど少女を(あい)しているか。そして、少女がどれほど少年を愛しているか。


 そう、少女と少年は一切の虚飾(うそ)装飾(いつわり)が不可能なレベルで互いを愛していたのだ。


 少女は少年の事が大好きだった。少年も、そんな少女の事を愛していた。


 そのたった一つの間違いが、大きな計算違いを()こす事になる。少女の計画は、最初から破綻しているのを彼女自身が未だ()らないのだ。


 或いは、その少女ははじまりから破綻する運命(うんめい)だったのか。世界を破壊する生体兵器として生み出されたその瞬間から、彼女は既に破綻の(みち)しか無かったのか。


 それは誰にも分からない。ある存在(モノ)以外には。


          ・・・・・・・・・


 直後、架空大陸全土を()るがす爆撃があった。

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