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新時代の英雄は終焉世界を駆け抜ける~無限と永遠の英雄譚~  作者: ネツアッハ=ソフ
旧神奈川編
55/100

エピローグ

「時を………()える………?」


 思わず、といった具合にヤスミチさんの口からそんな言葉が()れる。無論、他の皆も同様に愕然としている様子である。俺は、自分の異能(いのう)について理解があったから驚きは少ないが。


 しかし、多少は驚いていた。なるほど、時を越えるか。確かに、俺の異能を使えば時を越える事くらいは十分に可能だろう。いや、この場合は時を(さかのぼ)るか。


 俺の異能は言ってしまえば完全制御された反エントロピー。即ち、時の(なが)れを逆流させる。


 ………時間の()という概念がある。時間の流れを(しめ)す重要な概念ではあるが。


 簡単に説明をすれば、時間の流れは過去から未来に向けて一方向にしか(すす)まないという。しかし俺の異能はその時間の矢を反転させる事が出来る。つまり、過去への回帰(かいき)だ。


 それを利用すれば、恐らく大崩壊そのものを未然に(ふせ)ぐ事も容易いだろう。しかし、


「本当に良いのか?それをすれば、この時間軸(じかんじく)は………」


「うん、この時間軸は新たに生まれた時間軸によって消滅(しょうめつ)するでしょう。或いは、別の可能性として分岐するだけなのかもしれないけど」


「本当にそれで良いのか?それは、都合の良い世界に()げているだけでは………」


 俺の言葉に、ハクは首を左右に()った。


 その表情は何処か悲しげで、もうどうにもならない現実に対し諦観(ていかん)のような感情が見えた。


「貴方は多分、何処までも(やさ)しいのでしょう。だからこそ、その道を(えら)ぶ事が出来ない」


「………それは」


 違う。そう言おうとしたが、言葉に()まって言えなかった。


 対するハクは話を続ける。


「けど、違うの。そうじゃない………この世界はどの道もう(ほろ)びるしかない。()んでいる」


「そんな事———」


 そんな事はない、と。


 そう言おうとした。その瞬間———


 突然空間を越えて戦闘機のような何かが出現(しゅつげん)した。それは流線形のフォルムをしたステルス機のような形状をしており、しかしそのカラーリングはステルス機にあるまじき派手さだった。


 ドラゴンに(つるぎ)が突き刺さった図柄、その下に英語でジョン・スミスと()かれていた。


 ………何だ、これは?


 その中から、一人の青年が出てくる。何処か(あわ)てた様子だ。


「どうした、フィリップ=クロス補佐官(ほさかん)?」


「た、たた………大変です大統領!西欧(せいおう)の代表、クラウンが世界中に声明を!」


「………それで、クラウン代表は何と言っているのだ?」


 若干緊張を()びたような声で、大統領は()う。どうやら、かなり大事らしい。


 フィリップ補佐官は何とか気を落ち着け、ゆっくり呼吸を(ととの)えた後言った。


「最終決戦の時は()た、世界中に居る我が同胞達よ集結し結束(けっそく)せよと」


「ふむ………」


 僅かに考え込む仕種(しぐさ)を見せる大統領。しかし、次にフィリップ補佐官が言った言葉に思わずその耳を疑う事となるのだった。


 無論(むろん)、俺達も………


「それから、もう一つ………決戦の前に、話したい事があると。場所は旧日本(きゅうにほん)でと」


「っ、何だと‼」


 思わず、ヤスミチさんが驚きに声を()げる事になる内容(ないよう)だった。

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