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新時代の英雄は終焉世界を駆け抜ける~無限と永遠の英雄譚~  作者: ネツアッハ=ソフ
旧神奈川編
52/100

閑話、その頃架空大陸にて

 その頃、架空大陸ムー………中央の玉座(ぎょくざ)にて。


 星のアバターこと白川ユキは玉座に座した状態で耐えがたい苦痛(くつう)にあえいでいた。その身体からは絶えず陽炎が立ち上り、周囲を焼き尽くす業火(ごうか)となって現れている。


 まるで、ユキの身体を地獄の業火が焼き尽くさんと顕現(けんげん)しているかのよう。しかし、それでもユキはその苦痛を渾身の気合で押し(とど)め身体の損傷を即時修復する。


 しかし、それがかえって大きな苦痛に(つな)がっているのが現状であった。


 再生しては()かれ、そして焼かれては再生しの繰り返し。永遠(えいえん)の痛苦。


「クロノ、君は………これほどのモノを今まで…………」


 そう、この状態はクロノの中からアイン=ソフ=オウルの人格を(うば)った事で起きていた。


 彼女は知っていた。クロノの中に、異能とはまた異なる異質(いしつ)な何かが宿(やど)っていた事を。


 彼女がやったのは端的に言って、その異質な何かを彼から摘出(てきしゅつ)し奪い去った事だ。


 しかし、彼女はついぞその異質な何かを理解する事が出来(でき)なかった。一体何だこれは?こんなものが果たして存在するのか?存在して()いのか?理解出来ない。分からない。


 何処までも異質で異形な何か。理解の範疇(はんちゅう)を超えた、理解すること自体が間違っているようなありえない事象の具現が其処にあるような。何処(どこ)までも理解不能なアンノウン。


 恐らく、正面から向き合えばそれだけで(くる)ってしまうような。そんな存在だった。


 それを、ユキは一切向き合わず理解を放棄(ほうき)する事で何とか(おさ)え込んでいた。


 これは駄目だ。こんなものは存在してはいけない。この物質界(セカイ)に存在すべきではない。これが現れればそれだけで世界の全てが(ゆが)んで狂ってしまう。そういう存在だ。


 ユキは知らなかった。この存在をかつて、ある人物が予見(よけん)し言及していた事実を。


 かつてとあるギリシャの哲学者が言った、???という名の理論(かいぶつ)を。


          ・・・・・・・・・


 自身の主、母の苦痛を前にしてオロチは思わず息を()んだ。


 母である星のアバター、その苦痛に気圧(けお)されたのではない。それ自体に思う所はある。しかしそれをおして余りある程にオロチは感じていた。彼女の決意と覚悟の(かた)さを。


 自ら死へと向かう。贖罪(しょくざい)の為に、自ら死に向かうその姿を。


「母よ、貴女(あなた)はそれほどまでに死にたいというのか?それほどまでに死にたかったのか?」


 オロチは(くや)しかった。悲しかった。自身が(すく)いたかった母が、何より死を望んでいた事を。


 もう、(すで)に彼女は死ぬしかない状態にまで()い込まれていた事実に。その事実にオロチは何よりも悲しく辛く悔しかった。それを理解出来ていなかった自分自身に(はら)が立った。


「………欲しい、力が。母を救えるだけの力が欲しい。こんな理不尽(りふじん)など断じて」


 断じて、こんな理不尽など(みと)めてなるものか。その憤りは、声にならぬ声となって。

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