プロローグ2
旧アメリカ大陸———ホワイトハウス跡地、現大統領府。
かつてホワイトハウスと呼ばれた建物は文明崩壊に伴い、永い年月をかけて復旧が進められた。その結果かつて以上に堅固かつ巨大な要塞の如き様相となった。
その堅牢さは大陸さえ崩壊させる王の一撃であろうと数発ならば耐え凌げるほどだ。
たった数発と侮ってはいけない。王の一撃を数発とはいえ耐え凌げるという事は、即ちその耐久力は惑星に比するかそれ以上とすら言えるのだから。通常ならばあり得ないだろう。
それを可能としたのが、旧アメリカが推し進めてきた旧文明の技術復旧及び兵器開発だ。旧アメリカはその活動により、この崩壊した世界においてより強大な勢力と化している。
その技術の一端こそが、架空エネルギーによるシェルターだ。
つまり、簡単にざっくりと説明すれば意思のエネルギーを利用したバリアだ。
元が意思の波長由来のエネルギーである為、物質エネルギーに依存しない。それ故に王の一撃すら数発程度なら耐え凌げるのである。
それは即ち、このシェルターを物理的手段により破壊する事は不可能という事実。
そして、そんな現大統領府の執務室にて大統領と側近が会話していた。
その内容は、やはり王の話だった。
「怪物の王、ゲオルギウスのドラゴンが旧日本に干渉を初めているようです」
それは、旧アメリカの情報部が集めた暗号文の内容だ。
「ほう、それは何故だ?」
「どうやら、かの国に居るようですね。アバターが」
アバター。その言葉に、大統領の瞳が細く鋭くぎらついた。
全ての怪物がたった一人の女王を中心にしている。その事実は旧アメリカとて承知の上。故に彼等は彼女の討伐こそを最上級の目的としているのだ。
それこそ、彼等旧アメリカが。否、全世界が掲げる大義であり正義なのだから。
「で?ゲオルギウスはどのような干渉を旧日本に行っているのだ?」
「はい、かの王は旧日本に自らの配下たる甲殻バジリスクを大量に送り続けていると」
「ふむ、星のアバターもついに本腰を入れ始めたという事か?しかし何故旧日本なのだ」
「それは分かりません。しかし、かの女王が人類文明を一掃した時に最も苛烈に攻めたのが旧日本だという話は有名ですから。もしかすれば、其処に意味があるのかもしれません」
そう答える側近に対し、大統領は深く思案する。
「………それもやはり、憶測の域を出んか。何時までも此処に引き篭もってはやはり解らん事が多すぎるというものだな。少し、俺も動いてみるか?」
「っ、大統領自ら出向くとおっしゃるのですか?」
「そうだ」
その言葉に、側近は絶句した。この崩壊した世界において、国家元首クラスの人間が自らの領土を出る事など滅多に無い。それは、単純に民を守る兵の指揮を執る者が居なくなるからだ。
故に、彼の発言は容易く容認出来るものではなかった。しかし、だ。
「考えてもみよ、我が旧アメリカにとって最上位の脅威とは何か?」
「………それ、は」
「怪猫王チェシャはそもそも脅威にすらならん。かの王は元より自らの領域に害さえ無ければその力を振るうような真似はせんではないか。なら、最たる脅威は即ちかの竜王よ」
「……………………」
「それに」
そう言って、大統領はその口元を僅かに歪め笑みを作る。
「今や旧アメリカだの旧日本だのと言っている場合ではないだろう?」
「……………………分かりました。全ては大統領の意のままに」
そして、物語は更に加速していく事となる。
それがどのように進んでゆくのか?それは誰にも分からない。




