エピローグ
旧神奈川———鎌倉市南部のとある場所に少女は居た。
少女の名は桐生ハク。久遠リンネの幼馴染であり、多重人格と多重異能を持つ者である。その稀有な力により少女は生かされていると言っても過言ではないだろう。
事実、少女が生かされているのはその力による部分が大きい。多重人格により、複数に分岐し分裂した特異すぎる異能の数々。その力に着目した二体の王により少女は連れ去られたのだ。
いや、実際は少し違う………
実際少女はこの展開を既に理解していた。そして、受け入れてもいたのである。
つまり、少女は敢えてこの状況を受け入れていたのだ。いや、こうなるよう全てを仕組んだとしても決して間違いではないだろう。
何故か?
それは、少女の保有する異能の一つ。未来を演算する異能による結果だ。つまり、少女はこの展開を既に予測出来ていたのだ。故に、その先の展開を少女は全て予測出来ていた。
数ある異能の中でも、未来を演算する異能はとりわけ強大な部類に入る。未来を演算する異能は単純な未来予測とは似て非なる力だ。
未来を予測するに留まらず、更に先の展開まで演算する事が出来る。
つまり、予測した結果に対する回答。少女にはこれから先どのように行動すれば良いのかが全て理解し把握出来ているのである。
それだけではない。この先、どのように行動すればどのような結果へと繋がるか?全ての人類が取りうる思考や行動などのパターンを把握出来てしまうのである。
そして、それ等を把握し演算する知能。それこそがこの異能の正体だ。
つまり、惑星規模のシミュレーターだ。
故に、少女は一切焦らない。未来に対する回答は既に出ているのだから。
起こりうる全ての未来に対する対処法は既に出ている。故に、少女は今は動かない。例え、王に力で脅されたとしても絶対に動かないだろう。
これからどのように行動すればどのような結果に繋がるか。全ての回答は出ている。
此処で動かない事が、今の少女が出来る選択なのだから。




