1 お伽話
前作が完全に終わってから続きを書きますので、今は序章のみとなりますm(_ _)m 7/12
むかし、むかし、ひとりの少年がおりました。
少年は優しい家族と一緒に暮らしていましたが、ある時、少年はひとりぼっちになってしまいます。
寂しくなった少年は、また皆で暮らしたいとかみさまにお願いをします。
ですが、そのお願いはかみさまでも叶える事は出来ませんでした。
かみさまは少年のお願いの代わりに、少年のために共にこの地に降り立ち、4人の妻を与え、かみさまも妻となる事で少年を救いました。
少年はかみさまに感謝をし、末長く仲良く暮らしましたとさ。おしまい。
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「イーオ兄ちゃん、またお伽話聞かせてくれよな!」
「私もまた聞きたい!」
「わかったよ。また今度ね。」
僕をイーオと呼ぶ子供達を見送りながら、僕も帰宅する事にした。イーオと言うのは僕の名前だ。
建国のお伽話にある、神様が生み出した少年の妻の名前から取ったそうだ。
父は捨てられていた僕を拾い、最初女の子だと思って付けたらしい。すぐ男だと気付きそうなものだが、何故かそのまま名付けられた。解せない。
僕は猟師をしていて狩りの合間の日に、村の広場で子供達に定期的に昔話を聞かせている。
記憶力には自信があるから、大体の事は忘れない。この昔話も、建国の昔話をそのまま話しているだけだ。
「おぅ、イーオ。いつもガキどもの相手させて、すまねぇな。親父さんにも宜しく言っといてくれ。」
村の気のいいおじさんが僕に話かけてきたから、外套のフードを深く被り直して返事をする。
「僕も成人してますから、子供達の面倒を見るのは当然ですよ。そうだ、おじさん。今度干し肉と野菜の交換をお願いしてもいいですか?」
村ではお金なんて流通してないから、基本物々交換だ。行商人も滅多に来ないし、余り必要ないのもあるけれど。
僕とおじさんが話をしていると、遠くでこちらをチラチラ見ながらヒソヒソ話をしている人達に気付いた。
「わかった、いつでも来な!・・・なぁイーオ、お前を不吉だと言うやつらもいるが、俺はそんな事思っちゃいねぇ。働き者だし、ガキどもの面倒見はいいし、礼儀正しいからな。」
おじさんも気付いたらしく、僕が気にしないように言ってくれたんだろう。
僕が不吉だと言われるのには、理由がある。
真っ白な髪をしているからだ。
村から出た事が無いから聞いただけなんだけれど、真っ白な髪を持つ人は居ないんだそうだ。
事実、この村の人達も黒と白以外色んな髪の色をしているからね。
「大丈夫ですよ、僕は気にしてませんから。じゃあ、数日中には持っていきますね。」
「あぁ、わかった。気をつけて帰るんだぞ。」
「はい、ありがとうございます。でも、獣ぐらいなら僕がこの村で一番強いですから、逆に干し肉にしてやりますよ。」
このおじさんのように、優しい人達が居るおかげで僕は暮らしていけるのだから、心配させないようにしないと。
「はははっ!違いない!」
僕はおじさんに軽くお辞儀をしてから、家に向かった。
僕の家は村の中心から少し離れている。獲物の解体やらをするために、広い場所が必要だからだと父は言っていた。
でも、僕が拾われてからこの村に来たそうだから、僕が居た事も関係しているんだと思う。
父は元兵士で、何処かの貴族のお抱えだったそうだが、片足を戦場で失ってからは、その貴族の領地にあるこの村に代官として移り住んだそうだ。詳しくは教えてくれないから、先程のおじさんに聞いたんだけどね。
僕が礼儀を身につけられたのも、獲物を仕留めるための弓や、剣が扱えるのも父のおかげだった。だから、この村で一番強いって冗談も言えるんだ。猟師は余り居ないし。
「ただいま、父さん。」
「おかえりイーオ。村の様子はどうだった?」
父は代官でもあるから、僕が村に行くたびに村で困った事が起こってないかを聞いてくる。
義足があるとはいえ、そこまで自由には動けないからね。
「うん、変わりないよ。待っててね、これから夕飯の支度をするから。」
「すまないな。お前の飯は俺よりも旨いから、つい任せてしまうんだ。」
「大丈夫だよ。それより税を納めるための目録は出来たの?」
「いいや、まだだな。後で手伝ってくれるか?」
「わかったよ、父さん。」
多少の読み書きは出来るので、補助程度なら僕にも出来た。
近いうちに、冬籠りのための狩りにいかなければならないから、解体等で忙しくなる前に父の手伝いを終わらせよう。
「では、頼んだよ。それで、今日は何を作るんだ?」
「うーん、そうだなぁ・・・。」
僕は、幸せだと思う。
確かに影で何かを言われる事はあるけれど、優しい人達に囲まれて、不自由なく暮らせているから、これ以上を望む必要なんかない。
この幸せがずっと続いて行くと、その時はそう思って居たんだ。