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第二王女の裏世界征服  作者: つのつき ぼーし
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零話

初投稿です。


「……つまり別れたいってこと!?」


突然横の席に座っていた女性が大声を出した。


「ごめん……でもその、「……っ、もういいわよ!!その優柔不断でうじうじしたとこ直しなさいよね!!」


縮こまる男性、男性をけなす女性……いやアドバイスだった。知り合いでも何でもないけど意外といい人かもしれない、なんて考えながら氷がとけて薄まったアイスココアを飲み干した。


喫茶店めぐりは僕の数少ない趣味のひとつだ。今日は本でも読んでゆっくりしに来たのだが、お隣の席で見知らぬ男女が別れ話を始めてもう一時間。ようやく終わったらしく女の人が千円をテーブルにたたきつけて喫茶店を出て行き、後にはうなだれた男性が一人残った。


なんとなく居心地の悪さを感じて財布を取り出し席を立つ。


「あ」


手をすべらせた。財布は床に一直線だ。ため息をつきながら散らばった小銭を拾い集めていると、隣からにゅっと手が伸びてきた。驚いて顔を上げる。先ほどまでうなだれていた男性がいつの間にか小銭拾いを手伝ってくれていたのだ。


「ありがとうございました」

「いえ」


短い会話を交わし、会計にむかおうと立ち上がる。すると


「すみません、今ってお急ぎですか?」


と男性が駅前でアンケート調査でもするみたいに僕に声をかける。突然のことだったので思わず正直に


「いえ、別に」


と答えてしまった。しまった、急いでいると言えばよかった。そう思っても、もう遅い。


「よかった、少し頼まれごとをしてほしいんです。」



「じゃあ、お願いね。ほんとにありがとう」


そういって男性は去っていった。僕はかわいらしいハンカチをポケットにしまって喫茶店を出る。もちろんこのハンカチは僕のものではない。これは彼の頼みごとに関するものだ。


彼の頼み事は、このハンカチを先ほどまで別れ話をしていた女性に渡してほしいということだった。忘れ物だが、別れた男に渡されるよりは見知らぬ男に渡されるほうがまだましだろうと考えたらしい。 


近くで見るとずいぶんと幸の薄そうな顔をした男だった。だからか、ほかに頼めと突っぱねるのも気が引けてつい頼みを聞いてしまった。


しかし見知らぬ男にハンカチ忘れてましたよと声をかけられるというのはどうなんだろうか。良くてナンパ、悪くてストーカーなんかに勘違いされるかもしれない。だが残念、そのことに気づいたのは頼みを引き受け、さらにアイスココアとナッツタルト代を払ってもらった後だった。


少し軽率だったことは否めないが、まあ大丈夫だろう……とぼんやり考えていたところでハンカチの持ち主を見つけた。信号待ちをしている。


「あの……」


声をかけようとしたところで視界の端で男が走り出したのが見えた。

息は荒く、血走った目で彼女をにらみつけている。車道に突き飛ばす気だ、と理解した瞬間、体が動き出していた。


突き飛ばされてバランスを崩した彼女の腕をひっつかみ、歩道に引っ張り戻す。反動で自分の体が車道に勢いよく投げ出され、転がる。眼前に迫るトラックのクラクションが遠くに聞こえ、そこで意識が途切れた。



CopyLight(C) 2020ーつのつき ぼーし

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