まだ回想です。「何だ、この気持ちは。せっかく忘れようとしてたのに――」
「ううう。ぶっくまあくが増えたり減ったり、これぞ一喜一憂じゃのう」
「更新が遅いからですよね」
「むうう、ぐうの音も出ん」
「それに元々、反逆のMYTH・シーズン4と薄ーくリンクしながら進む予定でしたし。あちらが停滞してるとこちらも進みません」
「なあ師匠よ、もはやアケボシ殿に遠慮する必要などないのではないか!? わらわにも我慢の限界というものがあろうぞ!!」
「そうですね、連載からはや1年以上。もうアナタ、とっくに帰ってなきゃいけない時期ですしね」
「とっ、とにかく警察に……」
浴室で気絶した女性をリビングへと運び、携帯で電話をかけます。
××××-4545-0721-1919-3150-6948-8181-8102-2949-2943――。
『Ja……こちら【高原署】のシュテイン・ドッジです。ヒック……』
気の抜けた応答に対しこちらの心臓はバクバクです。何せ、こんな深夜にこんな用件でこんな通報をする非ィ日常な状況など初めてですから。
『この番号を知ってるってことはカタギじゃあないネ。まあ何でも構わないけど……凶悪テロか超常現象関係の相談でいいのかい。ウィィ……』
「あっ、あの……加減召馬と申しますが」
『カゲン? ああ、確かウチのchefが面倒みた子かナ。どうしたの』
「じっ、実は自宅に武器を持った不審者が。今は気を失ってますが」
『ほう、ご自慢の筋肉で返り討ちにでもしたのかい。やるもんだネ』
「いえ、その」
『とにかく、そういう事情ならしばらくは安全ってことなのかナ?』
「まっ、まあ」
『Alles klar、では今から行くとするよ。酔いを覚ましてから……ネ』
そうして通話を終え、さて例の女性はどうしたかと視線を戻すと、
「……ギロリ」
早くも目覚め、短剣を抜き僕をにらんでいました。しかし「空気が重い――上手く動けぬ」などと呟きつつ部屋の隅へぎこちなく歩くのみで、
「貴様は何者じゃ……名乗れ」
敵意も依然むき出しですが襲っては来なそうです。ひとまず僕の方もほうきを剣、ちり取りを盾に彼らの到着まで様子を見ることにしました。
“グギュルルルルルルッ――”
「クッ、無理が祟ったか……」
そんな時不意に、お腹の虫とともに女性は再び床に崩れ落ちました。全身の傷や汚れに加えてこれは、時間差で衰弱がやってきた感じですか。
その目も虚ろで、まさに虫の息という表現がピッタリです。しかしこれはチャンス。身の危険はもう、ほぼなくなったと言っていいでしょう。
「最期が飢え死にとは……まっこと情けなしよ。フフ……フフフッ」
そう……危険はもう、ない。
もう……。
……。
* * *
『すみませんお母さん、僕が悪かったです。だから、何か食べ……』
『おい舞亜、ガキがブツブツ言ってんぞぉ。うるせぇし黙らせろよ』
『知るかッ!! こんなヤツ産んだせいで、私まで巻き添えよ!!』
* * *
「……くっっ」
その時僕の身体が勝手に動きました。向かう先は台所へと。そしてシャワーを浴びる前に作っていた、明日の朝食のお皿を手に戻ってきます。
「これ、どうぞ。蒸し鶏です」
「……」
「ほら、召し上がって下さい」
「……何のつもりじゃ、貴様」
「お腹が空いてるんでしょう」
「要らぬ。施しは……受けぬ」
「僕は、敵じゃありませんよ」
「何っ」
「さあ、これを食べて元気を」
「……」
少しずつ眼光からまなざしへと変容してゆく表情。それを受けるとまたこの手が勝手に動き、肉を切り分けたのち自ら口に運んでみせました。
「この通り、毒なんか入ってませんから」
「……」
再度ナイフで一口大に、今度のフォークはその小さな唇へと。気恥しそうに碧眼を泳がせて頬を薄く染めながらも、静かに噛みしめ始めます。
「むうおっ!? こっこ、これはっ!? 力が、湧き出ッ――!!」
すると突然、半死半生だったはずの彼女はいきなり立ち上がると、
「美
味
い
ぞ
お
お
お
ぉ
ぉ
!!!!!!!!!!!!」