回想なのじゃ! 「勝ち目は万にひとつ? フッ充分すぎるわ!」
「はあ……」
「どうしたんです、久々の投稿なのにため息ついて」
「ぶっくまあくが、貴重な誉れの証がひとつ……なくなってしまったのじゃ」
「仕方ないでしょうこんなに放置してたんですから。自業自得です」
「ち、違うのじゃ! 実は『反逆のみぃす』から圧力がかかっての」
「圧力とは」
「姫武将が敗色濃厚な状況下で抗うさまが似たような展開の繰り返しになると言うので、ほとぼりが冷めるまでは大人しくせよと――」
「それでも2ヶ月は長すぎましたね。因果応報です」
「うう……。というわけでわらわが師匠のところへ身を寄せるまでの“回想”ここに開幕なのじゃ……」
「もはや、勝ち目は万にひとつもなし」
「あの局面であの方が寝返らなければ」
「この戦、むしろ勝てていたのに!!」
誉れある勇士集いし場たる本陣のはずが、そこに響くは鬨の声どころか虫のごとくか細い弱音と、騎士にあるまじき恨み節であった。
それらの奏でる不響和の聞くに耐えぬうねりがこの耳を蝕む。ハッ、貧弱な軟弱な薄弱な脆弱な。
「これまでです王子。どうかご決断を」
「ばかな……オレの采配でこんなザマだと!? クソがっ!!」
やれやれ、みなを率いる首魁までこの体たらくとはの。いずれ君主となる者がかように女々しくては民や兵らに示しがつかなかろう。
見かねたわらわは弱々しく俯くその背を叩き「いくら悔やんだとて時は戻らぬ。いかな逆境でも最善の策をとるのじゃ」と励ました。
「メルクリスティア様! お身体はもうよろしいのですか!?」
されど臣下の声をよそに、こやつはこの手を乱暴に振り払い、
「テメェッ、どの口が言いやがる!! こんな大一番の、天下分け目の大決戦で1週間も食あたりなんぞで寝込みくさりやがって!!」
と、わらわの髪に荒々しくつかみかかり幼子のように喚いた。
「もう遅ぇよ! 戦況は針のムシロ踏みスッ転んでの大劣勢、風前の灯で焼け焦げての旗色悪しだ! アンタが呑気してたせいでな!」
「そうじゃ、弁解のしようもない。ゆえにこの責は我が命を賭して果たしてみせよう。どうか許せ」
「はあ? あのな、オレたちはな。繰り返しの撤退に再三の敗走! 何より度重なる味方の離反で四方を囲まれどん詰まりなんだぞ!」
「……」
「戦って足掻くにせよもう勝機は万にひとつだ! 責を果たすだと? いくら常勝無敗、百戦百勝のアンタが動けても無理なんだよ!」
「案ずるな、活路ならそこにある。我こそはという者のみわらわに続くがよかろう」
わらわは腰の白刃を抜き言った。その切先の指し示す、飛来する矢のごとく迫る敵の大軍勢へと。
「は!? しょっ、正気で仰っておいでか!? あまりにも無茶が過ぎますぞ!!」
「可能性が万にひとつもあらば充分よ。そしてこやつさえ死なせなければ勝ちじゃ」
当人の瞳が一瞬光る。しかしやつめはそれを隠すように目を伏せると再びこの髪を握りしめ「捨て鉢に、なる気かよ」と絞り出した。
「国は、王家はどうすんだよ。アンタがいなきゃ仕方ねえだろ」
「わらわは所詮戦しかできぬゆえ、泰平の世ではお払い箱の身。次代を担うは利発なるそなたじゃ」
「いや、オレには人望がねえ。所詮アンタみたいに、皆から必要とされる陽にはなれそうにねえよ」
「ならば変わればよい。ここぞの場で失態を犯すわらわより、しかと心を改めたそなたこそ“器”よ。負より正と成る、それが強さじゃ」
「それは違う。これはオレの失策、オレだけの責任なんだ!!」
この髪を固く握りしめ、首の前で交差する両の手に力が入る。
「アンタなしでも戦える、王位を継ぐのはこのオレだと示すため引き際を見誤り続けた結果がこれさ。やはりアンタでなきゃ駄目だ!」
「否、違わず。未来へ望みを繋ぐためにもこれはわらわがやらねば駄目なのじゃ。そうであろう?」
「いやだ! いやだいやだいやだ!! やめてくれ姉上っ!!」
次は肩に置かれた甲に、雫が一滴また一滴と垂れ落ちてゆく度に、嗚咽が慟哭へと変わってゆく。
「がふ!!」
「達者での」
「――まっ、待って姉上。行か、行かないで、くれよぉっ――」
では、な――。せいぜい精進するのじゃぞ。我が身と大きさのそう変わらぬ痩躯に国を、民を頼むぞと拳で突き応えわらわは叫んだ。
「さあ征くぞ!! 散りゆく花の紅き美をとくと魅せ――碧き希望の種子をしかと残すのじゃ!!」
「きっとあの親切な御仁はさいとを退会されたのじゃ……。そうじゃきっとそうに違いない……ぶつぶつ」
「はあ、依然“向こう”の国は危機的状況なのにタンクトップとショーパン1枚で缶チューハイ片手に呆けてるイイ年した女性がひとり」
「そうじゃ! ――ええと、少しでも興味深かったら是非ぶっくまあくや☆でのご支援、ご評価を頂戴できると嬉しいのじゃ! よろしくお頼み申し上げまする♪」
「うわ、ついにクレクレ厨に成り下がりましたかこの人……。高潔な騎士が聞いて呆れますね」