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Soul The Beat  作者: hygirl
魂光始動
7/36

7話 十二の玉座


 どこかの部屋。部屋は部屋だが強いて言うなら病室と言うべきだろう。

よくあるベッドがいくつも並んだそこには白衣の医師が数人おり、並ぶベッドの一つには響希が眠りについていた。

 

 体に異常があるのか点滴を打たれており、点滴を打たれる響希の様子を医師がチェックしていた。


「ん……」

 

 医師がチェックする中、眠りについていた響希が目を覚ます。

目を覚ました響希はゆっくりと体を起こそうとしたが、医師はそれを止めた。

 

「まだ起き上がらないで。

もう少し安静にしていてください」

 

「ここは?」

 

「ここは『天護星団』の施設の中にある医療棟です。

キミは二日前の戦闘中に気を失ったらしく、狂月隊長がここまで運んできてくれたんだ」

 

「そうだったんですか……って二日前!?

え……オレ、二日も寝てたんですか!?」

 

「そうだよ。

何があったかは狂月隊長は何も言わずにキミを私たちに任せて行ったから検査をして点滴による栄養補給をしていたんだ」

 

「そ、そうなんですね……」

 

「目が覚めたのね」

 

 医師の話に驚きを隠せない響希が唖然としていると莉那が病室にやって来るなり響希のもとへ近づき、響希に近づくと彼女は響希に紙袋を渡した。

 

「あの、これは……?」

 

「隊長からよ。

『天護星団』の一員として制服を着るように渡せって言われたのよ」

 

「隊長から!?

制服ってことはオレも認められて……」

 

 ふざけないで、と響希の言葉の一部を聞いた途端莉那は冷たい眼差しで響希を睨みながら彼に忠告する。

 

「私はアンタを認めない。

この間のはただのまぐれ、そんなまぐれで狂魔を倒せたアンタを私は認めないわ」

 

「えっ……あの……」

 

「……隊長からの伝言よ。

制服に着替えたら会議室に来いって。

会議室の場所を書いた紙がその袋の中に入れてあるから自分でどうにかして行って」

 

 冷たい態度で告げると莉那は病室を後にするように出ていき、莉那が出ていくと響希は茫然としていた。

 

「……オレ、嫌われてるのかな?」

 

 

 

******

 

 莉那の態度に疑問が残り、心の中で引っ掛かりのある響希は莉那に渡された制服に着替えて移動していた。

飛色たちが身に纏っていた軍服のような青い装束の制服に身を包んだ響希は莉那に渡された紙袋の中に入れられていた目的地の書かれた紙を片手に歩いているが、なかなか目的地となる会議室に迎えなかった。

 

「えっと……次はどっちなんだ?」

 

 莉那に渡された目的地への道筋が書かれた紙、一見すると事細かく場所に通ずるまでの全てが書かれている地図だが、島育ちの響希はそういった地図とは無縁だったのかなかなか苦戦している。

今自分がどの辺にいるのか、どの道を通って来たのか、地図とにらめっする響希はそれらを忘れていた。

 

「えっと……うーん……?」

 

「何してやがる」

 

 響希が地図とにらめっこしていると呆れた様子で飛色が声をかけ、声をかけられた響希は思わず姿勢を正してしまう。

 

「す、すいません!!」

 

「あ?

普通にしろ、普通に」

 

「はい……」

 

「ったく、会議室に来いって言われただけなのにどこ歩いてんだよ。

莉那のヤツが道筋書いた紙渡してただろ」

 

「すいません……いまいち分かりにくくて。

初めて歩く場所で何が何だか……」

 

「……そういやぶっ倒れて寝込まれてたせいでまともに案内すらしてなかったな。

仕方ない、ついてこい」

 

 道に迷った響希が今いる場所について詳しく知らぬことを察した飛色は彼を目的地たる会議室に案内すべく前を歩き、響希は彼の後をついていく。

 

 黙々と目的地に向けて歩く飛色の後ろをどこか緊張しながら歩く響希。その響希の緊張を飛色は背中で感じ取っているのか歩き進む中で響希に向けて話していく。

 

「莉那に何か言われたろ?

大方認めないとか許さないとか」

 

「あっ、はい。

なんかオレのはまぐれだから許さないとかそんな感じのことを言われました。

オレ、何かしましたかね?」

 

「いや、オマエは悪かねぇよ。

前の戦闘……オマエの感覚だと気を失う前のあの戦闘中にオレの指示を受けてもアイツは拒否したろ?

アイツはいつもそうだが、とにかく変にプライド高いヤツでな。これまでの作戦も自分が気に入らないとすぐにああやって口答えしやがるから扱いに困ってる」

 

「昔からなんですか?」

 

「昔からだな。

オレの部隊に所属して一年半くらい経つが、入った時から反抗的な態度だったしどこか無茶して手柄を得ようとするようなやり方が目立つ。

その一方で少し隙が多いからいつも狂魔に喰われかけてやがる。

生意気な態度だが実力は確かだしオレも変にアイツのプライドについて言うつもりもねぇけどな」

 

「そう、ですか……。

そういえば他の方は?」

 

「他の方ってのはオレの部隊のことか?それとも他の部隊か?」

 

「あっ、あの……隊長の部隊のことです」

 

「その話は後でだ。

今はまず、ここでの話を終わらせるぞ」

 

 響希の質問、飛色が隊長を務める部隊のことについて訊ねられた飛色は説明を後回しにするように言うと大きな扉の前で足を止め、飛色が足を止めると響希も止まる。

 

 足を止めた飛色はノックすることも無く扉を開け、そして扉を開けた先へと飛色は足を踏み入れ、響希も恐る恐る先に進む。

 

 飛色に続いて響希が入った扉の先、そこには広い空間が広がっており、空間の中央には大きな円卓のテーブルとそれを囲むように十三の椅子が設けられていた。

設けられた椅子のうち二つが空けられ、他の十二の席はすでに人が座っていた。

 

 黒いスーツを来た一人の男を除けば他の十一人は響希が着る制服と同じ軍服のような青い装束を着ているが、十一人は響希の制服とはそれぞれが一部異なるようなデザインが施されたものを着用している。

制服のデザインとは異なるがあるものは羽織を制服の上から、あるものはマフラーを首に巻き、そしてあるものは鉄仮面を付けたものなど、どこか個性のようなものが出されている。


 そんな彼ら彼女らがいる中に足を踏み入れた響希は緊張感に襲われてしまうが、飛色はこの空間のこの雰囲気に慣れているのか何も感じないように平然と言葉を発していく。

 

「悪いな、コイツが道に迷ってて見つけるのに苦戦した。

何か言いたいことはあるか?」

 

「……狂月隊長。

とにかく話を進めたいので席についてください」

 

「そうか、分かった。

響希、オマエが座れ」

 

「え、はい……」

 

 開口一番、どこか喧嘩腰にも捉えられるような問い方をする飛色の言葉に一人スーツを着た男は咳払いをすると飛色に座るように言うが、飛色は自分ではなく響希に座るように伝える。

飛色に座るよう伝えられた響希は返事をするも恐る恐る席につき、響希は周囲の視線が気になる中目を合わせぬように下を向いてしまう。

 

 下を向いてしまう響希、その響希を座らせた飛色に向けて鉄仮面を付けた男は彼に意見した。

 

「狂月飛色、司令は貴公に座れと言ったのだぞ。

何故貴公が座らずにそこの少年に席を譲った?」

 

「あ?それは今関係あんのか?

関係ないなら黙ってろ」

 

「言葉を弁えよ。

本来ならこのような場は設けられるはずもなかったが、貴公がそこの少年を連れてきたことについて話す必要があるから設けられたのだ。

貴公は説明すべき側、その立場を弁えて話せ」

 

「うるせぇぞ、鉄面野郎。

気に食わねぇなら実力で黙らせてみろ」

 

「貴公の我儘に対して灸を据える必要があるのなら致し方ない。

やるのなら相手になろう」

 

 飛色と鉄面の男、互いに譲れぬ意志を持って睨み合う。

睨み合う両者の間には目には見えぬ強い力のようなものがぶつかり合い、それを肌で感じ取った響希は思わず顔を上げて飛色の方を見てしまう。

特に意味はなく飛色と鉄仮面の男の睨み合いが気になるとともにこの状況が不安になって助けを求めようとしたのだろう。

 

 そんな響希が不安になる中、羽織を制服の上から羽織った長い黒髪を後ろで束ねた青年が鉄仮面の男に告げた。

 

「オマエの実力では役不足だ。

大した意見もないなら黙ってろ」

 

「横から口を挟んで何を言うかと思えば何のつもりだ、嵐月隊長。

今オレは狂月隊長に話が……」

 

「それが無駄だと言っている。

実績としてはオマエより飛色の方が上、あるものは上に立つものの意見は黙って聞いてろ」


「しかし……!!」

 

「んだよ蘭丸。

鉄面野郎との喧嘩に割って入るのか?」

 

 違う、と青年・嵐月蘭丸は飛色の言葉にハッキリと言い返すと今も不安になっている響希を見ながら飛色に伝えた。

 

「オマエはそのガキに何かしらの思惑があって連れてきたんならそれを話せ。

話が進まないなら時間の無駄だ」

 

「そうか、なら話してやる。

コイツについて、な」

 

 響希が不安と緊張感の板挟みになる中、飛色は語り始める。

先行きの分からぬこの流れ、その中に置いてけぼりとなっている響希はただ無事に終わることを祈るしかなかった……

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