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Soul The Beat  作者: hygirl
魂光始動
3/36

3話 本土への航路


 響希と飛色を乗せた船は島を出て日本列島本土に向かっていた。

本土に向かう船の中、これから向かう場所に心を躍らせる響希に今後について簡潔に話していく。

 

「これからオマエは民間人ではなく『天護星団』の一員として生活することになる。

まず本土に到着後は東京にある本部に向かう。

本部にいる司令にオマエを紹介した後で正式な加入となり、以降はオレの部隊に入ってもらう。

ここまでで質問は?」

 

「本土っていまいち分からないんですけど、すごいんですか?

島だと車って軽トラぐらいしか見たことないし、デカいビルとかあるんですよね?」

 

「……その程度のことなら自分の目で確かめろ。

オレは『天護星団』に関する質問があるかを聞いてるんだ 」

 

「えっと……よく分かんないんで向こうに着いてからでもいいですか? 」

 

「そうか。

ならその辺の話は後回しにする。

その代わり……オマエの力について話しておこうか」

 

 響希からの『天護星団』についての質問はないと知ると飛色は響希に彼が狂魔を倒した力について説明を始める。

 

「オマエが狂魔を倒したあの力、『天護星団』ではあの力を魂器と呼んでいる」

 

「魂器……」

 

「そうだ。

人の中に必ずある魂、その魂には人と同じくそれぞれが異なるものを抱く。

望み、あこがれ、理想……魂が抱くそれらが形を得て実体を持ったものが魂器であり、この魂器だけが唯一狂魔を倒せる方法だ」

 

「唯一なんですか?

本土なら軍隊もあるだろうからミサイルとか使えば……」

 

「オマエが目の当たりにして倒したあの狂魔、見た目は獣か何かしらの化け物に見えるからミサイルに限らず銃器とかで倒せるだろと思うだろうが、ヤツらはそんな簡単には倒せない。

一見すると硬そうには見えないあの体には銃弾はおろかミサイルなどの爆撃も効かない。

ナイフなどを刺そうとして刺したところで大した傷にはならない。

数々の方法で試されたが『天護星団』では魂器でしか倒せないと判断した。

狂魔と対となる魂器がな」

 

「そういえば狂魔ってどこから来るんですか?

アイツらって誰かが連れてくるんですか?」

 

 魂器の話を聞く中で出てきた狂魔、自身が偶然にも倒せたあの化け物の正体は何なのか、どこから現れたのが響希は気になったらしく飛色に質問した。

質問された飛色はまるでその質問が来るとわかっていたかのようにすぐに狂魔の話をしていく。

 

「狂魔……いつからかそう呼ばれるそれは人の心から生まれる。

怒り、憎しみ、嫉妬、劣等感、悲しみ、恐れ……心に生まれるあらゆる負の感情は餌となって狂魔を生み出してこの世界に現界する。

現界して形を得た狂魔は化け物となり、餌を求めて人を襲う」

 

「餌……肉食動物と同じで人の肉を?」

 

「いや、狂魔の餌は生まれるきっかけと同じ負の感情。

ヤツらのあの化け物としての生存本能がそうさせてるのか最初に生み出したヤツがそう仕組んだのかは定かではないが狂魔が人を襲うのは自分の成長のために必要な栄養を持った餌となる負の感情を生み出すためだ」

 

「だからじぃちゃんのことを……。

でも待ってください、人の心の中の負の感情から生まれるなら狂魔のそれって新しい狂魔を生むってことなんじゃ……?」

 

「高校での成績は悪かったようだがこう言った方向では頭が良さそうだな。

実際その通りだ。狂魔の餌を求めて人を襲うという行為は餌の供給と同時に新たな狂魔の誕生の手助けとなる。

つまり、現れた狂魔を早々に倒さなければその数は増え続け人類は危険に晒されるということだ」

 

「えぇ!?

じゃあ……」

 

「狂魔一体の出現は複数体の狂魔の出現の前兆とも言われている。

幸い、オマエの場合は出現した狂魔が他の人間に目撃されずに済んだから被害も新たな狂魔も出ることなく終わったが、本土ではその奇跡は起きないと思っておけ。

一体の出現で次から次に新手が現れる、無尽蔵に負の感情を食らって現れる狂魔を前にオレたち人間は限りある力で挑まなければならない」

 

「あの化け物一体倒すだけでオレは気を失ったんですよね?

一人で一体倒すのが精一杯なのに……」

 

「それはオマエが未熟なだけだ」

 

 狂魔の存在と狂魔が備える恐怖、それを聞いた響希はそれを迎え撃つ唯一の方法たる魂器について触れるが、勘違いをしている部分があるらしく飛色はその点について指摘した。

 

「一人の魂器で倒せるのが一体というわけではない。

オマエは初めて魂器を現界させたから加減が分からずにフルパワーで使ったから一体倒して倒れたが、『天護星団』の魂器使いは全員が訓練を受けてるから力加減が出来ている。

必要な時に力を高めて倒すことで多く倒せるようにしているわけだからオマエもその訓練を受ければ何体でも倒せるようになる」

 

「ホントですか!?」

 

「あぁ、本当だ。

というか……オマエのその特異性で一体しか倒せないってのが不思議なんだがな」

(本来魂器ってのは訓練を受けた上で現界するのに最低でも半年はかかる。

だがコイツはあの島で弦一郎に狂魔や魂器の存在を隠された生活をしていたにもかかわらずオレの言葉だけでそのきっかけに到達して現界させやがった。

負の感情を知らぬ純粋な心を持つされると聞いたからオレは確かにコイツに狂魔を殲滅する大きな力を期待していたが、訓練も無しに狂魔を倒せるだけの力を現界させた。

本土の人間にはない純粋な心がそうさせたのか、それとも……)

 

 響希が狂魔を倒したこと、そして彼が魂器を現界させたことについて少しの疑問を抱く飛色。

その飛色は船が出る前に久遠弦一郎が言っていた言葉を思い出していた。

 

『何があっても響希に怪我をさせないと約束してしてくれぬか。

あの子には何があっても傷を負わせないと約束してはしいんだ』

 

「何があっても……」

(あれは祖父という血縁上から来る孫を心配しての言葉なのか?

それとも何か裏があるのか?

何があっても傷を負わせるな、狂魔との戦いで無傷で勝つなんて不可能な話なのにそれを知るあの男は何故頑なにそこをオレに約束させた?)

 

 弦一郎の言葉が今になって疑問に思えてくる飛色。

そんな飛色のもとへ青い軍服のような装束の男が走ってきて報告をする。

船の上だというのに慌てて走ってきたのか男は息を切らしながら飛色に伝える。

 

「ほ、報告します!!

本土から救援要請です!!」

 

「救援要請?

どこの部隊だ?」

 

「今我々が向かっている港から少し離れた所にある街です!!

数は五体確認されているようですが、民間人の多くが狂魔を目撃してパニックに陥っているようです!!」

 

「本土にはオレ以外の隊長がいるはずだ。

わざわざ何でオレに……」

 

「狂月隊長以外の他の隊長たちは今本部に集まって司令との会議中です。

その会議中の本部の近くにも大量の狂魔が現れていて……」

 

「バカが、それを早く言いやがれ。

要は今自由に動けるのはオレとオマエらだけってことなんだろ」

 

「す、すいません!!

隊長から今さっき連絡があって狂月隊長にそちらを任せるように伝言を頼まれたので……」

 

「アイツ……!!

こっちはこっちで荷物抱えてんのに無茶言いやがる!!

おい、最大速で本土にはどれくらいかかる?」

 

「今出せるだけのスピードで急行していますが……少なくとも本土に到着するのは十分ほどかかると思われます!!」

 

「アイツに連絡しろ!!

こっちで対処するには十分かかるからオレの部隊の人間を最小限の人員で向かうように指示させろ!!」

 

 了解です、と報告に来た男は飛色の言葉を受けると慌てて走っていき、飛色は舌打ちすると響希に伝えた。

 

「予定変更だ。

今から十分の間にオマエに魂器使いの最低限の基礎を教える。

頭で理解しなくてもいいが、感覚的なもので覚えるなりして万が一に備えろ」

 

「はい!!」

 

「……クソが。

あの島の狂魔といい、この狂魔の出現……タイミングが良すぎる!!」

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