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クラス転移で神様に?  作者: 空見 大
幼少期編:王国
42/55

22:王国祭開催

 祭りの始まりを告げるラッパが大音量で国中に響き渡る。

 今日は王国祭初日。

 ただでさえ普段から人通りの多い大通りからは、いつにも増して行き交う人々の楽しそうな声が聞こえてくる。

 今日は王族を含めヴァスィリオ家などの王国を代表する大貴族も各地から集まり一堂に会する珍しい日なだけあって、城の中もかなりの臨戦態勢が敷かれていた。


 少し前に草原に出向いた際に既に他国が介入しようとしてきて居たので、今回限りはエルピスも祭りと言えど気を抜く気は無い。

 〈神域〉はいつもの二倍程の広さに設定しておき、剣も収納庫_(ストレージ)から出して腰に差しておく。

 久々に腰に感じるズシリとした重みはそれだけでエルピスの気を引き締め、戦闘に対する意欲を高めてくれた。


「さて行くか」


 これだけ準備もしたしエラとセラのどちらかと祭りを楽しむくらいはして良いだろうと思ったのだが、どうやら先に祭りに行ってしまったらしい。

 机の上に置かれた随分と可愛らしい文字で書かれている親からの手紙を軽く読み、それを収納庫_(ストレージ)の奥の方に入れてエルピスは部屋を出る。

 内容としては祭りを楽しむ様にという事と、必要なお金は街中にいるフィトゥス達に頼む様にとの事。

 エルピス気を遣って一応今日は一人にする様指示したので、もし一緒に回りたければ声をかけてあげれば喜ぶだろうとも書いてあった。


「おはようございますエルピス様」


 扉を開けるとすぐ脇に立っていたのはこの城で出来たエラ以外のエルピス専属のメイドが立っていた。

 どこかの貴族の娘らしいのだが、エルピスはこの国の政治に関わる気は一応ないので、彼女に関する詳しい事はあまり分からない。


「おはようございます、いつも朝からご苦労様です」


「いえいえ、朝食を取られますか? シェフもまだ城の中にいますので、頼めば軽い朝食程度なら作れると思いますが」


「祭りで何か出店を回りますので、大丈夫です。あなたもお祭りに行ってきてはどうですか?」


「そうですね……なら私もこれで失礼させていただきます」


 軽く一礼してから去っていく彼女とは反対の、王城の正門とは真反対の方向にエルピスは歩き出す。

 本来ならば家庭教師という立場は物事を教えるだけの立場であるはずなので、この日に何かあると言うことはないはずだ。

 探知自体は行うので緊急時には駆け付けられる。

 別についていく必要など一つもないのだ。

 だが万が一を考えて連れて行かれる可能性を限りなく0にする為にエルピスは裏口を使う、


「すみません、外出したいのですが外出許可証を貰えますか?」


「おはようございますエルピスさん。今日は王国祭なので外出届けを出さなくても外に出れますよ」


 外出許可証について質問したエルピスに対して、門番は身を屈めエルピスにもわかる様に優しい口調で答える。

 城の中によく居る人は基本的にアルキゴスとエルピスが訓練場などでときおり戦闘しているのを知っているので、エルピスを子供扱いしたりこうして優しく接してくれたりはしない。


 エルピスからすればそれの方が楽だし特に気にしては居なかったが、こんな対応をされれば久し振りに自分がまだ子供だったことを思い出す。

 久しぶりの対応に目を丸くしながら、エルピスはきっと訓練場には来ない人なのだろうと納得し、街に行く旨を伝える。


「それでは私はこのまま街まで行かせて貰います」


「行ってらっしゃいませ、祭に乗じていろんな人が来ますので、置き引きやスリには気をつけて下さいね」


「ご忠告感謝します。何かお土産を買ってきますね、ではこれで」


「──ちょっと待て」


 門番に対して軽く挨拶してから歩き出した瞬間。

 エルピスはおそらく結構走り回ったのだろうが、少し疲れ気味な声で呼び止められる。

 直近の状況といままでの経験がエルピスに警鐘を鳴らしていた。

 だが相手が相手なだけに振り向かずすたこらさっさと逃げるわけにもいかない。

 (いや、やっぱりこのまま逃げるか)


「おい無視するな! お前には王族とアウローラの警護が有るんだよ」


「なんのための王国騎士団と宮廷魔術師ですか! 俺くらい居なくても大丈夫でしょう? 母さん達も遊んでいるようですし」


「クリムやイロアスは名誉貴族という立場がある手前、他国の人間に手出しができないからな。だがクリムの子供であるお前なら、多少他国の人間に手を出したところで何を言われるわけでもない。先に手を出したのは向こうだと言えばそれで終わるからな」


「要は僕はいろんな面で都合が良いってわけですね。まったく……今日だけですよね? 七日間も拘束されたらさすがにキレますよ」


 七日間ある王国祭の内1日くらいであれば拘束されてもまぁ文句はない。

 初日と最後が最も襲われる可能性が高いのだ、警戒を強めておいて損はないだろう。

 ただ善良な市民の一人としてこの祭りを楽しむ権利は主張したいところだし、その為に魔法まで開発したのである。


「今日ともしかしたらだが最終日にちょっとな。言っても昼間だけだしその分飯奢ってやるからまぁ付き合えよ」


 肩を組まれてお願いされれば、相手がアルキゴスな上に護衛対象も知り合いなので断る事ができない。

 これを分かっていてやっているのだからこの騎士団長良い性格をしている。


「わかりましたよ。それで警護対象は何人なんですか?」


「王族全員だ」


「全員ですか……多いですね。この人混みで確実に守れるとなると僕は大体三人程度ですよ? それ以上も以下も相手によりますけど」


 先日マギアに警護できる人数を問われた時は10人やそこらと答えたエルピスだが、思っていたよりも数倍人の多いこの状況下で誰も怪我をしないように助けられるのはアルキゴスに言った通り三人が限界だ。

 それもかなり無理をしてではあるが。


「もちろん俺と近衛兵が一人につき一人で付いてる。お前の役割は俺らの取りこぼしを拾うのと逃げた敵の殲滅だ」


「殲滅ですか……穏やかじゃないですね?」


「国の頭を取ろうとするんだ、それくらいされても文句は言えないだろう? 一族郎党全員死刑でもおかしくないんだぞ」


「まぁそれは確かにそうですね。ただ僕は半殺しまでしかしませんからね。後は任せます」


 普段ならば捕縛しろと命令してくるアルキゴスが殲滅を命じてきたことに少し違和感を覚えるが、とはいえ相手が殺しにきているのだからと考えればそれも仕方のないことだろう。

 一人二人は情報を引き出すために重症くらいで押さえておいた方がいいとは思うが。


 今回は近衛兵が絡んでいるらしいので、エルピス自身もかなり楽はできるだろうと算段をつける。

 近衛兵とは王国内において優れた成績を収め、さらに国王自ら信頼におけると感じた人物のみが所属できる場所であり、エルピスの目の前にいるアルキゴスも昔は所属していた団体だ。


 王国内において指示する事ができるのは王族のみで、その力量は全員が一般的な国の兵団と引けを取らない程だ。

 そんな人物達が守りに着くのであれば、エルピスは敵の殲滅だけに意識を傾けていれば良いだろう。


「今日お前にしてもらう事は、まず王国祭の目玉である魔導大会にてスピーチをする際に王様と王妃を近くで護衛。次は王子三人と王女三人だが、こちらは魔導大会に出ている間護衛をし続けてくれ。アウローラも一緒に出るからちゃんと意識を向けておく事、これは命令じゃなくて叔父としてのお願いだ。一先ずはこれくらいか」


「公私混同して良いんですか? 叔父さん。魔導大会までの道中は誰を警護します?」


「公私混同したお願いでもお前なら完璧にこなせるだろ?  移動時のお前の警護担当は第三王女と第三王子だ。今から一時間後に王国祭開始の合図と魔導大会開始のスピーチがあるから、大体四十分後には城を出る。その前に軽くミーティングをするからお前も参加しろ。時間は一刻も無い。急ぐぞ」


「ちょっと服引っ張らないでくださいよ、着いて行きますから」


 説明だけされて、エルピスは襟首を掴まれてそのままずるずると引っ張られる。

 これじゃあまるで言う事を聞かない子供みたいじゃないかと思いながら引きずられていると、中央広場に既に近衛兵らしき人物達が待ち構えていた。


 何処かで見たことのある顔だと思いながら一人づつ顔を見ていき、最後の一人見たところでようやく思い出す。

 この人達は何度か訓練場でエルピスが素振りをしている時にすれ違ったことがあるのだ。

 普通の兵士達ならばエルピスの記憶には残らないが、上手く隠してはいるものの強者の雰囲気がどこか漂っていたので記憶に残っている。


「その子が最近噂の王族の皆さんの家庭教師? 強いって話だけど、そこまで強そうには見え無いわね」


「見た目で判断するのは悪い癖だぞフィリア。まぁ言いたい事は分かるが」


「アルさん。近衛兵は王族を守る為の隊であって、子守をする為の隊じゃ無いんだけど」


 呼ばれて来たというのに来てみれば散々な物言いだ。

 一瞬これを理由にして帰ってやろうとも思ったが、ここまでコケにされてはさすがに頭にくる。

 確かに外見だけ見ればエルピスはまだ子供だし、弱そうに見られるのは仕方ない。


 訓練場での戦闘も基本的には技能(スキル)を使用しないようにしていたし、魔法なども使っていないのでエルピスの強い部分がほとんど見せられたなかったのは事実だ。

 せめて実力を見せる前に先に言い返そうとしたエルピスに、更に畳み掛ける様にニ人から不満の声が上がった。


「俺も同意見だ。足を引っ張られて王族の方々が殺されてしまったら目も当てられん」


「……アルが信じたのならハズレでは無いと思うが、なにぶん若過ぎるな」


 そういってくるのは、こちらでは珍しい黒色の髪をした男の人と少し年配の男だ。

 転生者の雰囲気はないので、おそらくは先祖返りだろう。

 様々な修羅場を潜り、命のやり取りをしてきたが故の冷静な判断なのだろうが、もう少ししっかりと観察した上で物事を話してほしいものだ。


 確かに強いのだろう、王国を守る剣としての誇りがあるのだろう。

 いきなり知らない小さな子供が誇りある自らの仕事に参入しようとしてくるのだ、怒る気持ちも理解できるしそれは正当なものだと思う。

 だが、だからといって見下されてはいそうですかと言えるほど、エルピスは人間が出来ていないのだ。


「まぁ見た目はガキだし性格もうざいが、戦力として数えるなら俺よりも有能だ。なんなら誰か戦って見たらどうだ? 軽く模擬戦でもすれば文句の一つも出ないだろうさ」


「アルさん何いってるんですか、模擬戦なんて恐れ多いですよ。間違えて怪我させでもしちゃったら俺誰に謝れば良いんですか」


 明らかな挑発。

 場の空気が一気に凍り、エルピスに向けられる視線に敵意が含まれる。


「随分な物言いだね少年? まぁ他の人達だと殺しちゃうかもだし、俺がやらせて貰いましょうかね」


 そういって腰から抜いた剣を片手にこちらに歩み寄ってくるのは、他の近衛兵とは違い少しチャラチャラとした感じの男だ。

 先にエルピスに対して不満を述べた五人と違い、エルピスに対して何も言わず黙っていたから良い人なのかと思っていたのだが、どうやら戦いたかっただけらしい。


 誰かしらと戦う可能性は考えていたが、さすがに本物の剣を持ち出すとは思っていなかったが為にエルピスは少し焦りを覚える。

 再生系の技能(スキル)なんて一つも持っていないので、刀傷などつけられれば下手すれば即死だ。

 相手がどれくらい強いのか分からない以上、本気でやるしかない。

 意識を戦闘用に切り替えて技能(スキル)も使用しながら、エルピスは物理的に距離を取る。


「プロムスが戦うのか、ルールはいつも通り先に相手に参ったと言わせた方が勝ちでいいな? 相手を殺したり行動不能にした場合、色々と面倒な事になるのは覚悟しておいた方が良いぞ。では試合開始!」


 アルキゴスが手を振り下ろすのとほぼ同時に、エルピスは構えもとらず無造作に手をあげる。

 暗器を投げた訳でも魔法の詠唱に必要な動作ーーと言うわけでもない。

 誰が見ても完全な降参の合図。

 黒い髪から覗く目は完全に怯えている少年のそれであり、プロムスは呆気ないと思いながら身体から力を抜く。


 確かにアルキゴスが力を保証するだけはあって、魔法的な側面では目の前の少年はかなりの域に達しているのだろう。

 それは肌を刺すように少年から漏れ出る魔力が示してくれているし、いままでの戦闘経験がその底知れなさを教えてくれる。

 近衛兵の全員が一目を置き、過去には近衛兵の隊長に候補として上がった程の実力を持つアルキゴスが推薦するだけのことはある。


 だがいくら魔法が得意とはいえ、近接戦で更に本物の武器を使用して戦うことに恐怖を感じたとしてもおかしくはない。

 無理に怪我を負わせるような事もしたくは無いので、プロムスが戦意を緩めゆっくりと近づいた瞬間ーーエルピスはその怯えていた目を、獰猛な肉食獣のそれと同じように細めてプロムスに襲いかかる。


「ーー演技か!? くそっ!!」


 まるでその場で大規模な爆発が起きたのでは無いかと思えるほどの速さで突進してきたエルピスの拳は、ギリギリの所でプロムスの出した剣で止められ無力化されていた。

 腹に当たるすんでのところで止まっているエルピスの拳を見て、プロムスは自分が冷や汗をかいている事を自覚する。


 もちろん不意打ちに焦りを見せたという事もあるが、それ以上にプロムスに恐怖を与えているのは剣の刃にあれだけの勢いで拳を叩き込んできたのに傷一つ付いていないエルピスの拳だ。

 刃から伝わる感触からしておそらくは薄い障壁の様な物を張っているのだろうが、問題はその障壁の下にある肌の硬さ。

 破龍と英雄の子である半人半龍(ドラゴニュート)が王国内に居るとは噂には聞いていたが、まさか幼少でこれ程の硬度を持つとは思っておらず意識を切り替える。


 龍人の身体は龍の巨大な体躯を人の身に収めている事で、人間とは比べ物にならない力を持っているが、その特性を半分も引き継いでいない半人半龍(ドラゴニュート)の鱗がここまで堅いとは予想だにしていなかった。

 エルピスの拳と咄嗟に防いだ剣がせめぎ合いをする中で、エルピスが真剣な面持ちでプロムスに声をかける。


「先に言っておきますプロムスさん。やる気なさげに参加はしていますが、こうなった以上今回に限って僕は負けられない理由があるので思いっきり倒します。恥をかかせてしまいますが勘弁してください」


「言うじゃないか小僧。かかってこいよ近衛兵の強さ見せてやる」


「ーーありがとうござます」


 裏表もなくただ純粋に感謝の言葉を伝えたエルピスは、一旦距離を取って呼吸を整えなおす。

 いつの間にかエルピスは自然と足を一歩前に、プロムスは一歩後ろへと下がっていた。

 一度目の衝突でお互いがお互いの大体の力量を把握したので、次からはお互いに完全な無効化が可能になる一撃を的確に放つはず。

 それに対する緊張で両者とも動けず、自然と口から言葉が漏れる。


「それにしても試合ならせめて木刀にしてくれませんかね、そんなので斬られたら死んじゃいますよ」


「試合も実戦も、対して変わらないだろ?」


「戦闘狂の人らが考えてる事は分からんのですよ」


 エルピスはいつもより障壁に多くの魔力を裂き、一歩一歩踏みしめる様にしてプロムスの元へと向かって歩いていく。

 その足取りは迷いがなく、まるで街中を歩く様な自然さだ。

 踏みしめるたびに互いの領域は近づいていき、ついにエルピスはなんの準備もしないままにプロムスの間合いに踏み込む。


「──硬ッ!!!」


 振った剣が折れなかったのは当人の弛まぬ努力と近衛兵に支給された剣が良い物だから。

 だがいくら死に直結するような怪我を避けるためとはいえプロムスが当てたのは上腕であり、普通ならエルピスの腕くらいは飛んでいても良いはず。

 だが実際はエルピスの腕どころか服すら切れずに障壁の上で剣は止まっている。

 予想外の状況で生まれたほんの一瞬の隙、それだけあればエルピスがトドメを指すのには十分な時間だった。


「母さん直伝護衛術! 一本背負い!!」


 掴まれた箇所の腕を引き剥がす為反射的に手でどかそうとするプロムスだったが、ほんの一瞬触れただけで分かる自力の違い。

 重機と力比べする人間がいない様に、そもそもどうやったって抗えない力。

 それを即座に判断した彼が出来るのは、死ぬ気で受け身を取る事だけだ。


「ーーん"ぁ!?」


「これで止めです!」


「ぐふぇ!?」


 人体の構造など全て無視して単純な腕力のみでプロムスを投げたエルピスは、躊躇なく地面に打ち付けられた衝撃で身体が一瞬膠着したプロムスの腹筋を、本気で走っただけで何かが爆発したと感じてしまうほどの脚力で踏み抜く。

 それによってプロムスの口から空気が漏れ出るような音が聞こえ、アルが試合終了を告げる。

 内臓が飛び出なかったのは彼の実力の成せる技、一般人なら投げられた時点で爆散してチリだ。


「試合はここまでだ、誰か手当をしてやれ」


「私が回復魔法をかけておくわ。それにしても良いのもらっちゃったわね、大丈夫?」


「……し…死ぬ………」


「──ビックリしました。喋れるんですね」


 殺す気はなかったとはいえ、それでもかなりの威力で踏み抜いた自覚のあるエルピスとしては、プロムスが気を失っていないどころか喋れる事が意外だった。

 イロアス()が相手だったとしても決め手になるほどの一撃だ。

 それを耐える忍耐力はさすがの一言に尽きる。


「誰か他にも戦いたい奴いるか? ……居ない様ならこのまま進めるぞ」


「俺は問題ない。プロムスは最初こそ油断してたとはいえ本気でやっても傷一つ付けれなかったんだ。文句なしの逸材だよ、先程の非礼を詫びよう」


「俺も問題なしです」


「じゃあ進めるぞ」


 ーー戦闘が終わってからは特に誰もエルピスを下に見るような事はなく、対等な関係を築くことができた。

 実力至上主義の彼等だからこそ、こんなにも早く認めて貰えたのだろう。

 もしこれが軍の人間だったら更に上の役職の人が大勢出てきそうなものだが。

 一通り全員からの謝罪もされたし、エルピスとしてはこれ以上言うこともない。

 そんなエルピスの思考を他所にアルキゴスは話を進める。


「では今回の作戦だが、エルピスには──」


 アルキゴスの口から語られた護衛計画はこうだ。

 まずエルピスが第三王子(アデル)第三王女(ペディ)を護衛。

 先ほどエルピスと戦ったプロムスとその回復役に回ったフィリアが共に第二王女(ミリィ)を。

 黒髪が特徴のルードスが一人で第二王子(ルーク)の護衛をし、アネーロという弓使いの女性が第一王子(アルキゴス)に。

 スペルビアが第一王女(エリーゼ)の担当だ。

 あとは近衛兵の隊長であるオペラシオンが王妃の護衛を務め、アルキゴスが国王を守護する。


 着用している装備も普段であれば着用が禁じられている近衛兵の正装で、冒険者程度では手に入れる事ができない逸品ばかりだ。

 流石に要人警護なだけあって気合いの入れようは尋常じゃない。

 

 問題ごとが起きなければ良いが。

 そう思いながらエルピスはゆったりとした足取りで、正門に待つ王族達の元へと足を進めるのだった。

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