【6】
「これで、残るは巻きネジだけね。」
チェイミーは、屋根裏部屋を見回して、振り子時計の向かいの、壁際の小窓の下に置いてある、書き物机から、調べてみる事にしました。
書き物机は、幼い子供用らしく、チェイミーの膝くらいの高さしかありませんでした。
埃が積もった机の上に触らないようにしながら、チェイミーは二つ並んだ引き出しのうち、左側を開けてみました。
中には、赤、青、緑のビー玉が一つずつと、絵柄と色の違う錆びた外国の硬貨が四枚、箱に『息子へ、パパより』と書かれた色鉛筆のセット、ちびた鉛筆が三本、錫の兵隊が四人に、コーラの王冠が三つ、そして、一冊の小ぶりなノートが入っていました。
ノートを開いてみると、紙切れが一枚、ひらひらと床に落ちました。
拾い上げると、それはモノクロの写真で、写っていたのは、王冠をかぶって長いガウンをまとった大きな着ぐるみの猫と、その横に立つ、チェイミーよりも年下らしい、短いマントをはおってやっぱり冠をかぶった、やんちゃそうな男の子でした。
たぶん、どこかの遊園地のマスコットと写した写真なのでしょう。つんと澄ました猫の顔つきが、どうも本物の猫のように生き生きしているのが気になりましたが、こんなに大きな猫なんて、世界中探しても、いないでしょうからね。たぶん、よくできた着ぐるみに違いありません。
ノートの最初のページには、『王子が身につけるべき10のさほう』と題して、子供らしい字であれこれとその詳細が書いてありました。
チェイミーはきちんと読み込もうと、子供用の小さな椅子に腰掛けました。
すると、腐っていたか何かで、木がもろくなっていたのでしょう、椅子の背もたれが外れて、チェイミーは踏ん張る間もなく仰向けに床にひっくり返ってしまいました。
頭を打ちましたが、椅子が低かったので、幸い大して痛くはありませんでした。でも、大きな音がしたので、すぐに階下から、「チェイミー!」と呼ぶ伯母さんの甲高い声が聞こえて来ました。
チェイミーは慌ててノートを机の引き出しに戻すと、オルゴールを持って、二階へ続く梯子段を、胸をドキドキさせながら下りて行きました。
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