【3】
振り子時計の中に、鍵や巻きネジが落ちていないか、チェイミーはもう一度、硝子扉を開けて、振り子の奥をのぞき込んでみました。すると、裏板の隅に、二インチくらいの丸い穴が開いていて、穴の上には、【ウォルコット】と、白いインクでおしゃれに書かれた、花柄の浮彫がほどこされた青い小さな表札が打ち付けてありました。
床に這いつくばって、穴をのぞき込んだチェイミーは、そこにアンティーク調のテーブルや椅子や戸棚を並べた、ミニチュアサイズの明るい部屋があるのを見つけて、「わぁ!」と思わず大きな声を上げました。
向こうを向いて、椅子に掛けていた、部屋の住民が、その声にびっくりしてこちらを振り向きました。
それは、赤と青のチェック柄のズボンとチョッキを着て、青い蝶ネクタイを締めた、ぬいぐるみのように可愛らしい、小さなハツカネズミでした。
ハツカネズミとチェイミーは、しばらく黙って見つめ合っていましたが、気まずくなったらしいハツカネズミの方から、おずおずと口を開きました。
「あの、覗かないでくれるかな。」
・「鍵を下さい」と言ってみる 【8】へ
・「なぜねずみが服を着ているの?」と聞いてみる 【5】へ