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【27】


 小さな森のわきの斜面を下ると、勾配こうばいはだんだん急になって来ましたが、途中で、横に伸びるなだらかな坂の小道が作ってあったので、二人は、その坂をしばらく歩いて、黄色い花の咲いた丈の低い草が地面にまばらに茂った、少し平らな場所まで来ました。すると、潮の香りを含んだ風がふもとから吹きはじめ、やがて丘陵の陰から、南海色エメラルドグリーンの海と、白砂の砂浜が囲んだ小さな入り江が見えて来ました。

「わあっ。」と歓声を上げて、その絵のように美しい景色にうっとり見惚れていたチェイミーが、「この国には、砂漠があるの?」と突然ロジャーにたずねました。

「ないよ。どうして?」

「だって、フェネックの好きな場所と言えば、砂漠でしょう?いつかテレビで見たのを、思い出したのよ。」

「この国には砂漠はないけど、海の向うには、この海のようにだだっ広い砂漠があるらしいよ。ベルナルドの祖先は、そこから舟でこの国に連れて来られたんだって。」

「じゃあ、ベルナルドは海を渡って故郷に帰っちゃったの?」

「そんな事はないと思うよ。彼にはこの国でやらないといけない事があるからね。」

「じゃあ、どこに行ったのかしら。」

 チェイミーは、砂漠とよく似た景色の場所がないか、考えてみて、すぐに一つ思いつきました。

「ねえ。この辺りに砂丘さきゅうってある?」

 ロジャーはにやりと笑って、「この先に、砂漠みたいにだだっ広い砂丘があるよ。」と言いました。

「ベルナルドはきっとそこね。」

 チェイミーは自分の力でジョコ爺さんの謎かけが解けたのが嬉しくて、入り江の方へ勢いよく駆け出しました。

 その時、

「そっちは危ない!」

と、どこからか大きな声がしたので、チェイミーははっとして立ち止まりました。前をよく見ると、同じような黄色い花の咲いた草地が続いていて、気が付きませんでしたが、すぐ先は、入り江に落ち込む深い崖になっていました。

 誰が助けてくれたのかと、声がした辺りを振り返ると、いつの間にか見渡せるようになった丘の向こうの谷間には、入り江からせり上がる山のように高い砂丘がすっぽりと収まっていて、その頂上では(遠くてごく小さくしか見えませんでしたが)、耳のとがった生き物が、どうやら穴から顔だけ出して、こちらの様子をじっとうかがっているのでした。

 ロジャーの案内で、チェイミーは再び丘の小道をななめに下って、砂丘に入ると、熱く焼けた崩れやすい斜面を、さっきの生き物がいたあたり目指して、せっせと登って行きました。


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