【15】
ロジャーが、鼻をひくつかせながら、「他に何か聞きたいことがあるかい?」とたずねてくれたので、チェイミーは「ええ。たくさんあり過ぎるくらいよ。」と笑ってから、「あなたは、いつもここで、私のように誰かがオルゴールをのぞき込むのを、待っているの?」と聞きました。
「そうだよ。ほら、あそこに詰所があるだろう。」
屋根の片隅に立っている、トタンを張り合わせただけの掘立小屋を、ロジャーは指さしました。
「誰かがオルゴールのふたを開けようとすると、詰所のベルが鳴るようになっているんだ。ベルが鳴ったら、天窓を開けて、こっちに来たい人を出迎えるのが、僕らに任された仕事ってわけ。」
「僕らって?他にも天窓を開ける担当者がいるの?」
「そりゃあ、四六時中、僕だけで見張っているわけにはいかないもの。ベルナルドと交代で番をしているんだ。」
「ベルナルドって人間?」
「オルゴールの国に人間はいないよ。ベルナルドはフェネックさ。夜勤明けだから今は自分家で寝てるはずだ。」
チェイミーは、フェネックがたしか、耳と目の大きな可愛いらしい生き物だった事を思い出して、会ってみたい気がしました。それにしても、この世界には、人間のようにしゃべれる、色んな種類の動物がいるようです。
そこで、ハツカネズミのウォルコットさんの事を思い出したチェイミーは、なぜ彼だけオルゴールの世界の外にいるのか、疑問に思いました。でもすぐに、
「ああ!ウォルコットさんは、向こうの世界に駐在する案内役というわけね。」と気が付きました。
「そういう事。君が向うに帰る時には、またウォルコットさんの世話になるんだよ。」
「ジョン・グリーンウェイも、子供の頃、自分の世界とこのオルゴールの国を行き来して遊んでいたのかしら。」
「ああ。そうだよ。でもジョン王子が最後にここを訪れたのは、もうずいぶん昔の事だから、僕が直接彼を見たことはないけどね。」
チェイミーは目を丸くしました。
「ジョン王子?」
「うん。ジョンはオルゴールの国の王子だったんだ。でも、もう帰って来ないようだから、ムッシ王は去年の年始の談話で、『王子の座を空気、じゃない空位にする。』って言ってたよ。」
「ふうん。」
どうやら、この国は、そのムッシ王という王様が治めているようです。
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