【13】
「さあ、お城の中を案内してあげよう。ちなみにここは、三十三番の歯車の塔だよ。」
ロジャーは、チェイミーを先導して、屋根の縁にかけてある長い梯子まで連れて行きました。
そこからは、綺麗に整えられた色とりどりの花園や、噴水のある広い中庭、それを囲むように立ったお城の建物、そして、屋上から延びるたくさんの高い塔や、歯車の形をした塔の屋根が一望に見渡せました。
ロジャーが梯子を下りはじめたので、チェイミーは、ずっと下の階のバルコニーまで続いているその木の足場を、一段一段、びくびく踏みしめながら下りて行きました。
長い事かけて、ようやくバルコニーが近づいてきて、安心しかけたそのとたん、威勢の良いラッパが近くでいっせいに鳴り響いたので、チェイミーは心臓が飛び出るほど驚いて「きゃっ!」と縮み上がりました。
バルコニーの入り口のガラス張りの扉が開かれて、屋内に整列した、肩章のついた制服の胸を張ったラッパ手のワラビーたちが、高らかにファンファーレを吹き、チェイミーを歓迎したのでした。
でも、曲が晴れやかに締めくくられたところで、一匹の小柄なワラビーが、すき間風のような間が抜けた音を出してしまったので、他のワラビーたちは、「スタンリー!」と言って、その一匹を睨みつけました。
スタンリーはすまなさそうに首をすくめました。
「お前のせいで歓迎ムードが台無しだぞ。」
「王様に言いつけてやるからな。」
「どじめ。」
口々に他のワラビーたちから非難されて、スタンリーは「だって。」と口を尖らせました。
「何がだってだよ。」
「お客様が呆れた顔で振り向いたから。」
ワラビーたちはいっせいにチェイミーの方を見ました。
チェイミーはまだ梯子にしがみついていましたが、照れくさそうにバルコニーに下りました。
そして、「ええ。私も悪かったのよ。真面目な演奏の最中に、へっぴり腰で振り向かれたら、私だって吹き出してしまうと思うから。」と言いました。
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・ロジャーにネコノメランラン城を案内してもらう 【7】へ




