第4話 葉っぱ一枚あればいい
「ふぇ?」
また情けない声が出てしまったがそれどころではないだろう。
今、声が聞こえたよな?
部屋には誰もいないから…通路か?
ダンジョン最下層?に人がいるのか?
もしかして階層が深くないのか?
よしんば深くないとしてその人は助けてくれるだろうか?
今の俺の状態は…うん、変態だな‼︎全裸なんだもんな‼︎
どんなに良い人でも引いちゃうって‼︎
一歩下がって二歩下がっちゃうって‼︎
歩み寄ってはくれないだろなぁ…いや、待てよ。
引くという事はまともな感性があるって事だ。ならば情に訴えればなんとかなんないだろうか?…ならないかもしれないが、ここで悩んでいても進展しないならば恥を忍んでいくべきだろう‼︎
葉っぱぐらいあれば隠せたのになんで何もないんだよ‼︎
悪態つきつつも出入口に向かう。
出入口から顔を出し左右を見回すが誰もいない。
不思議に思いつつ一歩、通路地踏み出した瞬間に全身に悪寒が走り汗が噴き出す。
今までの人生で培ってきた気配察知。
それは五感を、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚を総動員して行ってきた。
その感覚が、経験が、記憶が、即時撤退を告げる。
考えるより早く身体が反応し部屋中、出入口の壁に身を寄せる。
気配を殺し、息を潜める。
心臓だけが張り裂けんばかりに脈動する。
数十秒、思考が戻るまでに有した時間。
まずいと内心悪態を吐く。
一歩遅れた。なんの情報も無いままに相手に先手を打たれるなど愚か。
あせりをおぼえつつも静かに地面に耳を当てる。
音は…聴こえる。
地面と…硬い…靴底か?金属も…だな。
数は、多すぎて分からないが、さっきの感覚からすれば悪意あるものだ。
考えてみれば当たり前か?
ステータス表記が正しければここはダンジョン最下層…そんな場所で騒いでたら何が来てもおかしくないだろ‼︎
かなり動揺してたって事なんだかけど…どうする?隠れられる場所なんて…湧水の中ぐらいしかないか。
足音を消して湧水の淵まで移動する。
かなり冷たいな。あまり長くは入ってられない。
意を決して水の中へ入っていく。
腰より少し上ぐらいまでの水深。
若返って身長が縮んだから…1mないだろう。
身をかがめて鼻から上だけを水面から出し待機する。
耳を澄まし、瞼を閉じる。聴覚に全神経を集中させる。
まだ、少し遠いいが聴こえる。
何かを引きずるような音と微かな呻き声。
結構な速さで近づいてくるな‼︎
かなりマズイ‼︎逃げ場も無し、抗う力もない。
考えろ‼︎何かないか?
スキルなら使えるか?魔術の理は?
駄目か?なんの検証もしていないから駄目だ。無謀すぎる。
次は…隠密か?それならまだいけそうだ。要は学校の教室にいた時みたいにすればいいんだよな?
それとも何か発動条件がある?
分からないが、ラノベなんかでは意識するだけで使えてたりするし…えぇいままよ‼︎
隠密を意識し発動‼︎
すると自分でもわかるほどに存在が希薄になっていく。
うおっ‼︎凄いなこれは‼︎
今までの今までのが児戯に思えてくるぐらい凄い‼︎
これなら誤魔化しきれるか?
後は…ここにくる奴らに鑑定するぐらいしかないか。
部が悪いのはどんな時でも同じだなぁ。
何は無くともやるしかないか…
耳を澄ます。
もうすぐさまで迫ってきている。覚悟を決め鼻腔から酸素を取り込み脳に血液を送る。
目元ギリギリまで沈み、薄く開かれた瞳で動く影を捉え鑑定を発動する。
彼我の距離は10数m、できるかどうかは賭けだったが…ひとまず軍配は将吾に上がる。その瞳にうったのは…
リビングデッド
種族 アンデット(人種)
Lv.39
生命力 0
魔力 1023
筋力 172+28
耐久 78+15
俊敏 32
知力 13
抵抗 2
運 0
スキル
魔力吸収(経口摂取)
消費魔力減少Lv.4
疾走Lv.1
だった…あれっ?団体で来てるんだけどヤバくない?
どうしよう…