第22話 考察とスキルの運用法
緊急事態だ!
バフォメット達が分隊規模でしか行動しなくなってしまった…対応が早過ぎやしないか?バフォメットを借り始めて一晩しか経っていないのに…
このままほっといても脱出に関しては問題ないんだけど…俺も男だ。気になるでしょ?5階層に何かあるらしいからね。
後はこのダンジョンの外がここより安全だなんて確証なんか無い!ならば出来るだけ強くなって備えておかないとね‼︎どこの世界でも生きるって大変だよ…
バフォメット対策はあいも変わらず接近戦しか対策はない。
相手が集団で固まってるなら纏めて爆撃したい所ではあるが、此処は閉ざされた空間だ。そんな場所で大規模な攻撃魔術なんて使えない…それに対魔生物に魔法や魔術なんてナンセンスだしね。
ならば近接スキルを取得したいのだが…芳しくない。
才能の問題なのか訓練方法なのかわからないけど、剣術やら格闘術なんかの定番スキル取得は難航している。
であるなら持っているスキルを駆使するしかない。
このステータスとか言う機能自体が俺の元の世界に無かったシステムだ。
これはもう少し掘り下げて検証しておいたほうがいい。
知っているのと知らないのとでは圧倒的な隔たりがあると俺は思う。
この検証が探索の行き詰まったこの状況に打開策をもたらしてくれるかもしれないしね!
ステータスの数値の検証だ。
バイゴブリンの分隊を狩っていた時、留めを指す前に鑑定で生命力を確認してみた。
急所を攻撃して数値が0になれば皆死んでいた。
何を当り前な事をと思うかもしれないが大切な情報だ。
次に魔物の急所を避けて数値を0にしてみた。
この場合は個体差が顕著に現れた。
0になると同時に絶命する者や数分ほど動く事の出来る者。中には反撃してくる者までいた!
これによって仮説が確信に変わった。
ステータスに表示された数値はレベルが上がることによって得たボーナスポイントのようなものであって、全てを表示している訳ではない。
産まれたての赤ん坊がステータスが高いからと言ってすぐ首が座ったりするか?しないだろう。身体の成長と共に動かす事が出来るようになり、ステータスの恩恵を得られる。
故にステータスは補正値であって絶対値ではない。
俺の元の筋力が10とするとこれにステータスの筋力値が+されると言うことだ。
そしてスキルだがこれも個人の技術補正である事は間違いないと思う。
元の世界では、気がついているが気にしない、無意識に視界に入れない。
そう言った感じだった隠密。
だが、スキルを使うと意識していても認識に齟齬が出る、視界の端にいても気がつかないと言った感じだ。
元ある技術を更に昇華させる感じかな?
それだと補正の範囲を超えてしまうが…そんな感じだ。
個人の元の技術がかなり大事になってくるし、使い方の工夫が幅や可能性を広げる。組み合わせによっては全く別のスキルに誤認させる事だって出来るかもしれない。
まだ3階層にしか足を踏み入れてないのに…こんなに苦労するのか…まだ先は長いなぁ。
今、試験的に行なっているのは歩法と隠密の組み合わせだ。
この歩法というスキル、ただ歩くのが上手くなるだけではない。
元から注目を集めないために静かに動く事を意識していたが、このスキルを使うと全く音を立てずに歩くことが出来る。
更に急停止しても体勢を崩すことが無いし、逆に立て直す事も容易に出来る。
隠密で認識を阻害し歩法で緩急をつけると面白いようにバイゴブリンが俺を見失う。
多分だがバイゴブリンには俺がブレて見えているんだと思う。頻繁に通り過ぎた後を攻撃したり魔法を放って来たりしているからね。
防御面では気配察知が大活躍だ‼︎
この気配察知は五感で相手を捉えている。
距離が遠ければなんとなくいるな?程度だが、距離が近ければより正確に相手の動きなどを捉えやすくなる。
例えば、バイゴブリンの攻撃などは視線や関節の動きなどでタイミングや攻撃してくる場所まで把握できるし、背後から迫って来ても、空気の振動や足音などを触覚や聴覚で捉える事もできる。
これに歩法を加えればまず俊敏で劣る相手に遅れはとらない。
何が言いたいかというと、歩法万能すぎじゃない?という事…違う。スキルは創意工夫で化けるという事だ‼︎
二階層を抜けて3階層へ…数日ぶりに足を踏み入れる。
バフォメットを探し奥へと進む。
最初に察知したバフォメットはフォーマンセル、次に察知したのはスリーマンセル。いくつかの隊を索敵しつつ観察を続ける。
(どうやら組織的に動いてはいるが持続性はあまり無さそうだ…これなら不規則に日にちを開けて襲撃してれば崩せそうだな。何事も忍耐が大事ってことかな?疑心暗鬼になって貰って隙を作り、罠を仕掛けて変異種を奇襲するのがいいか…実行するには暫くはレベル上げと揺動作戦していかないとな。ついでにバフォメットの指揮官の信用性も下がってくれたら両得だよね!)
考えをまとめ、スリーマンセルの隊の後を追う。
奇襲に適した場所に差し掛かり、魔術陣を起動して棒手裏剣を放つ!
20m、魔力察知の範囲に入った瞬間に一体のバフォメットが後ろの二体を庇うように立ちはだかり、棒手裏剣の盾となり絶命する!
(うおっと!…成る程、少数にしたのは奇襲させる為!そして一体のバフォメットを犠牲にして後の先を取るか…思い切った策でくるなぁ…これは思わぬ好機かもな…)
詠唱を終えて魔法を放つバフォメットに向かってそのまま突っ込んでいく。
将吾に向かって放たれたのは火球!
二体のバフォメットから放たれたのは数十発の火球は狙い違わず将吾に向かい、着弾と同時に爆発する‼︎
もうもうと上がる土埃を睨み、更に魔法の詠唱をはじめようとするが…叶わない。詠唱よりも速く、土埃から音速で飛翔して来た棒手裏剣によってえは遮られる!
警戒していたのが幸いしてか、致命傷は避けて被弾していたが…突然の背後からの刺突によって二体のバフォメットは魔石を砕かれる!
二体の死亡を確認して慎重に三体目のバフォメットに接近する。
三体目の死亡を確認して魔石の回収を見済ませる。
(歩法と隠密での認識阻害は優秀だな‼︎前進して見えるのは残像だけで、本体は既に後退してる…我ながらいやらしい手だなぁ…
今回は此方の策に対抗して来たな。
でも、犠牲を出しても仕留められないとしたら…)
今回の戦果にニヤリと笑う。
(この策を実行した指揮官は信用は失うだろうし…そうなれば組織として機能しなくなる…個人が勝手に動けば此方の思う壺だ!やっぱり俺にはこういうやり方が向いてるな…少し楽しくなってきたし…この世界に来て好戦的になってるのか、元からなのか…悩んだところで仕方ないし、こうしないと生き残れないからね)
さらなる混乱をもたらすために気配察知でバフォメットを探し続けた。




