第2話 その手は大切な物を守るためにある
泣いた。
激しく泣いた。
なんだっ‼︎この状況っ‼︎
全裸で放置して何がしたいんだよ!男を辱しめて誰得だよ‼︎需要ないだろっ‼︎
ワナワナと震える拳をゆっくりと開く。
落ち着け。状況は最悪だが、水はある。
ならば3日はいける。
その間になんとか打開策を考えなければ死ぬ。
死にたくなければ考えろ‼︎
記憶がかなり曖昧だが思い出せ。
たしか…仕事は休みだったはず…だ。
久しぶりの休日でラノベや漫画を読んでダラけてたはずだが…その後の記憶がない。
と言うことは、その間に拉致、監禁されたと。
しかし、俺を拉致して何がしたいんだ?
俺は孤児だ。貯金だって微々たるものしかない。攫ったところでなんになる?
デメリットしかないだろ。
あっ、裏で臓器を売買するってのも考えられるか?
いくら孤児だからと言えども社会から孤立してない人間に手は出さないだろ。
外出した記憶がないから事件に巻き込まれた線は薄い。
後は某国の工作員に拉致られたか?
無いとは言いきれないか。でも海岸沿いに住んでないしなぁ。
大穴で異世界召喚・転移がある…か?
俺みたいなボッチでヘタレな元いじめられっ子が役に立つとは思えんが。
まぁ、今考えられる事はこのぐらいかな。少し落ち着いて来たし部屋の中でも…何もないからあの出入口調べるか。
出入口から顔だけを出し左右を確かめる。
どちらも円を描くように湾曲していて先が見えない。何も分からないことが分かったので前進したと考えろ。
じゃないと心が折れそう。だって何もないんだもん。
一度部屋の中に戻り、湧水の淵へ。
水は澄んでいてそのまま飲めそうだ。火がないから煮沸出来ないだけだが。
あれっ?水面に写った顔が幼くなってる?そんなアンチエイジング商品なんてあるのか?いや、ないだろっ!
これは…異世界召喚・転移が有力になってきたな。確かめねばなるまい、あの言葉を。
しかし、これが出来てしまったら最悪だ。頼むから出来ないでくれよ‼︎
俺は天に祈りながらあの言葉を呟いた。
異世界ファンタジー系でおなじみの…
「すてーたすおーぷん‼︎」
なにも出てこない。異世界召喚・転移はどうやら考え過ぎだったみたいだ…っと気を抜いた瞬間に頭の中でアナウンスがなった
『異世界言語に最適化します。最適化完了まであと5分です。』
とな。
「全裸で異世界に放り出されてどないせいっちゅぅねん‼︎」
魂の叫びをあげながらそっと大切な部分を隠した。
冷静に考えると今の俺ってただの変態だよな…
いかがでしたでしょうか?
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