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ハートドア-反逆者ルシウス-  作者: コン汰
Episode2.選ばれし女の子
9/21

少女と老人

「ほら!こっち!早く来なさい!」


少女に手を引かれるがまま、ルシウスは森の中を進んでいた。


長いスカート姿で易々と森の中を進む彼女の慣れた様子を見て、彼女がこの森に住んでいるのだろうか、とそんな事を考えていた。


「ほら、着いたわよ。ちょっと待ってなさい。」


木々の間を抜けると、少し開けた場所に木で作られた小さな小屋があった。


小さな切り株がいくつもある事から、周囲の木を倒してその小屋を作ったようだ。


少女はルシウスの手を離し、小屋へと駆け寄って扉を開いた。


「おじいさん!世捨て人連れてきたよ!」


……世捨て人とは俺の事だろうか。


開いた扉から白く長い髭を蓄えた老人が、これまた木で出来た杖を地面につきながらゆっくりと現れた。


「ほうほう……。これは確かに世捨て人かのう。まるで病気の白猫の様じゃ。」


「でしょー!なんか物憂げな顔でニーレッグの方を見てたの!」


……なるほど。口の悪さはこの老人譲りか。


「ご老人。すまないが、俺は世捨て人でもなければ病気の白猫でもない。俺の名前はルシウス。一応こんななりだが馬で来ているし、剣もそれなりに使える。心配は無用だ。」


ルシウスは呆れながらも、早くこの場を立ち去ろうとそう告げる。


立場を名乗らなかったのは、知らない様であれば無用な警戒を避けるためだ。


「え、そうなの?本当に?じゃあ馬呼んでみてよ!」


「……はぁ。わかったよ。」


訝しげな顔をする少女に再び呆れながら、ルシウスはシンバを呼ぶため指笛を力一杯吹いた。


指笛は森の中にこだまし、遠くまで響き渡ったようだったが、一向にシンバは現れない。


「……来ないんだけど?」


「……ああ。来ないな。」


おかしい。


いつもならばすぐにでも来るのに。


ルシウスの愛馬、シンバはもう10年も連れ添う愛馬で、共に何度も戦場を潜り抜けてきた名馬だ。


「……ねえ、おじいさん。この人もしかして幻覚まで見てるのかな。」


「……ああ、そうかものぅ。変な薬でもやっとるのかのぅ。どおりで病的な肌色なわけじゃ。」


「もしかしてとっても可哀想な人なのかしら。」


「うむ。きっとそうじゃのぅ。」


「聞こえているぞ。」


声を潜めて憐みの目を向ける二人にルシウスはそう言い、またため息をつく。


今日、この少しの間にどれほどため息をついただろう。


「エヴァ。仕方ない。落ち着くように家の中で温かいミルクを振る舞ってやろう。」


「ええ、そうねおじいさん。ほら!あんた!そんな所でぼさっとしてないでさっさと中に入りなさい!」


為されるがままにルシウスは小屋の中へと連れていかれる。


神よ。


俺は何をしましたか?


早くこの面倒な奴らから俺を解放してください。


ルシウスは神に祈った。

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