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選ばれざる者
その頃、下級騎士達は謁見の間の外で列を作り、任命式が終わるのを待っていた。
謁見の間は、許可がない限り上級騎士以下が入る事を禁じられた間だ。
そんな下級騎士の中で一人、隊列を僅かに乱す程、身じろぎをする騎士がいた。
「アマッド、列が乱れかけています。キチンと敬礼をしなさい。」
「いっけね、すみません!アドン隊長!気を付けます!」
白髪の騎士アドンと呼ばれる隊長に注意をされた青年はアマッド。
彼は今回の主役であるルシウスと同じ町の出身である為か、ルシウスを敬愛し、尊敬の限りを尽くしている。
そんな彼には今回の任命式というイベントでの興奮は抑えきれないようだ。
ルシウス様、本当にパラディンになっちまったんだなぁ。
敬礼を直しはしたものの、表情は未だ緩んだままである。
ルシウス様、俺はまだ下級騎士のままですが、いつか俺も必ず追いついて見せますからね!
心の中で決意を新たにするアマッド。
そんな彼の姿を、アドンは冷たく、闇を孕んだ瞳で睨みつけているのであった。