運命の分かれ道
絢爛たる装飾が施された巨大な謁見の間。
だが明かりは点いておらず、月明りのみが照らす仄暗い空間の中に2人の男が立っていた。
「信じたくはなかった。」
玉座の前に槍を片手に立つ男がぽつりと呟く。
その瞳には明らかな困惑の色が滲んでいた。
「……語ることはない。そこをどけ。」
玉座を見上げる黒いローブを羽織った男がそう言って、手に持った身の丈ほどある細長い剣を構える。
「ここは通すわけにはいかない。それが僕の役目だから。」
玉座の男は槍を握る手に力を籠め、ローブの男を見据える。
「……義兄さん。」
玉座の男が漏らした呟きは、虚しさを伴って闇に消えた。
「ならば押し通るだけだ。」
男のローブの下から巨大な純白の翼が飛び出し、男の体を白い光がうねる様に包み込む。
呼応するように、玉座の男の体から橙色をした陽光のような光が発せられた。
玉座にたたずむ男の眼差しからは、迷いが消えていた。
「サン!!」
「ルシウス!!」
二人は互いの名を呼び、同時に相手目掛けて跳躍をする。
互いの得物が触れ合った瞬間、謁見の間は二色の光に覆いつくされる。
まるで互いのこれまでの全てを塗り潰すかのように。
これは一人の反逆者と、その義弟の物語である。