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14.5 「糸が切れる前に…」

地獄同盟会メンバー ・夏海エヌアル:現在、留学中らしいが詳細は不明だが、アルゼの実兄 ・夏海アルゼ:復讐心から動く冷徹な少女 ・秋羽隼:ヤンキー気質の自分勝手な男 ・冬風カタナ:傍若無人な謎が多い男 ・ラッキーラブ:知能の高いサポート役の子犬 ・ゼファーナ春日:真面目な少年で、使用するシュガーレスが隠密性に優れるため、戦闘を任されることが多い。

 深夜過ぎの市内の陸橋。

 その橋の下は、不良達の溜り場となりやすいため、スプレーで描かれた、よく解らないキャラクターの落書きや、卑猥な文字が多かった。

 この場所に、4つの人影が。

 その内の一人は、携帯ゲームをピコピコと指で叩き、もう一人は自分の車のキーをチャラチャラと鳴らしている。

 どうやら、なにやら、話をしている。


「本当よ、試作の黒いスーツだったわ。写真で見た通りよ」


 と言っているのは、陸橋の足に手を触れてながら、壁に描かれた落書きを見つめているのは、先日、ガラの悪い男達に絡まれ、シュガーレスに助けられた少女だ。

 そして、彼女の近くで、壁に背中を預けて、座っている金髪の髪型をした男が口を開き…、


「それが、仮に本当なら、雇い主の命令どおりに、そいつを回収しないとな…」


 と、話した。

 すると、少女は顔を、むくらませて、


「本当だってばー。信用出来ないの?弟のくせに、生意気」


 と、金髪の男に向けて言う。

 すると、脇から話に混ざるようにして…、


「いつになったら、遊べるの?」


 と、スクリーンを凝視して、携帯ゲームを熱心に行う帽子を被った、まだ幼い感じの少年が言う。

 すると、金髪の男は立ち上がりながら、コートの胸元から、なにやら、写真を5枚取り出し…、


「ああ。ただし、遊ぶのは、写真のこいつらとだけ。奴らのファンタジスタスーツは、目立たないように、隠密に、生け捕りにしろとの命令だがな…」


 と言い、その写真をバラまくようにして、投げ、足元に散らばらせた。

 散らばった写真に、その場に居る者達は、彼の足元に目を向ける。

 少女は笑いながら、近付き、写真を一枚拾う。

 帽子を被った少年は、ゲームの電源を切って、同じく、彼の足元の写真を拾いに立ち上がる。

 さっきから、一言も喋らない、ただ、車のキーを鳴らしている男も、その写真を拾いに彼に近づく。


「じゃあ、俺たちの雇い主さんから、渡されたスーツで戦うとするか…」


 金髪の男は、そう言った。


「なんで、あんたが、リーダー気取りよ…」


 と、文句を言う彼女の手にある、写真に映るのは、あのボサボサ頭の冬風カタナ…。

 そして、帽子の少年が拾い、その手にある写真には、あの夏海アルゼの顔が映る。

 車のキーを鳴らす、長身のオールバックの男が拾った写真には、スキンヘッドの秋羽隼。

 金髪の男の足元に散らばる写真二枚。一枚には、あの子犬のラッキーラブが映り、もう一枚は、銀色の髪の毛をした謎の男の顔写真…。

 そう、金髪の男がバラまいた写真は、すべて、地獄同盟会のメンバーの顔写真だ。

 しかし、ゼファーナ・春日の顔写真だけはなく、代わりに、銀色の髪の毛をした男の写真…。

 その銀色の男の写真を、金髪の男は拾い…、


「ケリーが見た黒いスーツの正体は、夏海エヌアルの可能性が高いな…」


 と、言った。


 地獄同盟会のメンバーを狙う、謎の四人から、数メートルぐらい離れた路地の草むら…。

 そこには、うめき声と、血の跡が、チラホラ見えた…。

 そして、草むらには、数十人のパーカーや、帽子を身につけた、鼻や耳に、ピアスをした少年達が、倒れていた…。口から、血を吐き、手足が折れ、苦痛の声を出す…。破壊されたスケートボードや、スクーターが辺りには転がる…。

 陸橋の下は、この少年達の巣…。

 そう、少年達をやったのは、地獄同盟会の写真を握る、彼ら、四人…。




 組織が動き始めたとの連絡を、アルゼから受けたゼファーナは、翌日のバイト先で、そのことについて、考え事をしていた。

 皿洗い中に、考え事をするのは、よくやることだ。作業をしていると、体中や、頭に血が回ってくるせいなのか。

 それに、考え事をしていても、誰も、話し掛けては来ないから、考え事に集中しやすいのだ。


(僕の顔は、組織に割れていない…。しかし、アルゼ達は、顔が割れてしまって、街中に網が貼られている…。なんとかして、援護はしてやりたいが…、敵が隠れているとなれば…)


 と、黙々と皿を洗いながら、今後の自分の動きは、どうするべきなのかを考えていた。

 すると、しばらくして、キッチンに掃除用具を取りに、桜花がホールから、やってきた。

 キッチン内に居た男共が、一斉に騒ぎ出したのを、ゼファーナは横目で見つめ、桜花に、チラリと目を向けた。

 彼女は笑いながら、男共に、手を振り、掃除用具が置かれたロッカーに向かう。


(なんとかして、桜花さ…、んじゃなく、アルゼ達を助けねば…。にしても、桜花さんは…、相変わらずの美人だなぁ…。って、なにを、考えている…!)


 急に、余計なことを考えてしまった自分を、ゼファーナは恥じた。

 すると、ロッカーから、ほうきを取り出した桜花が、ゼファーナの居る洗い場に近寄り…、


「ひさしぶりー」


 と、挨拶された。

 すると、ゼファーナは、あたふたしながら、桜花の方に首を向けて…、


「あっ、お久しぶりです…」


 と、堅くなりながら、挨拶を返した。

 キッチン内に居る男共の顔が固まった。


「顔の傷、だいぶ、治ったねー」

「あっ…」


 と、彼女から言われ、ゼファーナは、自分の顔に触れた。さっぱり、傷跡すらなくなっている。

 そういえば、一文字の事件前以来、たまの平日には、藤岡剣友会のマネージャーをしたりして、バイトに来る回数が減ったせいか、今日まで、桜花と会ってはいなかった。

 だから、ゼファーナ自身も、いつのまにか、顔の傷が治ってしまっているのに、今更ながらに、気付いた。


「じゃあねー」


 と、ゼファーナに手を振りながら、桜花はホールに戻って行った。

 ゼファーナは変な満足感に包まれながら、同じように手を振った。

 周囲の男共からの妙な視線を受けながら、彼は、また皿洗いを再開する。


(変な目で、見られてる…)


 と、男共からの嫉妬とは違う眼差しを、ゼファーナは肌で感じる。

 そのキッチンに居るバイトの男達の中でも、一人だけ、険悪な表情で睨み付けている者が…。

 年長者で、このバイト先のリーダー格のダイゴだ…。

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