あれ、なんていったっけ……そう、ゴキブリン!
現在、俺の前方十メートルには、よくファンタジー系のゲームで見たことがある、有名なあの………
あれ?なんていったっけ?……、確かコモリンだか、ゴキブリンだか、まぁそんな名前だった気がする。
あ、でもコモリンって、小学校の頃の友達でそんな名前の奴が確かいたなぁ。何かコモリンいい奴だったし、たぶんこいつの名前はゴキブリンで決まりだな。よし、いかにも人類に嫌われてそうな名前しやがって。まったく救いようのない奴だ………やれやれ、早いところ息の根を止めてやるか。
ゴキブリン(一匹)はいかにも獰猛で狡猾な顔をしている。
体格は人間の幼稚園児並みで、それが多少筋肉質になった。そんな感じだった。
「こいつがこの世界で最弱のモンスターか………」
フッ、一瞬だな……
この俺がこの世界に来て一番最初の敵が最弱のモンスターだなんて………まったく興醒めだな。
まぁいい、すぐに凶悪なモンスターを討伐しに行こう。そうだ明日にでも。
そうと決まればさっさとこいつを片付けるとするか。
俺は戦闘態勢に入ると右手を空に向けて掲げる。
ゴキブリンは身の危険を察知したのか、数歩後ずさる。
フッ、だがもう遅い。
「出でよっ!我と契約せし悪魔よ!、その身を以て、我に忠誠を示せっ!」
瞬間、目の前に、空中に魔法陣のようなものが発現し―――――――――――
それは確かに現れた。
手足から延びる爪は一本一本が鋭利な刃物のようだ。しっぽが生えていて先っぽが円い。
そして何より、なんかシーサーっぽかった。
いや、てかこれまんまシーサーじゃね?あれ、おかしいな?ここ異世界だよね?
さらに何よりもツッコミたかったのは……
「ちっさ!」
そいつは手のひらに収まる、もはやぬいぐるみにしか見えなかった。
これ、だいじょうぶなの?
ゴキブリンは尚もこちらを警戒しているのか、俺の出方を窺っているようだ。
これ勝てるよね?
口元から苦笑いが漏れる。
後方では俺の実力をその目で確かめようと、多くの冒険者やら、街人やらが集まっている。
もう今更引き返すことはできない。
みんな俺の戦いっぷりに期待している。
そうだこいつはこれでも悪魔なんだ(どう見てもシーサーだが)。
きっとあんなゴキブリンごとき瞬殺してくれるに違いない(手のひらサイズだが)。
となれば……
「行け!、我が眷属よ!!」
俺の合図でシーサーがゴキブリンに向かって一直線に突進していく。しかもこれが割と早い。
おっ…?なんかいけそうだぞ!
「駆逐してやれ―!」
俺の応援の直後、シーサーがゴキブリンに衝突し――――――――
一瞬で消滅した。
俺、元地球人こと葉月遥人は、呆然とその光景を見ていることしかできなかった。