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第四話 決断

 その後、村は、悲しみの海に落ちた。遺族を失った者達はもう戻ってこない者達のことを思い、泣き叫び。そうでないものも村の建築物の半分ほどが倒壊しているこの現状に、ため息を吐いた。


 その中で彼、ウラル=ライト・カジャスはある一つの決断をした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ウラルが目を覚ますと、まず目に入ったのは、木製の天井だった。

 全身が痛くて思わず顔をしかめる。どうやらぼくは、ベッドの上に寝かされているようだった。窓の外はもう真っ暗だ。

 なにがあったんだっけ……そうだ。たしか、悪魔達が魔法陣の光に消えた後、疲労の波がどっと押し寄せてきて。

 なんとか疲労に耐えながら、村人達の避難所に行って村長の奥さんに全て話し終わったところで、なんだか安心してしまって、そこで気を失ったのか、倒れてしまったのか、記憶が途切たんだ。


「イテテテテ……」


 ゆっくりと起き上がってみる。と、部屋に誰かが入ってきて言った。


「やっと目が覚めたのですね。心配したんですよ……?」


 村長の……奥さんだ。


「すみません……」

「謝ることじゃないでしょう?」

「はい……」

「食欲はありますか? なにか食べれそうですか?」

「食べれると……思います」

「それでは取ってきますね。少し待っていてください。あ、動いたりはしないでくださいね」


 そう言って彼女が部屋を出ていき、一人になると、ぼくの瞳から唐突に涙が溢れ出した。


「……ひくっ……うぇっ……うぅ……けん……そんちょ……さまぁ…………」


 そんな泣き声は、夜通し続いた。


 月の無い夜だった。







 ──翌日。

 

 ウラルは村人達を集めた集会場の壇上にて、村人達の注目を浴びていた。彼の目が腫れているのは誰の目にも明らかだったが、それを咎める者は誰もいなかった。


そして──彼は言った。


「ぼくは──この村から出て行こうと思います。そして、諸悪の根源である魔王を、必ずこの手で殺します。」


 会場が一斉にどよめきで溢れた。


「どうして…?」「ウラルちゃんがそこまですること…」「そうだ!やっちまえ!」「なんで?」「え?」


 等と声が聞こえる。


「皆さん、落ち着いて、まずは話を聞いて下さい。

 ぼくは、この村があの悪魔、『蟹爪』のキャンスに襲われたのは、ぼくのせいだと考えています。彼自身、ぼくを狙っている等と話していましたから。だから、ぼくがここにいたら、まだ悪魔達が襲いにくるかもしれない。

 その時、ぼくは皆のことを守れないかもしれません。でもぼくは、みんなが死ぬなんて、そんなことはもう見たくない。だから──」


 そこで一旦言葉を切り、改めて言った。


「ぼくは、この村を出ます。既に村長代理──村長の奥さんのことだ──の許可は取ってあります。ぼくはもう失いたくないんです。大切なものを失うのは、もう、散々です。」


「ウラルちゃん……」「ウラル……お前……」「ウラルいなくなっちゃうのー?」


「皆さん……今までありがとう……ございました! ぼくは明後日には、この村を出ます。ほんとうに、ほんとうに、十年間もの間こんなぼくと過ごしてくれて、ありがとうございました!!!」


 沈黙が訪れる……そして。


「ウラル、お前が戻ってくるの待ってるからな! 魔王なんてさっさと倒して戻ってきやがれ!」


 その言葉を皮切りに。


「ウラルちゃん! 頑張ってね! 私達、忘れないから!」「ずっと待ってるからなーー!!」「ウラル、こちらこそ……ありがとな!!」「頑張れウラルーー!!」


「みんな……きっとすぐに……戻ってくるから!!」


 そして歓声に包まれて……その集会は終わりを告げた。

 絶滅の中で彷徨っていた村人達に。

 希望を与えて──





 そして、その彼の決断が、この先の未来を──変えることになる。

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