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悪魔殺しの少年 ~その者、大精霊の契約者につき~  作者: になり
第二章 走りだした運命の上で
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第十七話 地下通路

「小さき火の粉達よ、集まり小さき灯となりて闇夜を照らせ。小灯火スモールファイア


 ラルゲットがそう唱えると、彼の手の上に小さな火の玉が浮かび、蓋を閉めたことで真っ暗になっていたその空間を照らした。


「それ、便利だな」


 アルベドが感心するように言う。

 鼻で笑いながらラルゲットが答えた。


「ふん。赤属性の適性があれば誰でも出来る入門魔法じゃよ」


「じゃあ無理だな…。やっぱり赤属性の適性は羨ましいな、便利そうで」


 そう答えてから周りを見まわしてみる。

 横幅、高さがともに3メートルくらいの通路で、左側には石の壁。右側では通路に沿うように横幅3メートルくらいの濁った川が流れていた。どうやら向こう岸も同じような通路になっている模様。

 左側の石壁には梯子が掛かっており、その上には人が一人通れるくらいの穴が空いていた。多分そこから入ったのだろう。

 どんよりとした空気と臭い。通路の先は闇に包まれていて見えなかった。


「もう、歩けるわ」


 ラスタがそう言って肩から降りる。少し大きかったからか、声が通路に反響した。


「さて、説明してもらえるかな?」


 ウラルがラスタの方を真っ直ぐみて言うと、彼女は肩を竦めながら言った。


「歩きながらね。…っと、とりあえずラルゲット、私はこれから北に行くことにしたわ。この人達とともに」


 その言葉にラルゲットは顔をしかめる。


「…何故でしょうか?我々はこのまま南に向かう筈だったのでは?」


「色々あったのよ。じゃあ、今から説明するわね」


 と、北に向かって足を動かしながらラスタが話を始めた。




「───ってわけなのよ。それで私はウラル君人達についていくことにしたの」


 カツ、カツと規則正しい音の中、ラスタの話にアルベドとウラルも耳を向けていたが。

 ──それは思わず苦笑してしまう程、着色されたものだった。特にウラルが助けに入ったところが凄かった。なんか、こう、キラキラしてる感じだった。


 そんな話を聞いたものだから、ラルゲットは目を丸くしてから二人に頭を下げ、言った。


「お嬢を守ってくれ、ありがとうございます」


 二人は目を見合わせて苦笑する。


「いや、親の仇である悪魔を殺す時、たまたまラスタさんがいた。それだけの話です」


「かたじけない」


 ラルゲットがそう言って顔を上げると、アルベドが聞いた。


「というか…ここってどこなんだ?どこに向かってるんだ?」


「ここは──王都ハブリッシュの地下。今は使われていない下水道跡じゃな。ここを真っ直ぐ行くと王都の北側に出る。魔物も昔張られた結界のお陰で現れることは無い。なかなか便利なのじゃよ」


「ふぅん…そんな空間があったとはな…知らなかったよ」


「これは一部の者しか知らぬ秘密なのじゃ。他言は許さんぞ」


 怖い顔でそう言われたアルベドは肩を竦めた。


「盗賊稼業で使いたかったんだが…仕方ないな」


「盗賊?」


 少し先を歩いていたラスタが振り返って言った。


「ああ。俺の親父は盗賊の親分でな。そこそこ名の知れてる盗賊団だから名前は知ってると思うぜ?月の夜ってんだけどさ、知ってる?」


 それを聞いたラルゲットの顔がこわばった。

 ラスタの返答に割り込んで言う。


「アルベドよ…下の名前はなんじゃ…?」


 アルベドは前に進みながら気楽に答える。


「ハギス。アルベド・ハギスだ」


「……やはり、か……」


 ラルゲットはそう言うと、こめかみを押さえて黙ってしまった。


 その後、気まずくなった空気を壊してくれる物は何も無く、各々がそれぞれ考え事をしながら歩いた。


 ──そして約五時間後、遂に外に出る穴の下に到着した。


「もう外は暗いし、今日はここで野宿しよう」


 そう言ったウラルの言葉に従い、歩き疲れていた四人はそこで一夜を明かしたのだった。


 もちろんその後、頬を赤く染めたラスタによって「土壁ランドウォール!!」と、魔法で男女の仕切りがつくられたのは言うまでも無い話である。

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