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悪魔殺しの少年 ~その者、大精霊の契約者につき~  作者: になり
第二章 走りだした運命の上で
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第十六話 逃亡

 国王チャド・ラフタヌーンとの謁見を済ませた三人は、大通りを冒険者ギルドに向かって進んでいた。

 大通りは賑やかな人で溢れ、みながそれぞれの目的地に向かって歩いていた。


 天気は雲一つ無い晴れ。透き通った空気が美味しい。


 すると、突然、城を出てからずっと俯きながらブツブツと呟いていたラスタが、顔を上げた。


「…私──決めたわ!」


 その声に、少し先を歩いていた二人が振り向く。

 というか、大通りを歩いていた殆どの人がチラッとその声の方を見ていた。しかし、その大勢はまたすぐに前を向いて歩き出す。


「何を?」


 また歩きだしながらアルベドが言う。


「私、あなた達についていくことにしたわ!北に!」


 その答えに二人は目を丸くして振り返る。


「…それはいいけど…お前、戦えるのか?」


「当たり前じゃない!Bランクの冒険者証も持ってるわ!」


 無い胸を張るラスタ。 

 その姿にウラルが苦笑しながら問う。


「じゃあさ、なんであいつに襲われてたの?」


 その二人の視線に、ラスタは苦虫をかみつぶしたような顔をした。


「それは…言えないわ…」


「…どうして言えないのかも?」


 その問いにラスタはゆっくりとその首を縦に振る。

 そして、そのまま俯いた。

 自分のスカートをギュッと握っていた。


 そこで、アルベドがはーっと溜息を吐いて言った。


「……まだ連れてかないなんて言ってないぞ」


 その言葉にラスタが顔を上げてウラルを見る。

 ウラルは苦笑しながら頷いた。

 ラスタの顔がぱっと明るくなる。


「……ありがとう。それとまだ言ってなかったけど、仲間がいるのよ。旅賃を稼ぎにモンスター狩りに行っていた筈だから、そろそろ戻ってきているはずなの」


 三人はまた歩き出す。

 

「なんでラスタさんは戦えるのに狩りに行かなかったの?」


「私達は別々で依頼をこなしていたのよ」


「ははーん、サボってたってわけか」


 後ろを振り向きながらニヤニヤと笑うアルベドに、ラスタは汗を流し、そっぽを向きながら言う。


「べ、別にサボってたわけじゃないわ!す、少し観光してたのよ!」


「「へー」」


 アルベドとウラルの声が重なり、二人のニヤニヤとした視線がラスタに向いた。

 ラスタは必死に視線をそらしながら二人を押した。


「ほ、ほら!もうギルドについたわよ!と、とりあえず入りましょう!」


 そんなふうにして冒険者ギルドに入ると、ウラルが扉から入った瞬間、扉の前にいた男とぶつかってしまった。

 

「す、すみません」


 ウラルが咄嗟に頭を下げる。

 

 と、男はチッと舌打ちをして、その先の何かを見て、目を見開いた。

 黒く長いローブを着ていて、顔以外の部分が見えない。


 その視線の先にいるのは──ラスタか!!!

 咄嗟にアルベドがラスタの方を向く。


 ラスタは目を見開き、顔が青ざめ、足が震えていた。

 アルベドがラスタに声をかけようとした瞬間、男が動く。


「──見つけた──!」


 男がそう呟いたかと思うと、アルベドとウラルが突き飛ばされる。


 ───まずい


 吹き飛ばされた二人は大通りの人ごみの中に突っ込んでいく。 


「くっ、ラスタ!逃げろ!」


 吹き飛ばされながらそう叫ぶも、動けない様子。


 ラスタは腰が抜けたようだった。入り口にへばりこんでいる。


「あ、あぁ……」


 気の抜けた声しか出ない。

 その声を聞いた男はニヤリと笑いながらラスタに手をかざす──


「死ね──」


 と、その男の右肩から左腰にかけて金属の光が走った。

 少しして男の上半身がズリ落ち、立ったままの下半身から噴水のように赤々とした血が溢れだす。ラスタの服が真っ赤に染まった。


「キャー!!」「血だ!!」「人殺しだ!!!」


 一瞬遅れてそれを見ていた人々から悲鳴が上がる。


 すると、先程まで老人の立っていた入り口から一人の老齢の男が現れて言った。驚くことに返り血を全く浴びていない。熟練している証だった。


「お嬢様!大丈夫でしたか!?」


 すると、ラスタはその老人にはにかんだ笑いを見せると、言った。


「腰が…抜けちゃったみたいなの…。あ、助けてくれてありがとう、ラルゲット」


「いえ、当然のことをしたまでです」


 ラルゲットと呼ばれた彼はそう言うと、ラスタを肩に載せた。

 すると、ポカンとしていたウラルとアルベドの方を見て怒鳴った。


「おいお前ら!!お嬢の知り合いなんじゃろ?捕まりたくなかったらついてこい!」


 そう言って走りだしたラルゲットを二人は慌てて立ち上がり追いかけた。


 大通りから裏の路地に入り、くねくねと曲がった道を行く。

 と、袋小路になっている空間に出た。


 ラルゲットは何やら下水道の蓋のような物を開けていた。

 ムワッとした生臭い空気が流れてくる。


「説明はあとじゃ。さっさと逃げるぞ」


 そう言ってラルゲットはその穴に飛び込んだ。


 残された二人は顔を見合わせてから頷く。


 ウラルが先に飛び込み、アルベドも後に続いた。

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