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悪魔殺しの少年 ~その者、大精霊の契約者につき~  作者: になり
第二章 走りだした運命の上で
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第十一話 少女

 少女は、生まれながらにして、大きな使命を持っていた。


 そんな自覚もなく、呑気に幼少期を過ごしていた彼女がそれを実感するのは、12の時だった。


 両親が死に、そして、兄が死んだ。


 彼女は、なされるがままに周りの人間と共に逃げた。

 何も考えることをしなかった。


 兄が死んだという事実を受け止められなかったのだ。

 何でもできて、どんなわがままでも聞いてくれる優しい兄。

 みんなにも慕われていて、なによりも誇らしかった兄。


 そんな彼が死んで、暫くたった。 

 逃亡生活もようやく軌道に乗ってきた時だった。



 親友が、死んだ。



 自分の目の前で、自分の盾になって。

 自分は、彼女が冷たくなっていくのを、ただ見つめることしかできなかった。


 そこで彼女は、ようやく自分の使命を自覚した。

 

 彼女は努力した。色々な者を守れるようにと。


 しかし現実は残酷で。一緒に逃げてきた者も唯一の側近だけになっていた。


 それでも、二人は強かった。

 だから、頑張ってハブリッシュまでこれた。

 

 ラルゲット──その側近のこと──によると、目的地まではあと三日で着く筈らしい。

 何でも、昔の知り合いなんだとか。



 ──あと少し、だったのに。



 歯軋りしてしまう。

 母上様に聞かれたら、はしたないって怒られちゃうのに。


 頬を熱い何かが流れる。


 ――ううん、今は泣いてる場合じゃない。


 せめて、ラルゲットが来るまで耐え抜けば。

 きっと生き延びることができる。


 

 私は生き延びなければならないのだから。



 だって──私は──────なんだから──


 

 立ち上がって。前を向いて。奴を睨み付けて。


 右手をかざす。


焔炎ボルケーノ!!!」


 この二年の逃亡生活で手に入れた力。


 原色魔法三色の無詠唱行使。しかも二色同時使用。


 奴の立っていた地面を溶かしたかのようにして、地中から炎の柱が現れる。

 あたりにツンとする焦げ臭い匂いが広がる。


 大抵の魔獣なら、これで黒焦げになって終わり。


 私の、最高火力魔法。


 でも、これだけじゃ終わらない。


 次は左手をかざす。


強硬氷壁アイシクルウォール


 これも二色同時使用。


 奴を囲うように土魔法でカチコチに固めた壁を乱立させ、それを鉄で思いっきり叩いても割れない氷が覆っていく。


 二重、三重、四重。そこで止める。


 訪れる静寂の時。自分の呼吸と、心臓の鼓動だけが聞こえる。


「やった……の……?」


 肩で息をしつつ、両手をかざしつづける。


 突如、土と氷でできた壁に光の閃が走った。


 

 ザンと何かを切り裂く音。



 そして、ズンと壁が倒れる重い音がして、土煙が立ち昇る。


「ふむ、お嬢さんの番はこれで終わりでいいですかな?

 ……次は私から行かせて貰うとするかのう」


 そんな声が聞こえて、煙の中にいた奴のシルエットが消える。


「……くっそぅ……」


 声が漏れてしまった。


 逃げ出すことはない。少し逃げたところですぐに追いつかれることらわかっているからだ。


 膝の力が抜ける。

 

 そのまま床に座り込む。


 どうしようもない。私の物語はここで終わるんだ。


 視界が歪む。声が漏れる。迫ってきているだろう奴に対して、目を瞑る。



 「うぁあぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁんん!!!!!」

 

 

 ────ごめんなさい──母上様──父上様──ラスタ──ラルゲット──みんな─私は──────



 ガギィン!!!!!



 金属と金属のぶつかる高い音が、あたりに響いた。



 ………あれ?まだ私、生きてる?


 そのことに驚いた彼女が、ギュッと閉じていた目を恐る恐る開いてみると、そこには。


 自分と同じくらいの背の白髪の男の子が、自分を守るような格好で。

 長く白い顎髭を生やした長身の老人と、剣を交差させていた。

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