第八話 精霊
出発した二人は、ラフタニアの王都ハブリッシュへ向かっていた。
「アルベドさん、ぼくたちってどこに向かってるんですか?」
それはウラルの知るところでは無かったが。
「……そういえば、説明していなかったな。いい、俺達は今ラフタニアの王都ハブリッシュに向かっている」
「王都ですか……」
ウラルは王都がどんなところか全く想像がつかなかった。なにせ村での王都の話はそこからやってきた行商人ぐらいだった。
「行ったことがないのか?中々いい場所だ、活気があってな。それで、なぜ行くのかって話だけど、そこには冒険者ギルドがあって、これからの旅の駄賃はそこで稼ぐことになる」
「へ?『月の夜』が支援してくれるんじゃ? 」
「いや、ウチも大所帯になってからは中々キツくてね、余ってる金はないんだわ、これからも事業拡大はしていく予定だし」
「へぇ…盗賊も色々大変なんですね…」
「まあな。てか、敬語やめない?気持ち悪い」
「まぁ……そうだね、お言葉に甘えてそうさせてもらうよ。じゃあ改めて、ウラル=ライト・カジャスだ、よろしく」
「アルベド・ハギス、よろしく、ウラル」
そうして二人はがっちりと握手をして挨拶を済ませた。
勿論歩きながらであるが。
「ところでアルベド、精霊ってなんなの?」
これは前々から気になっていたことだ。
アジトの精霊だとかぼくの中に精霊がいるだとか、気にならないわけがあるまい。
「そうだな……精霊がそこらじゅうにいるって事は知ってるか?」
「いや、全く。何も知らないもんで」
「じゃあまずは、精霊の格からだな。精霊にな格があって、そこらじゅうにいる微精霊、それが成長した下位精霊、さらに成長した高位精霊、まぁこのくらいたと地域の守り神として崇められることもあるな。
そして、さらにその頂点に立つのが四大精霊だな。
まぁこの四大精霊ってのは神話のレベルだが、度々歴史の転換期、大事件時に現れていることからも存在は確かだといわれている」
「ふぅん…精霊にも格があるんだな、じゃあ、あそこのアジトを暖めてた精霊ってのはどのレベルなんだ?」
「ああ、あいつ、アルって名前なんだが、アルは下位の上位ってとこだな」
「下位の上位か…それって結構凄いんだよな」
「うん。結構な。で話を戻すけど、精霊ってのは魔素エネルギーそのものか意思を持ったものだつて言われてる、だからそれぞれ魔素エネルギーに対応した属性を持ってる。赤、青、黄、の原色と光、闇の明色だな」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、魔素エネルギーってなんのことだ?」
「……そこまで知らないとはな……」
「田舎育ちなもんで」
「……そうだな……魔素エネルギーってのは魔法、これは知ってるよな?これを起こすためのエネルギー源だな。俺達人間は、魔法を使うときは、大気に無数に点在してるこの魔素エネルギーってのを操作して魔法って呼ばれる現象を起こしてる」
「ふむふむ」
初耳だ。村長は魔法を使えるくせに、そんなこと教えてくれなかった。
「んで、その魔素エネルギーには属性があってな?それが、三色の原色魔法ってわけだ」
「ん?ちょっとまって、さっきは光と闇の明色とか言ってなかったっけ?」
「ああ、その説明はこの後する。
まず、人にはそれぞれ魔素エネルギーの属性に対して適性ってのがあってな?
基本的には原色魔法の内一つを持っているが、二つ三つ使える奴もいる。まぁその辺は才能だな。
で、明色魔法の話だが、ほかにも緑魔法と呼ばれるものや、黄土魔法、時間、空間魔法ってのがあるんだが、それらは特殊魔法と呼ばれてて、その適性を持ってるのは一部の氏族だけ。
空間、時に至っては適性を持っている人はいないと言われてる」
「ほうほう」
「特殊魔法と明色魔法は確かに扱える精霊は少ない。
だが、魔素エネルギーそのものが意思を持った精霊は魔素エネルギーの扱いが人より格段に上手い。
明色、黄土、緑を使える奴は、まぁ上位以上にしかいないけど、いるにはいるってわけだ」
「へぇ……」
「で、その精霊と契約して使う魔法が使役魔法って呼ばれてるもんだね、例えば俺は赤青黄の精霊達と契約してる、すると彼等の力を借りて魔法が使える。
個人の適性に関係なく」
「え?それって契約しないと力は絶対に貸してくれないのか?」
「ま、そうなるな」
「………」
「どうした?」
「いや、蟹爪と戦ったときにほくに力を貸してくれた彼女達とは契約なんてしてないな……と思って」
--契約は済んでいます--
突如脳裏に響く声。
一体いつ?
--私たちが、力が欲しいのか?とお聞きしたところ、貴方は当然だ。と返してきましたので--
「お、おい大丈夫か、ウラル?」
「……あ、ああ」
「どうしたんだ?急に黙りこくって」
「彼女達との交信があったんだ。……契約は済んでいるらしい」
「で、今こっちからも通じるのか?」
「……いや……やっぱり無理みたいだ…」
「そうか……」
「うん……」
「……それは置いておいて、とりあえず進もう。ここまで歩いたし、多分あと三日くらいで王都だ。それまで此方からも交信を試してみよう、時間はあるんだ」
「わかった。サンキューな」
「ま、親父殿の頼みだからな」
そんなふうにして、特になんの問題もなくその道中を済ませ、三日後、彼等はラフタニアが王都ハブリッシュ、の正門前にいた。