第一話 始まりの光
ぼく──ウラル・ライト・カジャス──は十年前、一度故郷を滅ぼされている。
生まれてから五年間、両親と共に最も時間を過ごした我が家も。
みんなで毎日どろんこになるまで遊び回った広場も。
いつも偉そうにしていて、たまにウインクしながらお菓子をくれたりした村長のお家も。
暖かかった母さんも、心強かった父さんも。
みんな、殺された。
かの“深なる魔王”の手によって。
たまたま、村人のなかでひとり生き延びたぼくは、ある村の村長に拾われた。
その村長はぼくを、まるで本当の息子のように扱ってくれたんだ。
ぼくも村長をお義父さんって呼んだりしてね。
暖かかったよ。本当に暖かかった。
友達だってできたさ。
今だって、森で友人と遊んでた。
だけど──それももう終わり。
森から空を見上げれば、十年前と同じ光。
奴が、ぼくの生活を壊しに──やってくる。
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ウラルが裏の森で目を見開いていた頃、村では村長含めた村人達も、突如現れた青白い光に唖然としていた。
そんな村人達の反応を嘲笑うかのように、空を断つその光は全方向に規則的に広がっていく。
そして、それが完成したかのように見えたとき、ようやく一人の村人は口を動かすことに成功した。
勇気を振り絞り、震えた声で、必死に声を出した。
「あ……じゅ、十年前……の……」
その刹那。
その言葉を待っていたと言わんばかりに、青白い光が時間を掛けてえがいた図形──魔法陣と呼ばれるもの──はその役目を果たそうと輝きだした。
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「な、なぁ、ウラル。あ、あれ、なんだ?」
一緒に遊んでいた友人──ケンが空を割る光を指さし、震えた声でぼくに聞く。
答えられない。答えられるわけがない。
だって、ぼくはあれを知っている。
だって、あの光がぼくの世界を壊した。
あの光が、あいつが。
だけど今は、どうするかを考えないと。
二人だけで逃げるか……?
いや、それはナシ。村人のみんなが死ぬのはいやだ。
──よし、とりあえず。考えるより動けってやつだ。
そんな思考終えたぼくは決断し、ケンに声を掛けた。
「とりあえず、みんなのところにいこう!」
即断即決。それがぼくの取り柄だ。
みんな大丈夫だろうか。ランは怯えてないだろうか。彼女は兄のケンがいないとどうしようもないから、早く行ってあげないと。
そんなことを考えながら。
恐怖をごまかして。
その決断で幾つの命が失われるかを知らずに。
ぼくらは、走り出した。
──そして奴は、現れた。