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うぉくのふぉそみつ リターンズ  作者: ムッシュ志乃
9月編
99/185

【天高く 木の葉の如く ゆれなずむ】第5話 戦国大学 その4

第一回戦:自己紹介&自己アピール


「こんにちは、茂木美々です! えーと、特技はテニスです。いっつね、あの、第三コートとかで…冬はスノボとかにも行きます」


 一番手ということもあってか茂木は歯切れが悪い。ノリの良さで全部をカバーしようとするのが身上のようだがどうもその持ち味も発揮されていない。仲間内でちょっと出てみなよ、という話題で盛り上がって、という光景が目に浮かぶようだ。セコンドのイケメンAにカバーされると声も大きく甘えた声や仕草も出したりできるのだが、結局会話をしないと成り立たず、マイクパフォーマンスやスピーチとしてはダメだ。合コンとかでやってくれ。


「よろしくお願いしますっ!」


「美々ちゃんはテニスが得意ですか! ではちょっとやってみてください」


 マイクを持った笑顔の絶えない細みのメガネの男性ことドクターKが茂木に助け船を出すと、茂木はクネクネと右手を振るってシナをつくって笑顔で取り繕った。


「かわいいですね、ありがとうございました。では、次の方お願いします」


「文学部日本文学科3年三瀬清子と申します。今日は年に一度の楽しい日ですので、私も皆様のお祭りに花を添えられるようにがんばりますので、応援よろしくお願いします」


 行儀よく頭を下げ、少しうなじを覗かせる三瀬。うまい。ハイジさんがバックについているだけあり、隙はない。私たちはハイジさんのことをよく知っている。ハイジさんは無謀なようだが、一番勝率の高い方法をいつもとってくる。ある程度のダメージは織り込み済み、最後までミスをしないのがハイジ流だ。今回も徹底しているだろう。圧倒的な勝利はなくとも、最低限必要な犠牲は献上して結果大きな負け星を喫することなく最後まで息切れしない。早くも勝利を確信させてくれた一番手とは一味違う。


「ご趣味は」


「書道を嗜んでおります」


「アハハ、実は僕、三瀬さんと倶楽部一緒だから難しいねぇ。もう大体知っているとなると質問するのは難しいや」


 とドクターKは苦笑を浮かべ頭をかいた。照れるドクターKを励まそうとみなが拍手を送り、それを見た三瀬も白い花弁が開くように少し微笑んだ。ドクターK、かわいいな。がんばれよ、ドクターK。


「すみませんっ。では、次のお方お願いします」


「みんなこんにちはぁー! 花屋敷アサでーす! よろしくー!」


 ズダンダンとイオングループのドラムの長塚が盛り上げる。


「趣味は、人の笑顔を見ることと歌うことです!」


「さすが、アイドルですね! どんな歌を歌いますか?」


「イオングループさんの『初恋ラプソディ』とか得意です」


「チームワークは抜群のようですね! では、次の方」


 ここで良崎の番が回ってくるが、当の良崎はジャージを着たまま一言もしゃべらず、微動だにしない。まるで無機物だ。


「えー、セコンドの小林です。ウチのリーベルトはこう申しております」


 ドクターKを呼び寄せ、慣れた口調で小林氏が言葉を紡ぐ。


「結局わたしが一番きれいでかわいいので、わざわざわずらうこともないよね? と。まぁ、僕としても同意見でしてね。ウチのリーベルトは素材がいいので、わざわざ着飾らなきゃいけないような中途半端なザコと違って普段着のジャージで大丈夫です」


 小林氏のマイクパフォーマンスでハイジさんの眉がピクリと動く。アイドル同好会の面々はおどけて少し驚き、イケメンは仲間同士で何か話し合っている。


「そもそも今回も、スクールカーストで上位のヴェロニカ、社会で将来我々の上に立つであろう高氏院を、学祭くらいでは踏み台にしてたまには上の景色を見てやろうとリーベルトさんが勝ちを恵んでくれた次第ですから。正直、顔ぶれを見てもう不戦勝でいいんじゃないかとも思ったこともありましたがいやいや、さすがにそんなに簡単に物事がうまくはゆくまいと僕も兜の尾を締めなおしたのですがね、杞憂ですね。圧勝ですね。スズメバチに挑むミツバチの群れの映像を思い出しました」


「自信満々ですね。リーベルトさん本人からは何かないですか?」


 と健気にドクターKがマイクを良崎にむけるが哀れドクターK。実は、良崎は動かないのではない。緊張して動けないのだ。良崎とはいえ所詮良崎である。容姿以上のものを期待してはいけない。かと言って私に何ができるのかと問われれば何もできないので、第一回戦は小林氏に任せ、徐々に良崎の緊張がほぐれるのを待つ他手段がないのだ。


「リーベルトは申しております。わたしの趣味はプロレス観戦だ、と。そしてドクターKとやら。これ以上くだらない質問を続けるというのなら、わたしのクロスアームブリカーで貴様は実家に入院する羽目になるぞ、と」


「それはご遠慮いただきたいなぁ! では、ちょうどいいので、自己紹介自己アピールはここまでにしましょうか。学園アイドル決定戦第一回戦はここまでです」


 なんとか場を乗り切ったドクターKに温かい拍手が送られる。良崎以外は手を振ったりとそこそこに行動にアクセントをつけながら退場していく。良崎は今のところ、退場するのが精いっぱいだろう。


「さぁ、いかがだったでしょうか学園アイドル決定戦第一回戦! 四人ともとても個性豊かで魅力的でしたねぇ。第二回戦は午後1時から! アイドルたちはどんな姿を見せてくれるのでしょうか。次回も、お楽しみにぃ!」


 …ん? 今、なんかとてもレアなものを聞いた気分だぞ。なんというか、デジャヴというか、いつも心にあったような。「さぁ、いかがだったでしょうか」「お楽しみにぃ!」というフレーズが、何故か耳に馴染む。芸能人を生で見たような気分だ。


「やはり観客が少ないっていうのはさびしいですね。やっぱり、朝8時っていう時間が悪かったんでしょうか。みんなもまだ忙しいですよね」


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