【あおぐよし 夜に咲く花待つ 午睡よし】第20話 関越リベンジ復路 その1
瀬波温泉は素晴らしい。海を臨む部屋で海の幸を堪能しつつ、ふすまを開けると海に夕日が沈んでゆくのが見えた。建物にも山にも阻まれず、海に映える夕焼けと太陽は徐々に近づき、水平線で触れ合って、ふっとスイッチを切るように黄昏になる。海はこの世で最も平坦だ。その平坦さが、文字通りの日が海に沈む日没を私たちに見せてくれた。初めて見た。素晴らしい。素晴らしいぞ新潟県村上市瀬波温泉、日本海東北自動車道村上瀬波温泉ICより車で11分または、鉄道で羽越本線村上駅下車後バスで10分、北緯38東経139! 見返りナシでいくらでも宣伝できる素晴らしさだ。
露天風呂と室内風呂を何度も行き来しながらそれぞれにゆっくり浸かって過酷な旅の疲れを癒し、今回の旅で最も衝撃的な出来事だった良崎ほっぺにチューを思い出したりしながら、浴衣の帯を締めた。
「一っ風呂浴びたか。よし、行くぞ」
風呂の暖簾をくぐると、ハイジさんが真っ青な顔をして俯いている小林氏を従えて仁王立ちしていた。ハイジさんは浴衣を着てはいるが、ホテルのものではない。ハイジさんが普段着ている藍色の浴衣、そして陣内家の家紋入りの羽織。
なんで防寒対策してるんだお前。まるでこれから寒い思いをするかのような恰好じゃあないか! まるで、新潟の夜の海岸は冷えるとでも言いたげな恰好じゃあないか!
「なにを」
「関越リベンジ復路、天国地獄決定戦、夜釣りの陣の開会を、ここに宣言する」
ハイジさんが胸を張り、声高に宣言する。
「陣内がバカだぁ!」
あの小林氏でさえもハイジさんを陣内呼ばわりするほど、私と小林氏は激しくハイジさんを糾弾するが梨の礫、ハイジさんには全く通じない。と、いうかさっきのことがあるからもう「陣内がバカだ」はほんのりスウィートな響きがしてしまう。良崎が悪い。あとハイジ。
「忘れたんですか、対決大学一回戦を。あの泥仕合を忘れたとは言わせませんよ、というか陣内さんは一人でサボって魚食ってたんでしたね」
小林氏も頑張ってはいるが、どうも歯切れが悪い。良崎のハイジさんへの弾劾の才能は一級品だったのだと改めて思い知る。というか、今は良崎とハイジのことは考えたくもない。赤い糸は掴めないのなら見ないほうがいい。スウィートなものを目の当たりにしてしまうと、自分にも可能性はあるのではないかと無駄な希望を持ってしまい、セットで絶望もついてくるので…………俺はなんてネガティブで無力なんだ…………殺しても罪に問われない人間とかその辺にいねぇかな。
「今回は山ほど釣れるから。よし、全員車に乗り込めぇい!」
だからハイジさんはさっきの食事で一滴も酒飲んでなかったのか!
というか本当に良崎がいないと誰もハイジさんを追及できない。我々は暴君ハイジに言われるがまま、しこたま飲んだ小林氏も『アンティーク水原私物8号機』の後部シートで顔を掌で覆って「具合悪ぃ」と泣き言を漏らす体たらくだ。
(メニュー画面から特典映像を選ぶと副音声でオーディオコメンテータリーが聴けます)
サビキ釣りをご存じだろうか。
ファミリー向けの最も敷居の低い釣りであると言っても過言ではない魚釣りの一つである。至ってシンプルだ。エサとなるオキアミを小さな籠ないしは網に入れ、蒔き餌にする。オキアミを模したフェイクのついた釣り針を海に垂らせば、魚たちは針をオキアミと勘違いをして食いつくのだ。そして糸一本につき、5つほどの針がついているのだから飽きるほどに魚が釣れる。私たちが今やっているのはそのサビキ釣りである。
「よし、こばやっちゃんダブル! ダブルは行進あり!」
「イエス! お茶の間のみなさんこんばんは、小林桜でございますぅ~就職活動~したくない!」
小林氏のあまりにも赤裸々な歌詞と行進にあっはっはと私も腹を抱えて大笑いしてしまう。小林氏も私も夜釣りで酒がもうだいぶ入っているのだ、箸が転んでも面白い。意外に楽しいぞ、関越リベンジ天国地獄決定戦。新潟に突入してからの関越リベンジ、楽しすぎる。
「こばやっちゃんは、これで24ポイント」
小林氏もニッコニコしながらクーラーボックスに小アジを放り込む。すでにクーラーボックスは満員、そろそろどうにかせねばなるまい。ちなみに私は19ポイント、ハイジさんは31ポイント。すでに70匹を越えるアジを釣り上げている。
しかし、我々は食べ物を粗末にはしない。幸いにも良崎が川越バーベキューの際に秘密裏に購入したカセットコンロとフライパンがあるので、片っ端から食っている。我々はホテルに続き、今夜二度目の満腹を迎えている。
「いやぁ~星がきれいだ。北斗七星がよく見える。その脇で輝く小さなあの星までも…………」
「あ、それ僕にも見えますよ」
「偶然ですねぇ、僕もです」
「俺たちはみんな死兆星を見てるんだ」
また全員でアホのように笑う。ちょっと楽しすぎるぞ。
「あ、こばやっちゃんまたダブルだ! 行進できるぞ!」
「お、面接官の皆の衆~小林桜でございますぅ~大学在籍×年、××歳ではありますが、まだまだフレッシュ学生ですぅ!」
「あっはははは!」
「いや、でもちょっと柳さんのところに就職できないものかと。昨日はリーベルトさんアルバムの編集を柳さんのところで夜通しやったもので」
だからいなかったのか。
「おぉ、いいじゃない。ひふみんのところはね、みんないいヤツなんだ。俺はバイトしてたことあるからよく知ってるんだよ。木村蛍だけは許せねぇクズ野郎だけどな、みんないいヤツだ。あ、日昇だ。終了~」
『関越リベンジ復路、天国地獄決定戦、夜釣りの陣』終了。
「じゃあ、結果発表。まず、曾根崎。19ポイント。こばやっちゃん、26ポイント。俺、31ポイント。罰ゲームは曾根崎」
ちなみに今回の決戦の優勝の報酬は皆等しく『アンティーク水原私物8号機』で水原さんと二人っきりであり、二位以下はそれぞれガンセキオープンで野郎二人旅ということになる。
この時点で私の関越自動車道東京への道は小林氏の運転するガンセキオープン助手席が決定した。
【自己批判】
お笑い番組を観て勉強にしようとして楽しく見てます。今年はビートたけし、爆笑問題、ウーマンラッシュアワーを観ていて、ウーマンラッシュアワーのよくしゃべる方は爆笑問題太田になりたくて、爆問太田はたけしになりたいんだな、というのがわかった。年末のネタ番組では毎年『検索ちゃん』の復活が各芸人が新ネタや普段やらないネタの試しをリラックスしながらやっているのでとても楽しく、今年はサンドイッチマンが禁断のモノマネ、オードリーが若林ボケ、オリラジが訳わかんないけどなんかスゴくなった。まぁ要するに爆笑問題が好きなのです。




