【あおぐよし 夜に咲く花待つ 午睡よし】第14話 関越リベンジ その12
やぁ、ドクターKだ。ここまでの関越リベンジのおさらい。
リーベルトさんの気分転換ドッキリの手伝いと嘘をついて陣内くんは水原さんと曾根崎くんを車に乗せ、リーベルトさんを拉致。そこで実は気分転換ドッキリではなく、五月に涙を呑んで敗北を認めた関越自動車道にリベンジする関越リベンジを敢行することを宣言したね。ここで水原と曾根崎くんもやっと自分たちが拉致されたことに気付いたようだよ。そこからはきつくて長い渋滞につかまりつつも川越を満喫。そこで陣内くんにかわってハンドルを握ったリーベルトさんが謀反を起こし、肉と麩菓子だけしかない焼肉で反撃に出る。これは陣内くんも応えたね。そして再び関越道に乗ると渋滞は緩和。しかし、曾根崎くんとリーベルトさんが居眠りをしていたうちに陣内くんは高速道路を降り、群馬県の赤城クローネンベルクに立ち寄っていた。そしてせっかくのいいペースを台無しにした陣内くんに怒り心頭リーベルトさんのすさまじい罵詈雑言がさく裂! さぁ、関越リベンジは、無事ゴールにたどり着くことが出来るのだろうか!?
一通り毒を吐いて気分が楽になったのか、良崎も静かになって我々五人はドイツ村の門をくぐった。確かに、いい素晴らしい風景と、実際に体験したことはないが本場ドイツさながらの雰囲気。こんな状況でなければ、立ち寄って楽しむこともできただろう。
「羊の赤ちゃんが生まれました。名前を考えてあげてください、だって」
良崎が動物ふれあい広場の応募用紙を手に取り、読み上げる。
「イブラヒモビッチ」
ぼそっと良崎が呟いた子羊にあるまじき逞しすぎる名前に小林氏が笑い声をあげた。
「5ポイント」
良崎 ― 5ポイント
「悪い気はしないですね」
と、まんざらでもないようだが良崎には前科がある。さっき、川越で乗り気なった良崎の我々に対する報復は筆舌に尽くしがたいものがあった。はじけ飛ぶ霜降り肉の脂、水分を奪い取られた口の中、肉に飽きても許された食べ物は麩菓子だけである。今度も良崎はこうやって気を許したふりをしてまたなにかすさまじい爆弾を作り上げているかもしれないぞ。
「おい水銀曾根崎リーベルトー。なんでも好きなもの買ってやるぞー」
バブル期のタクシー呼びとめのように万札をヒラヒラと頭の上で翻しながらハイジさんが宣言しながら売店への歩みを進める。
「なんでもですか!」
良崎がおおげさな反応を返す。なんだ、楽しんでるじゃないか赤城クローネンベルク。
「本当になんでもいいんですかハイジさん!」
水原さんも大声を出して。楽しそうじゃないか。
「本当に何でもいいんですね?」
と念を押す二人にハイジさんは得意げな笑みを浮かべた。
「いいぜ。だって俺んち、金持ちだもん」
「じゃあビール!」
「絶対にビールです!」
良崎の欲しいもの→ビール
水原さんの欲しいもの→ビール
私は二人がそれほどまでに強くビールを欲する意図がわかったが、まだわからないのか二人の勢いにハイジさんはさえ呆気にとられている。
「いや、乙女二人がそんなに勢いよくビールビールって、いったいどうした。…………あ」
ハイジさんも何かに気付いたらしい。
良崎の欲しいもの→ビール ※ビールを飲んだら運転できない。
水原さんの欲しいもの→ビール ※ビールを飲んだら運転できない。
良崎と水原さん運転できない→ ※ハイジさんがずっと運転。
「じゃ、じゃ、じゃ、じゃあ、俺もビール!」
全員ビール! →全員運転できない →ここをキャンプ地とされる。
「それだけは絶対にダメですけど、だからと言ってわたしはビールを譲りませんよ」
「今回ばかりはわたしも譲れません」
と頑なな姿勢を見せる良崎と、普段の温厚さと自己犠牲の精神をかなぐり捨てて強硬姿勢の水原さん。そういえば私と良崎は後部座席にて休息をとったが、水原さんは拉致されてからずっと運転席でナビゲートしていたというか、渋滞に耐えていたというか。休みたい気持ちは強いのだろう。
「俺だって…………」
「ハイジさん、それが裁きじゃないですか? 人を三人も騙くらかして真夏の渋滞関越道に拉致した罪への裁きですよ。謹んでこの罰を受けるべきですよ」
「三人飲んだら誰が運転するんだよ…………。わかった。あのガチャガチャで決めよう」
と眉間に皺を寄せた渋い顔のハイジさんは『ラベンダーバットマンガチャガチャ』の機械を指差した。
「ビールの一位指名が重複したため、『ガチャガチャカジノ』にて勝利を収めた者がビールへの交渉権を獲得するものとする!」
さぁ、いかがだったでしょうか関越リベンジ第12夜! ビールを飲めるのは誰になるんでしょうか次回もお楽しみにぃ!




