【あおぐよし 夜に咲く花待つ 午睡よし】第7話 関越リベンジ その5
やぁ、ドクターKこと梶井基九次郎だ。ここまでのおさらい。
「マイルドですね」「海ってどこだ」「ヒゲメガネ」「関越リベンジ」「命を削りなさいよ」「肉塊になっちゃう」「青春かたみち切符」「俺が悪かった!」
「一回、高速を降りるから」
車線を変更し、ハイジさんがするっと渋滞から抜け出す。
「どこですか」
「川越。まず、川越で買い出しをする。食糧とか、衣類とか必要物資を」
そうだろう。ほぼ手ぶら、というか私も水原さんもまさかあのまま旅に出るとは思っていなかったから荷物は部室に置いたまま、手ぶらだ。これでは困る。
「今回も、一人頭10万まで! 必要経費を出す」
「今回もまた太っ腹ですね!」
『この作品は 歴史の素敵な思い出アンティークと、通も唸らせるブレンドコーヒー、誰もがとろけるスイーツが自慢のアンティーク水原の提供でお送りいたします』
『期間限定! かき氷始めました』
アクセス:東京メトロ日比谷線・都営浅草線人形町駅 A3出口から徒歩五分 水曜定休日 10:00~18:00
「よし。改めて今回の旅の目標を発表する」
昔ながらの家屋が軒を連ね、名所『時の鐘』の眼下に広がる町並みは小江戸と呼ばれる。快晴の空の下、今日も川越には観光客や学生たちが行き、活気に満ちている。
「関越リベンジ以外にですか」
菓子屋横丁まですぐ、という公園で小林氏がまるで急に新潟行きを告げられたかのような絶望感と不安さが満ちた表情でカメラを構え、我々に向けている。
「いや、基本的には関越リベンジの補足なんだけど、あの先日の『対決大学』。あれが実はものすごい反響があってな」
『対決大学』。サークルの会員が足りないから、その足りない分を大学のPRで補うという力技の企画だ。全十五回戦を大学の各所を紹介しながら行うという趣向で、私も良崎もフィジカルとメンタルで大きなダメージを受けた。
「ほら、耳を澄ませてくださぁい。すごく楽しそうだ。是非またあの四人でやってるところを見せてください、という声が、チラホラ聞こえてきましたよぉ。ほーぅ、ならば、やってやろう。しかぁーし、今回は大学を飛び出すぞ。今回は関越自動車道にリベンジ、ついでに関越自動車道の名所をPRして回ろう。楽しい夏の思い出作ってやるぞ! さぁ、つらいけどがんばろう」
「た、対決ですか」
耐久魚取り、雑巾50m、100kgのそうめん、5kgのかき氷、片眉の剃り落し……。思い出すだけでも凄惨、悲惨という言葉に尽きる、最終的に金一封のMVP副賞があるという言葉につられたが、そうでもなければもう二度とやれないだろう。「やりきった」という達成感がなかったのかと問われればあったと言わざるを得ないが、達成感に上下はなくとももっと充実した達成感はあるし、得た達成感も辛さと天秤にかければはるかに軽い。
「対決はしないよ。でもあっちこっち寄り道をしていかなきゃいけないかも。楽しむためにな。やっぱりね」
「ん? いいんじゃないですか? 急なだけで、簡単に言うと新潟まで観光地を楽しんでいこうってことですよね?」
もう急だったということは許したのか、良崎がこの旅のぬるい内容には拍子抜けのようだ。
「簡単に言うとな。ゴールは関越自動車道終点、新潟県長岡市を経由して新潟県村上市瀬波温泉! 豪華ディナーと温泉をもってこの旅を終える」
「いいじゃないですか、それ魅力!」
「だろぅ。俺たちはね、ギスギスしていちゃいけないよ。俺たちは大学生でしかも同じサークルだ」
「そうですよ。いがみ合っているわけじゃあないんですよ。本当は仲が良いんですよってところを証明しないといけないですから。力を合わせて! 関越リベンジ!」
良崎が嬉しそうに声と拳をあげた。温泉、豪華ディナー……!
少なくとも一泊することは決定済みか……!
「それでは! 関越リベンジ、本格的にプレイボール」
ハイジさんが力強くシャウトしたが、プレイボールと言われても何をすればいいのかわからない。車で新潟を目指すのだろう。さっさと乗ればいいじゃないか、車に。




