【笹の葉に 結ぶ短冊 おもうもの】第14話 期末だヨ! たくさん集合! 最終夜
やぁ。この陣内君の後輩へのドッキリがシナリオ通りに進んだら高氏院サイドの三番手として登場する予定だった『ドクターK』こと梶井基九次郎、家業は医者だ。そんなドクターKのここまでのおさらいだ!
陣内君にしびれを切らし、夏目君が呼んだのはなんと本来敵であるはずの『童帝』参座くん! これには陣内君も驚きで、ついに部屋から出てきて童帝くんと向き合った! しかし戦いの果てに起きたのは、本来忌み嫌われるはずの童帝くんへの励ましの声と陣内君への非難の声! 陣内君のシナリオは儚くも崩れてしまったね。陣内くん対童帝くん、その決着は見逃せないよ!
「……うわ、僕、寝てましたか?」
「うん。立ったまま。なかなか器用なのね曾根崎くん」
水原さんはそう言いつつも気持ちは完全にハイジさんvs童帝に持って行かれているようだ。
「今がやっと面白くなってきたのに寝るなんてどういう頭してるのよ」
良崎。
「うぉら!」
童帝の突き出した槍を躱し、童帝の足を払うハイジさん。力量の差は明らかだ。それでも童帝は諦めない。
「くっ、ならば」
両手を肩の高さで大きく左右に開き、手首を直角に曲げて上向きにする童貞。
「『天翔十字鳳』!」
「ヘっ、バーカ。『天翔十字鳳』は相手の力量は自分と対等とみなした時に使う技! お前と俺の力量が対等じゃねぇのは最初っから分かってただろう」
ハイジさんがDENSETSUがウイグルに使ったゴムバチンを童帝の頬に打つ。
童帝はあまりの苦痛に苦悶の声を漏らして膝をついた。
「もう、見てられない!」
良崎が駆け出す。
「よせ良崎! ハイジさんには敵わない!」
「敵わなくてもいい! 童帝、助けてあげるわ!」
良崎に触発されたかのように、そこにいた全員が童帝を一人で逝かせやしないと動き出す。
「フン、下郎共め」
「喰らえ!」
良崎が何かをハイジさんに投げつける。
「なんだ? こんなもん当たっても痛くもかゆくも……」
ハイジさんの表情が硬直した。
「こっちを見ろハイジさん!」
どこに持っていたのか、『コアラのマーチ』をばりばり噛み砕く良崎。
「マジで……それはやめてくれって言ったじゃん……」
ハイジさんも童帝と同じ高さまで頭を垂れる。
「そしてこれはハイジさんから教わった技です。『本気でやばい急所3たま連撃!』」
それぞれが「あたま」、「めだま」、「きんたま」の3たま急所を捉えた三連撃! ハイジさんはついに立てなくなり、倒れたまま身を縮こまらせてしくしくと泣いている。
「フッ、まさかこんな結末になるとはな」
頬にみみず腫れを浮かばせ、満身創痍で立ち上がる童帝。しかし、その足はすでにあの花道、その先にあるであろう本拠地、学生寮に向かっている。
「童帝さん、わたし達のために、戦ってくれてありがとう」
良崎が行く手を阻む。
「くぅっ」
童帝はエタノールと塩素のにおいにまとわりつかせた体をくの字に折り、歯を食いしばって尻ポケットからスマホを取り出した。
「……メアド、教えてもらえませんか」
ゆでダコのような真っ赤な顔で、童帝が再び、傷つくことは承知の上で光の中に足を踏み入れようとしている。
「もちろんです」
良崎もそれに満面の笑みで応じる。
「メールなら潔癖症も関係ありませんしね。これからも、すばらしい童貞として、童貞たちの心のよりどころになってあげてください! 童帝の役は、あなたにしかできません!」
いきなりダークサイドに落とされたぞ。
そのまま童帝は帰路についた。無意識のうちに、誰もが英雄の背中に惜しみない拍手と感謝の言葉を送った。
「さて、後始末の時間だ」
夏目氏がハイジさんを縛り上げ、凍死してしまうような視線を突き刺す。
「陣内の妹、あの古書の力があればこの事件で壊れてしまったものの修理と負傷者の治療は出来るか?」
「口が一丁前だと、偉そうな他力本願も随分尤もらしく聞こえるんだなぁ」
小林氏がメガネを拾い上げ、二子さんに手渡す。二子さんは悪態をつきつつもメガネをかけた。
「えぇ、すぐに」
『萬斎抄』を開き、祈る二子さん。そして小声で何かつぶやくと、こんどはまばゆい青い閃光につつまれ、周囲の様子がよく見えるようになると、そこにはいつもと変わらないサークル棟前。
「二子、お前は何をやってんだよ」
「これがベストかな、と思っただけですよ」
「いや、それじゃあ俺もやりすぎたって反省してるって言っても誰にも伝わらなくなっちまうじゃないか」
「お兄様がせっかく反省したのに、謝る相手すらいない。そういう罰を、わたしなりにお兄様に課したつもりです。今回は本当にやりすぎです」
「なんか腑に落ちねぇなぁ」
とハイジさん。
「何をしたんですか?」
私は状況がつかめず、ハイジさんに問う。
「何って、二子は今回のことを全部元通りにしちまったんだよ。勿論、お前らの記憶もだ」
「……記憶?」
「ほら、言わんこっちゃない。おぃ、水銀リーベルト曾根崎。こいつ、俺の妹の二子だ」
「はじめまして」
なんでここにハイジさんの妹さんが?
「はじめまして、曾根崎忠です」
「水原銀子です」
「良崎アンナです」
と、それぞれハイジさんの妹と握手を交わす。
「っていうか、なんでハイジさん縛られてるんですか?」
「ちょっと脱出マジックの練習でな。ミスっちまった。解いてくれ」
水原さんが結び目を探し、シュルリとほどく。
「あれ? わたし、なんでこんなところにいるんでしたっけ?」
と水原さん。
「それに、あの仮設テントとかは……」
「あぁ、隠してたわけじゃないんだけど、俺は実は『高氏公風院』っていう名家出身で構成される集まりの会員なんだ。『誇り高き高等遊民の血族・陣内家』。今日はその『高氏院』と学生寮の『性器待つ』の連中の親睦を深めるために定期打ち上げパーティ開こうと思ってな」
すっくと立ち上がるハイジさん。
「おーい夏目ー、今回の費用が全部俺が持つぜー。金に糸目点けずに肉でも魚でも何でも買ってきていいぞ! 志賀、パーティの盛り上がるかはお前次第だ。名DJっぷりを見せてやれ!」
と大きな声を出す。向こうでは夏目、と呼ばれた人物がきびきびと動いて指示を出し、着々とパーティの準備が進んでいる。
「つぅ訳で二子、十分に反省した。もう二度とこんなことはしない」
「当たり前です。それにしても、相変わらず口がお上手ですね」
「お前も食ってくだろ?」
「よろしいのですか?」
「もちろんだ。じゃ、夏目を手伝ってやるとするかぁ」
伸びをして仮設テントに向かうハイジさん。
まだ状況がつかめずにぽかんとしている私達に二子さんは
「またこれからも、兄をよろしくお願いしますね。ふふっ、最近、兄は学校が楽しくてしょうがないって。きっと皆さんのおかげですね」
と嬉しそうなほほえみを見せ、ハイジさんの後を追った。
その後のパーティでは、今まで同じ大学にいたとは思えないような巨体の男たちやラッパーたちと共に大いに盛り上がり、期末の打ち上げにはもってこいの楽しいパーティになった。夏休みに入ったら、後期まで彼らとは会えないのかぁ、という、寂しさを少し心に残しつつ。
主演・企画・脚本 陣内一葉
監督 小林桜
出演
陣内一葉 ‐ 陣内一葉
小林桜 ‐ 小林桜
水原銀子 ‐ 水原銀子
良崎=リーベルト・アンナ ‐ 良崎=リーベルト・アンナ
曾根崎忠 ‐ 曾根崎忠
夏目猿之助 ‐ 夏目猿之助
陣内二子 ‐ 陣内二子(特別出演)
‐第一回戦‐
ジード ‐ 自慰度
水着の美女 ‐ プロダクション黄泉の国
‐第二回戦‐
DENSETSU ‐ 志賀尚適
ウイグル ‐ 火山虎鵜射狂
‐最終決戦‐
童帝 ‐ 参座嘉文(特別出演)
人外の被り物をした配下 ‐ 超バクのシュウ
‐幻の三回戦‐
ドクターK ‐ 梶井基九次郎
消耗品 ‐ 須太郎、捨勇、凛知恵井、牢久、宇井栗鼠、手話流常雅、盤駄武、蘭紅蓮
協力 ‐ 学生寮 性器待つ
提供 ‐ 陣内文庫、東京柳一二三事務所、小説家になろう
終
【自己批判】
ドクターK初登場。これっきりの使い捨ての予定が使い勝手の良さから前枠後枠担当に。




