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うぉくのふぉそみつ リターンズ  作者: ムッシュ志乃
7月編
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【笹の葉に 結ぶ短冊 おもうもの】第13話 期末だヨ! たくさん集合! その12

「童帝! がんばって! そんなやつもうやっちゃえ!」


 良崎が両の掌をメガホンのように顔の前で構え、渾身の力で叫ぶ。応援の出所が女子だったためか、童帝は驚いて引き攣った真っ赤な顔を良崎に向け、斜め下に視線をずらし恥ずかしそうに俯いている。


「そうです童帝! さっきまでハイジさんはあなたにビビッていたんだ! 童帝ならやれます!」


 私も負けじと声を張り上げる。童帝、もうあなたしかいないんだ! あの暴王ハイジさんを止められるのは!


「てめぇら、まだ懲りていないようだな」


 青筋を浮き上がらせ、私達に凶悪な表情を見せつけるハイジさん。


「童帝さん! 兄の『萬斎抄』は奪いました! もう構いません! ご友人の仇を取ってください!」


 部室の前では、この間に神業の速さ部室に忍び込み、『萬斎抄』を奪った二子さんが声を張り上げている。


「……あ、ありがとうございます」


 女性からの激励で照れながらぼそぼそとナメクジのような声で感謝する童帝。


「二子! それを返すんだ!」


「お兄様、少し痛い目に遭ってください」


 さっきまでの二子さんとはもう違う。兄のためではなく、自分のため、そして正義と平和のために動いている。


「返せ!」


 ハイジさんがピシュンで消えるよりも


「地獄は今日もサディスティックワンダーランド! 『ホオズキノレイテツ』!」


 二子さんが呪文を唱える方が早かった。ハイジさんは移動先でいきなり二子さんに金棒で弾かれて柵の外に投げ出され、地面に激突よりも先に空中でピシュンし、息を切らして童帝の前に現れた。前門の童帝、後門の鬼神妹。逃げ場は多分、ない。

 ハイジさんは追い詰められている。『萬斎抄』もない。しかし、確かに存在感はヤバかったが本当に童帝でハイジさんに勝てるのだろうか。『萬斎抄』なしでもハイジさんにはあの孫悟飯(青年期)の得意技コマンドがある。もちろん、瞬間移動もだ。一方、童帝はオーラはすごいものの戦闘力は未知数、さらに親しい友人の顔を触れるにもゴム手袋が必要なくらいの重度の潔癖症だ。ハイジさんを素手で殴れるのか?


「童帝……童帝、童帝! 童帝!」


 気がつけば高氏院も性器待つもやじ馬も全員が童帝のスタンディングオベーションだ。


「童帝ー! 邪神や陣内から俺達の家族を守ってくれー!」


「もうお前ならやれる! 童帝!」


「頼りにしてるぜ! 童帝ぇー!」


 その歓声の中心で、童帝は初めて女性に優しくされて照れているのかうつむいている。しかし、口元には気持ちの悪い照れ笑いが浮かんだままだ。


「よし! かかってこい陣な……!?」


 ピシュン! 今度の瞬間移動では部室からそうめんバズーカを持ってきたようだ。しかしその際に『ホオズキノレイテツ』状態の二子さんに攻撃されたのか足を引きずっている.


「望むところだぜ、童帝よぉ」


 ぼぅふぅ

 至近距離からそうめんバズーカの直撃を受けた童帝は10mほど吹き飛び、そうめんにまみれたまま仰向けに倒れて指先一つも動かない。


「ハーハッハッハ! ざまぁ見やがれ! 次は誰だ!? 夏目か? それともDENSETSUか?」


「く……驕るな、よ……陣内!」


 ハイジさんからあれだけのダメージを受けたというのに、童帝の配下はまだ生きている。


「童帝さまは、決して、お前なんかに……負けはしない!」


「フハハハハ! 状況がわからんのか! もう童帝は葬ってやったぜ!」


 ハイジさんが童帝の配下の涙ぐましい反撃を邪悪な高笑いで吹き飛ばすと、パンッ! と小林氏が手を叩いた。その双眸はハイジさんをしっかりと捉えているが、いつのも小林さんではない。もうハイジさんのことも裏切っている。もうハイジさんの味方は誰もいない。あの小林氏でさえも、ハイジさんの暴虐ぶりに正義感を突き動かされているのだ。

 パンッ! の音で一度、場の空気は素の状態に戻る。小林氏はその素の状態の空気の中でバラバラになった個人の意思と行動を統一するように、手拍子を始めた。


「へい、ひっかーぬ! こっびーぬ! ひっかーぬ! こっびーぬ!」


「ひっかーぬ! こっびーぬ! ひっかーぬ! こっびーぬ!」


 ハイジさんを取り囲む全員が小林氏の音頭に続き、手拍子と言葉を続ける。


「ひっかーぬ! こっびーぬ! ひっかーぬ! こっびーぬ!」


 もちろん、私達もだ。立ち上がれ童帝! 甦れ、童帝!

 その場に居合わせた全員が、自分の気持ちと将来を託し、声となって童帝の体に降り注がせる。我々の応援が、立ち上がれないほどのダメージを癒す薬となれ! と童帝に捧げられる。


「ひっかーぬ! こっびーぬ! ひっかーぬ! こっびーぬ!」


「か、か、か…省みぬ!」


 相槌を打つように怒鳴り、倒れていた童帝が決死の表情で勇ましく立ち上がり、まとわりつくそうめんを逞しく払う。


「いいか、陣内。貴様がどれだけの力を持っていようと! 平和を望むこの力の前にはそんなものはちっぽけなものだ! 童帝はしょせん諦めた者への蔑称、だが諦めは恋愛に関したものだけだ! 俺はそれ以外に何も諦めるつもりはない! 俺と同じく諦めないこの者達の声が、何度でも俺を立ちあがらせよう!」


 童帝ぇええ!!!


「童帝かっこいいぃぇえええーーー!!!!!」


【自己批判】

童帝はマスカラスマンになれる素質があったのに、女子としゃべれないという弱点が大きすぎて出世街道から外れてしまった。しかしいいキャラなのでどこかでまた使いたい。

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