【笹の葉に 結ぶ短冊 おもうもの】第12話 期末だヨ! たくさん集合! その11
「ついに出てきたかドブネズミの親玉の童貞野郎が!」
眉間に蛇腹のような皺を寄せ、怒りの形相のハイジさんが童帝を指さしてあいさつ代わりとばかりに言い放つ。
「陣内……夏目から聞いたぞ。お前、礼が間宮とかいう女子のことが好きだと知った時に一芝居打ったそうだな」
対照的な涼しい表情の童帝。
「それがどうした!」
バキッと板が割れるような音が鳴り、童帝の表情も怒りに顔を歪ませる。
「レイは……マミヤとやらを好いていたかもしれん! だが、レイはそんなことを望んではいなかった! レイは……レイは自分ではどうすることも出来ぬ叶わぬ恋と知っていたからこそ、愛する人は遠くで見守り、彼女の恋を応援するだけでいいと決めていた! 陣内! 貴様はそんな礼の気持ちと決意を踏みにじった!」
童帝の周囲だけ、空気ごと熱気さえ吹き飛ぶような錯覚を受ける。童帝は配下の人外の被り物をした男から、180cmはあろうかという園芸用の支柱を受け取り槍のよう構え、三輪バイクから降りる。
「その報われぬ愛のために、阿修羅となって戦おう!」
「童帝さま、相手は手強いです。どうかご無事で」
主を案じる腹心に「フン、貴様に心配されるほど堕ちてはおらぬ」と答える童帝。童帝の方が人望ある善側の人間のような気がするのだが?
「みなさぁ~ん、この童帝はその昔、『下等な生物ほど数は多い。それは人間という生物にも言えることだ。故にヤンキーは子だくさん』と力説して童貞の自分を正当化していた男ですぜ!」
「俺はそんなことを言ってはいない! 俺はただ諦めると言う勇気で誰も傷つけず自らも傷つかないことがあると言っただけ! 貴様はレイとマミヤの間を取り持ったつもりだろう、その結果礼は失恋に傷つき傷心旅行で散財だぞ!」
「勝手なことを言うな童貞野郎! 人の恋を応援して何が悪い! 大体、お前と違ってまだレイくんは取り返しがつくんだ! てめぇみてぇな一生子供もつくらねぇ、何もかも諦めたってバカ野郎が老いた時に介護するのは誰だと思ってんだ! 俺たちの子供世代だろうが! 子供もつくらず、働けるうちは納税してりゃ老後は誰かがどうにかしてくれると思ったら大間違いだぞ!」
童帝はヤバいんじゃないのかよ。出てきてから刺激してばかりじゃないか!
「黙れ黙れ黙れ! お前こそ子供を作ったわけでもなし、鬼の首を取ったように言うんじゃない! そもそも貴様は税金を納めているのか! 何が納税だ、何が介護だ! 邪神復活だかオカルトごっこだか知らないが、ふざけている間に貴様もやるべきことがあるのではないのか! 陣内! 大人になれ!」
なぁ、童帝。本気出そう。結構いいことを言ってるよ。その気になればモテると思いますよ。
「あー、お前は俺を怒らせた。もう合コンだ! いや、貴様の寮で乱交だ!」
「くっ。やれっ! シュウ!」
お前……妹が見てるんだろ……。
童帝が左手を振り上げると、人外の被り物をした配下が水鉄砲を構えた。
「汚物は塩素で消毒だァ~!」
「甘ぇ!」
ハイジさんの強く踏み込んだ蹴りが人外の被り物をした配下の顎を捉えている。
「くたばれ」
ピシュン、とそのまま人外の被り物をした配下の頭を捉え、一瞬消え去ったかと思うとすぐにピシュンの音と同時にハイジさんだけが戻る。
「貴様! 俺の部下をどこへやった!」
バキャン!
童帝のジャイアント三輪車の装飾品が砲撃でも受けたかのように砕け散った。
「貴様の頭上約100mに。あぁーあ、童帝にバイク弁償しなくちゃならないなぁ。あの雑魚、明日から借金生活かぁ?」
「おい、しっかりしろ! 俺はバイクのことなど気にしていないぞ!」
潔癖症だからかゴム手袋をはめ、バイクの破片に埋もれている配下の頬を叩く童帝。
「だ、大丈夫です。私のことは気にしないで……ください……どうか、陣内を……討ってくだ……さい……」
「ダメだ! しっかりしろ!」
童帝、いいやつじゃないか! というかハイジさん怖ぇー! 蹴っただけじゃ物足りず、丸腰でのスカイダイビング強要! 瞬間移動の悪用! ハイジさんのこのドッキリ茶番劇の目的が私達を反省させるためではなく、自らの恐怖を知らしめるためだったとするならば、とんでもない効果を成果を上げているぞ!
※演劇を知らずに演劇サークルに所属する主人公を書いてる僕の、この春大学に入った弟が入ることを検討しているサークルの一つに演劇サークルがあるそうだ。因果なものだ。
他の候補はアメリカンフットボールサークルだそうだ。
【自己批判】
↑のあとがきは当時のもの。結局ブラザーは帰宅部になりました。




