【笹の葉に 結ぶ短冊 おもうもの】第11話 期末だヨ! たくさん集合! その10
「昼休憩行きますか」
良崎が欠伸をしながら席を立つ。夏目氏が良崎を蛇のような目で睨み付けるが、もう良崎には少しも効いていないようだ。好機と捉えて私も席を立つ。水原さんも脱出チャンスですよと視線を送るがまだ膝の上に手を置いて反省を続けている。
「二子さんも一緒に行きますか?」
「よろしいんですか?」
「ハイジさんに乗っ取られないんならね」
時間を潰せるようにと少し遠出をしてカレーのおいしい喫茶店で、昼食後もコーヒーで繋ぎつつドラゴンボールを熟読。3時間ほど経って現場に戻ると、なんのことはない。我々が出発した時と何も変わりはない。それもそうだろう。我々を戒めるための行事なのだ。我々がいなければ進行するはずもなかろう。むしろ3時間の放置にも待ちの姿勢を貫くということは、この戒めの主導権はもう我々が握ったと言っても過言ではないだろう。いっそのこと家に帰ってしまえばよかった。そして後期まで学校には来ない。邪神が本当に復活してしまったらそれはそれでしょうがない。
ドドドドドド……
ほら、私達が帰って来た途端に次の展開じゃないか。
「ヒャッハー! どけどけぇ~! 童帝さまのお通りだぁ~!!!」
「二子さん、こんな人間ばかりの大学じゃないんですよ」
良崎。
「でも、この今日の大学は最低だ……。二子さん、今日は最低だよ……」
「大丈夫ですよ。わたし、童顔ですけどもう22歳ですから」
しゃがみこむ良崎の方にそっと手を乗せる二子さん。私だってもうしゃがみたい。しかし、しゃがもうとした瞬間に異臭に鼻を突かれ、大きくのけぞってしまった。
「なんだ、このにおい!」
「……アルコール?」
「エタノールのにおい!?」
「ヒャッハー! 汚物は塩素で消毒だァー!」
ジード、ウイグルと同じ花道から、人外の者のかぶりものをした運転手つきの禍々しい大型三輪バイクに乗った何かがやってくる。そのバイクの上で偉そうに頬杖をついている短髪の男。なぜだかすごい存在感を感じる。今までのジードやウイグルを上回る圧倒的な負の存在感! 夏目氏やDENSETSUでは歯が立たない、ハイジさんクラスの危険度とインパクト! 見た目は普通なのに!
「あれ、結構マジにやばい人じゃないのか? 小林さん」
「説明しよう! 彼は大学在籍7年を数えるマジでやばい人、学生寮『性器待つ』の象徴、参座! 度を越えた潔癖症で人に触れることすらかなわず、もちろんその手で女性に触れたこともなし! 各種消毒液を持ち歩き、愛などいらぬと主張する、これが童貞の極み、『混ぜるな危険』! 童帝だァー!」
ジード、ウイグルと違い、あれくらい見た目に特徴がなければ学内で観ても覚えていないかもしれない。それに本当に7年という信じがたい年数を過ごしているのならばもう気配を消すことなどお茶の子さいさいだろう。なにもかもが疑わしく思えていたが、これは本気で言える。25歳童帝は本当にやばい。
「うっ……」
また二子さんが頭を抱え始める。
「こばやっちゃん! 話が違う、童帝が出てくるなんて俺は聞いてねぇぞ!」
どうやらまたハイジさんが憑りついたようだ。
「僕だって聞いていませんよ!」
「俺が呼んだんだ陣内。貴様は超えてはならない一線を越えた」
目を真っ赤に充血させた夏目氏が言う。
「やはり図っていたな陣内。ただで済むと思うなよ。貴様は大学の全てを敵に回したんだ!」
「おい曾根崎リーベルト! 二子を逃がせ!」
「……また仕込みですか」
ついつい私も疑ってしまう。童帝はマジだろうが、ハイジさんが真剣になればなるほど真実味がなくなるんだ。
「言うことを聞け! 俺は正気に戻った!」
「お前に戻る正気はない!」
童帝の瘴気に当てられてか良崎が二子さんの頬を張る。
「塩素で消毒されるぞ!」
「ふざけてる余裕があるなら、二子さんじゃなく正体の方が出てきてこの場を収めればいいじゃないですか。ハイジさんが終了って言えば、きっと童帝も帰ってくれますよ」
「お前は夏目の顔を見ただろ!」
「だからこそ、ハイジさんが謝るべきなんじゃないですか?」
「よぉーしわかった。今から出て行ってやるから、俺が抜けた後の二子にケガさせるなよ」
ピシュン。
私たちと童帝の間にハイジさんがピシュンのアレをして現れると、童帝のジャイアント三輪車が動くのをやめた。
誇り高き高等遊民の正当な跡継ぎと童帝、天を二つに割るダメなヤツらが睨み合う。
【自己批判】
特にねぇな。




