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うぉくのふぉそみつ リターンズ  作者: ムッシュ志乃
7月編
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【笹の葉に 結ぶ短冊 おもうもの】第8話 期末だヨ! たくさん集合! その7

 二子さんは『萬斎抄』をその場に置き、ジードの棘付き棍棒は持ったままにして手を祈るような形に。どうやら使役の準備は済んだようだ。


「地獄は今日もサディスティックワンダーランド! 『ホオズキノレイテツ』!」


 毒々しい赤の閃光に眩み、一度閉じた目を開けると二子さんの服装がスーツから逆さづりにした鬼灯が描かれた赤と黒を基調とした和服に変わっていた。しかもジードのチープな棘付き棍棒もずっしりとした重量感のある金棒に変化。額からは短い角が一本生えている。メガネを投げ捨て三白眼でサークル棟を睨み付ける姿はさながら鬼だ。


「バ、バカな!」


 夏目氏が立ち上がって目を剥く。あ、そうだった。驚く方が普通の反応だった。


「お兄様! 恥ずかしくないの! いい年をして!」


 まるでお母さんのような正論!


「二子! お前それは流石に汚いぞ! 反則だって親父も言ってただろ!」


 ハイジさんが身を乗り出し、柵に手をかけて怒鳴り声をあげた。夏目氏登場以降、ハイジさんに揺さぶりをかけることに成功している!

 スコッ……

 二子さんが虫でも払うかのように手を振った直後、ハイジさんの額には二子さんの角のように金棒が突き刺さっていた。


「ウチはウチ! ヨソはヨソ! そもそも邪神復活なんてお父様に言われなくても反則でしょうが!」


 正論!


「そもそもわたしが『ホオズキノレイテツ』を使ったこと言いつけるなら必然的にお兄様のしたこともお父様の耳に入ることになりますけど!? お兄様の邪神復活の理由が何かはわかりませんが」


 ……すみません、二子さん。理由は『焼肉屋のメニュー』と『コアラのマーチ』と『チキンラーメン』と『うさぎに切ったリンゴ』と『ふりかけ』と『Lチキ』と『カルビーのポテトチップス』です。


「その結果がお父様からの雷になるのならば今ここで涙を呑むほうが賢明なんじゃないですか!」


 正論! 正論! この正論! かなりハイジさんにもヒットしているだろう。

 しかし、ガザリと粗い麻の布を被せられるようにまたまた目の前が赤に染まり、やっと直視できるようになると二子さんは服装も角も何もかも元に戻っていた。


「そうか、もう時間切れかぁ……」


 それを見ていたハイジさんは犬歯まで見えるほどいびつな形に口を歪ませ、悪どい笑みを浮かべた。二子さんがしまった、という表情をした時にはもう遅かった。

 ピシュンピシュン! 二子さんから奪った『萬斎抄』を弄び、元の場所でハイジさんは加虐的な顔をしている。


「やられた……」


 『演劇サークル』の3人はがっくりと肩を落とした。本当にハイジさんを説得してこの茶番を終わらせるチャンスだったのかもしれないのに、瞬間移動で二子さんの持つ『萬斎抄』を奪われてしまった!


「ハーハッハァ! 残念だった二子! 夏目ならお前を連れてくると思っていたよ。勿論、『萬斎抄』を持ったお前をな! これで俺の元にも『萬斎抄』がある! やっと邪神アマカゲル復活の儀式だ!」


 歯をぐっと食いしばる二子さん。

 ここまでは、全て仕込みの段階だったのだ。邪神復活を宣言したが、実はハイジさんはそのために必要な『萬斎抄』を持っていなかった。しかし、ハイジさんは夏目氏が陣内家ならハイジさんに対抗できるだろうと二子さんを呼ぶ事まで読んでおり、狙い通りハイジさんは二子さんの持つ『萬斎抄』を奪った!

 今までのことが本当にドッキリじゃなかったとしてもこれは本当にまずいぞ! 秘匿大地祇アマカゲル復活まではなくとも、ハイジさんの手に『萬斎抄』が渡ったのでは何が起こるかわからない!


「気を落とさないでください」


 慰めるかのようにゆっくりと歩み寄り、二子さんの肩に手を置く夏目氏。


「触れんじゃねぇよマヌケ野郎」


 どうやら二子さんからはまだ『萬斎抄』で使役した力が抜けていないようだ。


「あれ? まだ効果続いてるんじゃないですか?」


 という良崎の問いに炎天下でDENSETSUvsウイグルの対決開始に備えていたはずの小林氏が答える。


「どうやら続いてるようだね。『ホオズキノレイテツ』の術は地獄の鬼神、ホオズキを自分の体にトレースする技だ。その身体能力、正論による口撃、思考パターン、ドSな性格。しかし、今の二子さんには本来誰もが持っているドSな性格を増長させる効果だけが残ってしまっているようだね。でも確か二子さんはこういった不測の事態に備えて力を抑える特殊なメガネをかけているはずだ。メガネをかければ元に戻るはずだよ」


 と、再び炎天下に戻り、二子さんのメガネを拾い上げ、二子さんに歩みよる。


「メガネ、かけましょう」


「お前がかけろ、火事場泥棒」


 悪態をつきつつも素直にメガネを受け取り、かける。元の表情の二子さんに戻る。


「切り札の『萬斎抄』が奪われてしまいました……」


 がっくりと肩を落とす二子さん。


※この作品はフィクションですが、地獄はあるかもしれません。現世での行いには十分ご注意下さい。



【自己批判】

当時はまだマイナー作品だったのですよ。『鬼灯の冷徹』。

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