【笹の葉に 結ぶ短冊 おもうもの】第6話 期末だヨ! たくさん集合! その5
「触れた! ジード、アウトー!」
ピッ、ピッ、ピーとジャッジ小林氏が長い笛を吹き、試合終了。泥仕合は儚くもジードがうっかり匍匐前進の水着美女に蹴躓き、夏目氏の勝利となった。
勝利を収めたにもかかわらず、夏目氏は少しも喜ぶそぶりを見せずに目隠しを外し、額に青筋を浮き上がらせた。
「陣内! 何の意味があってこんなことをやらせた!」
「まぁまぁ。ジードの手に渡らなかっただけでもいいじゃないですか」
とそれを抑える小林氏。水を得た魚のように動き回り、笑みが絶えない。やっぱりこれ、ハイジさんのドッキリだろ。それも、仕掛け人だったはずの夏目さんやジードまで巻き込んだ二重ドッキリ。仕掛け人はハイジさんと小林氏だけになってしまったのだろう。
「ほら、言うじゃないですか。天照大神も、天岩戸の外での楽しそうなどんちゃん騒ぎにつられて出てきたって。楽しく過ごしましょうよ」
ボロが出ているどころじゃないぞ。最早小林氏はハイジさんの意思すら無視して自分の快楽の追求に走っているではないか!
パチパチパチ、と拍手をしながら、また部室の扉があった位置にハイジさんが立っている。
「満足か!」
「違う」、でもなく「まだ足りない」でもなく、「No」という言葉がピッタリな仕草でハイジさんは人差し指を横に振った。
「まだ怒ってるんですよね?」
小林氏が絶妙すぎる合いの手を入れるように問いかけると、「Yes!」とでも言いたげに首を縦に振る。
「陣内ィー!」
夏目氏の怒声を尻目にハイジさんは一度部室に引っ込むと、茶筒の蓋を携えて再び登場し、それをフリスビーのように横回転させて投げた。UFOのように浮遊する茶筒の蓋はサトウキビ畑の上空を少し飛行し、その真下にはミステリーサークルで
『夏目ちょっとうるさい。』
と書かれていた。夏目氏は踵を返し、仮設テントに真っ赤を通り越した真っ青な顔で戻ってくると、テーブルの上の封筒から一枚の古紙を取り出した。
長男‐一葉
長女‐二子
次男‐久三
三男‐四迷
四男‐五福
次女‐六花
五男‐七星
六男‐喜八
「知っている名前はいないか」
「二子さんと久三くんなら」
とご満悦の表情の小林氏。
「わたしは一応全員と会ったことがあります」
と水原さん。私と良崎は「知らない」だ。
「陣内家の人間ならば、あの野郎と同じく『萬斎抄』を使役する力を持っているはずだ。陣内の汚れは陣内で洗うしかない」
どぉーん! パリパリパリパリ……
特大の銅鑼を叩く音。空気の震えがすぐには収まらないほどのとてつもない音量だ。なんだ、まだ出オチ芸人が出てくるのか。私は『エンタの神様』も『爆笑! レッドカーペット』も『爆笑オンエアバトル』も『笑いの金メダル』もリアルタイム直撃世代で目が肥えているぞ。ちょっとやそっとで笑わせることが出来ると思うなよ、素人共。
「フフ、陣内! 貴様面白いことをしているじゃないか! よかろう、邪魔な温室育ちのボンボンはこの『性器待つ大頭領』であるわしが、取り除いてやろうではないか~!」
登場するのはどうやらジード側の人間のようだ。ジードに負けず劣らずの巨大な体躯、少し奥目ではあるが、それがより一層目の禍々しい輝きを際立たせている。
「『性器待つ大頭領』……火山虎鵜射狂か!」
楽しそうで何よりだよ小林氏。もはや大頭領とかには何も言うまい。
「どうした、かかって来い夏目! 偉いのは貴様の父や祖父であって、貴様自体は一介の学生だろぉ!」
夏目氏を挑発するウイグル。
「ケンカを売っているなら10円やるから帰れ!」
と、まんまと乗るちょろい夏目氏。
「俺がタダで買ってやるぜ」
夏目氏とウイグルの間に、だぼっとしたトレーナー(暑くないのか?)を着て野球帽をかぶり、全身をアクセサリーで飾り付けたよく日焼けしたふくよかな男が立ちふさがった。
夏目氏サイドもウイグルの相手を早く選出して対決してください、というタイミングでの登場。小林氏に視線を送る。
「説明しよう! 彼の実家は志賀流琴道のお家元! そして自身は琴を爪弾く動作からチェケラッチョを見出し、主にYouTubeとニコニコ動画で活躍しているラッパー『DENSETSU』! 何代にもわたって日本の音楽を支え続けてきたお家の嫡男だ」
どっちかと言うと、DENSETSUは3Dの方に近いように思えるのだが。配役ミスではないのか? まぁいい。童貞でも動機を持つインディヴィジュアリストの11人にさえ気を付ければ、命はとられないだろう。
「ヘイ、ジンナー。これじゃあ千両役者じゃなくて占領役者だぜ! いい加減降りてこいよ」
メーン、と取ってつけたようにDENSETSU。せっかくそこそこ上手いことを言ったのに台無しじゃないか。
「20点」
厳しいジャッジ良崎。
睨み合うDENSETSUとウイグル。
日が高くなってきていよいよお腹が減ってきた私。今日のお昼は何を食べよう。
【自己批判】
退かぬ媚びぬ顧みぬ。




