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うぉくのふぉそみつ リターンズ  作者: ムッシュ志乃
7月編
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【笹の葉に 結ぶ短冊 おもうもの】第3話 期末だヨ! たくさん集合! その2

「……『ライオンがヒョウの檻に入り出られなくなっています』?」


 ハイジさんが血の涙のような光を流しながら飛び立った翌朝、目を覚ますと大学名義からメールが届いていた。災害時等の休校を伝える際に用いられるインフラであるが、こんなどうでもいい情報とそれを受けてどう行動したらいいのかわからないのでは、インフラとしての体を最早なしていない。

 ぼやきつつも服を着替え、身だしなみを整える。期末試験、レポートは終わったが講義はまだある。最後に出席日数を稼いでおきたい。そして家を出た瞬間、私はスーツを着た男に行く手を阻まれた。


「曾根崎忠だな?」


 私の学部と学部名の後に名前を呼び、私がそれに対して答えるのをためらうと


「高氏公風院夏目班の者だ。陣内一葉について、ご同行願おう」


「高氏公風院夏目班……」


「高氏公風院、通称高氏院は学内の名家の構成された組織であり、夏目班は簡潔に述べるならば学生による自警団の公安、風紀委員のようなものだ」


 と、スーツの男は懐から学生証をさながら警察手帳のように取り出した。


「陣内一葉が問題を起こした。解決のために力を借りたい。その場合、君の今日の欠席はすべて公欠となる」


「生徒会って訳では」


「ない」


 どうやらからかっている口調ではないようだ。と、いうか学生による自警団の公安という時点で少しからかわれている気もするのだが、しょうがない。


「曾根崎忠、確保。現場に向かう」


 そのまま私はスーツの男と共に電車に乗り、バスを乗り継いで大学へ向かった。そして促され、サークル棟に直行することになった。

 私が到着した時点で既にサークル棟前は『現場』、になっていた。いくつもの仮設テントが設営され、サークル棟を監視するために何人もの学生がサークル棟を見上げている。上空にはヘリコプターが飛び交っている。

 私はその仮設テントのうちの一つの中に通された。中には線の細い、黒と銀の色が似合うスーツとメガネの、神経質そうでありながら気品を感じさせる男が不機嫌そうに上座で腕組みをしている。そして既に私と同じ陣内一葉関係者としてか、水原さん、良崎、小林氏が居心地悪そうにかしこまってパイプ椅子に座っている。


「高氏公風院の夏目猿之助だ」


 夏目氏は簡潔に名乗る。我々もその高貴さにあてられてか自主的に名乗るが、良崎はリーベルト、の部分を省いた。


「陣内一葉が大学、いや国を揺るがす事件を起こそうとしている。あのサークル棟には秘匿大地祇、邪神『アマカゲルノミコト』が眠っている。陣内はその血統と『萬斎抄』の力を持ってアマカゲルを復活させ、この国の転覆を狙っている」


 はぁ? 何言ってんだお前。


「貴様らには陣内の計画を未然に防ぐ手伝いをしてもらう」


 ことの重大さがわかっていないのはどうやら良崎も同じのようで「お前、何言ってんだ」と言いたげななんとも言えない表情をして扇風機の風に吹かれている。小林氏は「なんてことを……」と呟き、指を組んで首をもたげ、水原さんは泣き出しそうな顔でテーブルを見つめている。


「具体的には何をすればいいのか」


「その都度追って指示する」


 夏目氏は席を立ち、灼熱の七月の太陽のもとでサークル棟を睨み付けている。あの中では陣内さんが秘匿大地祇を復活させようと目論んでいる……のか?


「私がおかしいと思っているだろう。もしくは、また陣内が貴様らをからかうために一芝居打っているのだと思っているだろう。だが、これは現実だ」


 『萬斎抄』の持つ能力なら、私も知っている。ハイジさんはあの古書に書かれた神の力を自由に使役することが出来る。自らの腕を治したこと然り、壁にクラッシュした良崎を治した上に1Kgのそうめんの直撃のダメージを軽減したこと然り。しかし、肝心の『萬斎抄』は群馬県のひふみんこと柳一二三女史が、ハイジさんが悪用しないようにと家で保管しているはずだ。


「あの夏目って人、どこかで見たことがある気がする」


 良崎が呟くと、小林氏が


「警察庁長官のご子息だ。瓜二つなんだよ」


 と小声で答えた。ほ、本当に名家の出身じゃないか。


「ついでに、そのなんとかっていうなんとかをハイジさんがなんかするとどうなるのか教えてもらませんか?」


 遠慮なく良崎が続けると、夏目氏が切れ味鋭い視線で我々を一瞥してにらみ合い、そのままサークル棟と大学の西部を繋ぐ道路に我々の視線を誘導した。


「この際、地祇の持つ力は知らなくてもいい。しかし、その力があるとどう問題があるのかがわかるはずだ」


 その西部との道を眺めていると、ぶぅるぉぉぉ! というけたたましい轟音が近づいてくるのが聞こえる。その音に耳を傾けていると、象のようなバカでかいバイクが土ぼこりを巻き上げているのが見えてきた。


「ヒャッハー! 陣内~! 俺も秘匿大地祇の力のおこぼれも貰いに来てやったぜ~!」


 夏目氏がぎり、と奥歯を食いしばった。


「その力を悪用しに、ああいった輩が現れて秩序を乱すんだ!」



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